【解説】障がい者雇用と障害者雇用促進法とは?概要から注意点まで

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障がい者雇用とは、障がいを持つ人が、障がいを持たない人と同じように、自らの能力に応じた働き方ができるよう、一般とは異なる枠で雇用することです。そして、障がい者の職業の安定を図り雇用を守るための法律が「障害者雇用促進法(正式名称:障害者の雇用の促進等に関する法律)」です。障害者雇用促進法は、1960年に元となる法律「身体障害者雇用促進法」が制定されてから、何度も改正が行われ、時代に沿う形へと変化を遂げてきました。

障害者雇用促進法では、障害者雇用率が定められており、企業はこの障害者雇用率を満たす人数の障がい者を雇用するよう努める必要があります。

今回はそんな障がい者雇用と障害者雇用促進法をその概要から変遷、メリット・デメリット、注意点まで解説いたします。

障がい者雇用と障害者雇用促進法とは

そもそも障がい者雇用の背景には、「障がいの有無にかかわらず誰もが自分の適性に合った職業に就き、地域で自立した生活を送れる社会の実現を目指す」という考え方があります。また近年では、ダイバーシティやノーマライゼーションが積極的に取り入れられていることからも、障がい者雇用は企業の義務であり、大事な役割の1つといえます。

この障がい者雇用の考え方に基づき制定されている法律が、障害者雇用促進法です。障害者雇用促進法では、企業や地方自治体などの事業主における障害者雇用率が定められています。法定の障害者雇用率は、現在は民間企業で2.2%(特殊法人等では2.5%)、国・地方自治体などで2.5%、都道府県等の教育委員会で2.4%で、この障害者雇用率を守らなければなりません(障害者雇用促進法43条第1項)。

この義務を遂行できなければ、毎月障害者雇用納付金として金銭を支払う必要があります。あくまでも納付金ですので、義務を怠ったための罰則ではありません。この納付金の対象となるのは常用雇用が100人を超える事業主であり、毎月の納付金額は5万円となります。なお、2020年3月末まで常用雇用の人数が100人以上200人以下であれば、減額特例として毎月の納付額が1万円減額されていました。

他方で、一定以上の障碍者雇用率を満たしている事業主には、毎月報奨金が支払われるという仕組みにもなっています。つまり障害者雇用率の低い(法定に満たない)企業は毎月納付金を払い、障碍者雇用率の高い事業主には報奨金を支払っているわけです。これは、障害者雇用に対しての、企業間の負担格差を是正するという考え方によるものです。

このほかにも障害者雇用促進法には、障がい者雇用を行うための施設の設置や介護者の雇い入れなどに助成金を出すことや、障がい者本人のための職業生活における自立の支援が定められています。

障害者雇用促進法の変遷

障害者雇用促進法は1960年に元の法律である「身体障碍者雇用促進法」が制定されたところから始まりました。当時の法律では、障がい者雇用を行うことは努力目標であり、定められた障碍者雇用率の義務に違反したとしても罰則が存在するわけではありませんでした。

その後1976年に、身体障碍者の雇用を義務付ける法律「心身障碍者対策基本法」が成立し、法定雇用率が守れなかった事業主に納付金を課す納付金制度も始まりました。また1987年には法律名が現在のものになり、法律の適用範囲が「身体障碍者」から「障がい者」に拡大され、知的障害者の雇用促進にも取り組むようになったのです。さらに2018年には法改正が行われ、精神障碍者までその適用範囲を広げました。

法律が変化していく中で、障害者雇用率も変わり続けています。1960年には1.3%でスタートし、1976年には1.5%へ引き上げられました。さらに現在では、民間企業における法定障碍者雇用率は2.2%まで上昇し、2021年3月末までには2.3%まで引き上げられることが決定しています。

