取引先のSDGsアンケートの答え方|本業の棚卸しで回答材料をそろえる5ステップ

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取引先のSDGsアンケートとは、取引先が、仕入先や外注先の環境・労働・企業統治などの取り組み状況を確認するために送る質問票のことです。書式も設問も取引先ごとに異なりますが、答え方の基本は共通しています。本記事では、新しい取り組みを作るのではなく、本業の棚卸しで回答材料をそろえる5ステップと、設問の種類ごとの準備、できていない項目の書き方を、公的機関の資料をもとに解説します。

取引先のSDGsアンケートには何を書けばよいか

取引先のSDGsアンケートとは、取引先が、仕入先や外注先の環境・労働・企業統治などの取り組み状況を確認するために送る質問票のことです。呼び名も設問も取引先ごとに異なります。

書くべきなのは、本業の中で実際に行っている取り組みを、対象範囲と根拠を添えた事実で示すことです。新しい取り組みを急いで作る必要はありません。J-Net21(中小機構)のQ&Aは、本業を通じてできる地域貢献、社会貢献、環境改善の取組という視点で柔軟に考えるよう助言しています。中小企業は地域の雇用の守り手として、こうした取り組みを知らず知らずのうちに実施できていることも多い、というのが同Q&Aの説明です。

なぜ中小企業にまで聞かれるのか

取引先にも、サプライチェーン全体の状況を把握したい事情があるためです。J-Net21のQ&Aは、中小企業の経営にとって、取引先との関係や消費者の志向など、さまざまな観点からSDGsは切っても切れない関係にあると説明しています。

温室効果ガスの排出量はその一例です。環境省のQ&Aによると、供給先から排出量情報を求められた事業者のScope1・2排出量は、求めた側のScope3排出量にあたります。情報開示を求める目的については、一般的な原単位による算定では評価できない削減施策の効果を評価することと考えられる、と同Q&Aは述べています。

回答で優先したいのは何か

優先したいのは、事実、範囲、根拠の3点です。J-Net21のQ&Aによると、SDGsに基準や制限、罰則はありません。ただし、「SDGsっぽい」取組だけを掲げて他の分野で負のインパクトを与えるとSDGsではなくなるため、SDGsウォッシュに留意するよう求めています。

回答は取引先の手元に残ります。根拠を問われたときに説明できない内容は、書かないほうが安全です。表現の点検はSDGsウォッシュ対策の記事で解説しています。

本業の棚卸しで回答材料をそろえる5ステップ

本業の棚卸しとは、自社の事業の流れに沿って、すでに行っている取り組みを洗い出し、事実と書類で整理する作業のことです。次の5ステップで、担当者1人でも進められます。

  1. ステップ1:依頼内容と設問の範囲を確認する。期限、回答の対象範囲、対象期間、根拠資料の要否を読み取ります。
  2. ステップ2:事業の流れに沿って取り組みを洗い出す。調達から地域との関わりまで、すでに行っていることを書き出します。
  3. ステップ3:事実・範囲・書類で整理する。取り組みごとに、対象範囲、開始時期、根拠書類、担当者を一覧にします。
  4. ステップ4:設問ごとに回答を書く。結論、事実、範囲、根拠の順に書き、できていない項目は正直に示します。
  5. ステップ5:控えを残し、社内で確認する。回答と根拠書類を保管し、責任者が内容を確認します。

ステップ1:依頼内容と設問の範囲を確認する

最初に、取引先の依頼文と設問を読み、誰が何の目的で、どの範囲について聞いているかを確認します。同じ「CO2排出量」でも、会社全体を聞く設問と、取引している製品だけを聞く設問とでは、用意する数字が変わるためです。次の項目を、回答を書き始める前に控えておきます。

  • 提出期限と提出方法(Web入力、Excel、紙など)
  • 回答の対象範囲(会社全体、特定の拠点、取引対象の製品やサービス)
  • 対象期間(直近の事業年度、特定の年度など)
  • 根拠資料の提出を求められるか
  • 回答の取り扱い(秘密保持の定め、第三者への提供の有無)
  • 設問の意味を問い合わせる取引先の担当窓口