障がい者雇用のメリット

障がい者雇用には、雇用される側にメリットがあることは勿論、雇用する企業側にも様々なメリットがあります。ここでは、企業側のメリットとして以下の3点を紹介します。

CSR(企業の社会的責任)活動の促進

障がい者雇用を積極的に行うことは、CSR活動にも繋がります。近年ではますます企業の社会的責任の重要性が高まり、ESG投資の観点からも企業の業績に直接かかわる要因となっています。またCSR活動をうまく行えば、企業イメージも向上し、優秀な人材の確保や広告費の削減も期待できるでしょう。

ダイバーシティ・マネジメントの恩恵を受ける

障がい者雇用を促進することは、企業の多様性を高めダイバーシティ・マネジメントの実現に近づくことを意味します。ダイバーシティ・マネジメントを行うことで、従来の価値とは異なる新たな価値の創造を可能にし、企業の業績向上につながるのです。また障がい者の方ならではの視点を経営に取り入れることは、すべての従業員にとって働きやすい環境づくりに寄与するでしょう。

各種助成金が受け取れる

障がい者雇用の促進を行うと、企業は各種助成金を受け取ることができます。例えば、長時間の就労が困難な障がい者を試行的に雇用するトライアル雇用の場合、月に4万円程度の助成金を最大3か月の間受け取ることが可能です(トライアル雇用助成金障害者トライアルコース)。他にも中小企業向けの助成金や初めて障がい者雇用に取り組む企業のための助成金もあります。

(参考:厚生労働省・障害者を雇い入れた場合などの助成)

障がい者雇用のデメリット

雇用される側にも雇用する側にもメリットのある障がい者雇用ですが、雇用することによるデメリットもあります。

適した仕事を与えられない

障がい者雇用を促進するため、十分に体制が整わないまま無理に障がい者を雇用すると、障がい者の方に適した仕事を与えられないというデメリットが発生します。適した仕事に就けないと、障がい者の方の能力が十分に発揮されず、企業としても生産性が落ちることにつながります。また、障がい者雇用の背景にある「障がいの有無にかかわらず誰もが自分の適性に合った職業に就き、地域で自立した生活を送れる社会の実現を目指す」という考え方からも外れてしまいます。

周囲の配慮が難しい

ひとことで障がい者と言っても、障がいの程度や症状は様々です。ですので、周囲の従業員は、障がい者の方のそれぞれの特徴を理解して、配慮しなければなりません。しかし中には自分の望む配慮や自分の症状をうまく言語化できない障がい者の方もいます。また、周囲の者に十分な説明がなければ、配慮しなければならないことに理解を得られないかもしれません。配慮が噛み合わず、双方のストレスになってしまうケースもあります。

障がい者雇用の注意点

コミュニケーションを密に取る

障がい者の方に限らず、ダイバーシティ・マネジメントを行う上ではお互いの理解は必要不可欠です。そのためには、コミュニケーションを密に取ることが重要になります。ただし先ほどもデメリットで述べた通り、障がい者の方の特徴は千差万別です。そのことを踏まえて、それぞれの方に適したコミュニケーションを心掛けましょう。

できることを明確にしておく

障がい者雇用を進めるにあたっては、各障がい者のできることを明確にする必要があります。また言い換えれば、できないことも明確にしておくことで業務効率化が図れます。日々の業務を行う上で、人事担当者はできることできないことを配属部門の上司・同僚に伝える必要があります。できることが明確であれば仕事も任せやすくなり、企業と障がい者の双方にとって良い効果が期待できるでしょう。

従業員への説明を事前に行う

障がい者雇用を行うときには、従業員の理解と配慮が欠かせません。そのため障がい者の方を雇用する前に、しっかりと採用の経緯や配属理由を説明するようにしましょう。従業員も事前に説明されていれば心の準備もでき、適切な対応方法を学習する時間的余裕も生まれます。

まとめ

今回は障がい者雇用と障害者雇用促進法に関する情報を解説してまいりました。障がい者雇用は法律で定められた企業の義務であることはもちろん、企業の経営を改善し業績の向上を図る1つの手段です。また障がい者雇用を行うことで、従業員同士のコミュニケーションが密になる効果も期待されます。障がい者雇用を行う際は、今回取り上げた注意点を意識しながらうまく取り入れていきましょう。

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働き方改革サポ編集部
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