設問の意味が分からないときは、推測で答えず、取引先の担当者に確認します。

設問はどんな種類に分かれるか

設問は取引先ごとに異なります。環境、労働・人権、情報管理・企業統治、事業と地域の4つに分けて考えると、回答材料を集めやすくなります。次の表は当社で整理した分け方の例であり、公的機関が定めた分類ではありません。

区分 設問の例 用意する材料の例 確認できる公的資料
環境 エネルギーの使用量、温室効果ガスの排出量、廃棄物の扱い 電気・ガス・燃料の請求書、使用量の記録 環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム
労働・人権 ハラスメント防止の方針、相談窓口、労働時間の管理 就業規則、方針の周知記録、相談窓口の案内 厚生労働省 職場のハラスメント対策
情報管理・企業統治 情報セキュリティの方針、対策の実施状況 基本方針の文書、SECURITY ACTIONの宣言 IPA SECURITY ACTION
事業と地域 本業を通じた地域・社会への貢献、雇用 取り組みの記録、取引・雇用の実績 J-Net21(中小機構)SDGs関連Q&A

ステップ2:事業の流れに沿って取り組みを洗い出す

事業の流れに沿って、すでに行っていることを部署ごとに書き出します。SDGsの言葉に直す前の、現場の言葉のままで構いません。次のように区切ると、抜け漏れを減らせます。

  • 調達:仕入先を選ぶ基準、地元の事業者との取引
  • 製造・サービス提供:省エネの工夫、廃棄物を減らす工夫、品質と安全の管理
  • 販売:顧客への情報提供、苦情への対応
  • 人:労働時間の管理、人材育成、ハラスメント防止、安全衛生
  • 地域:地元での雇用、地域行事への参加、災害時の協力

この段階では、大小や見栄えで取捨選択しません。何を回答に使うかは、次のステップで決めます。

ステップ3:事実・範囲・書類で整理する

洗い出した取り組みを、次の表の形で一覧にします。書類を出せない項目は、回答に数字や断定を書かない目印になります。以下は記入例であり、特定の企業の実績ではありません。

項目 書く内容 記入例
取り組み 何を行っているか 事務所の照明をLEDに交換
対象範囲 どこまで行っているか 本社事務所のみ(工場は未実施)
開始時期 いつから行っているか 2024年4月から
根拠書類 何で示せるか 工事の請求書、見積書
担当者 誰が管理しているか 総務部

この一覧があれば、別の取引先から調査票が届いたときも、範囲と期間を合わせて見直すだけで使えます。

17の目標への紐づけは必要か

取引先の設問が目標との対応を求めている場合に行えば足ります。J-Net21のQ&Aは、実際のターゲットの文章は国としての目標であり、中小企業が直接関わらないものも多いと説明しています。そのうえで、ターゲットと直接合致しているかは問われず、長期的・間接的にそのゴールに関わることであれば問題ないとしています。無理にこじつけず、取り組みの内容に近い目標を選びます。

17の目標は、国連広報センターによると、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に盛り込まれ、169のターゲットからなります。達成期限は2030年です。たとえば、省エネの取り組みは目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」や目標13「気候変動に具体的な対策を」、労働環境の整備は目標8「働きがいも経済成長も」が近い目標の例です。

ステップ4:設問ごとに回答を書く

回答は、結論、事実、範囲、根拠の順に書きます。「実施しています」「実施していません」を先に言い切り、そのあとに内容を続けると、読む側が判断しやすくなります。

次は架空の記入例です。「実施しています。本社事務所の照明を2024年4月にLEDへ交換しました。工場は対象外です。工事の請求書を保管しています。」

できていない設問には、「現在は実施していません」と書きます。実施時期や方針が社内で実際に決まっている場合に限り、「2027年度中に方針を策定する予定です」のように時期を添えます。決まっていない予定は書きません。

ステップ5:控えを残し、社内で確認する

提出前に、回答の控え、根拠書類、確認した人、提出日を1か所にまとめます。経営者または責任者が、数字と範囲が根拠書類と合っているかを確認してから提出します。

控えを残すと、取引先から後日問い合わせがあったときに、回答の根拠をすぐ示せます。取引先が複数ある場合も、回答が食い違っていないかを見比べられます。

設問の種類ごとに何を用意するか

設問の種類ごとに、確認できる公的資料があります。ここでは、環境、労働・人権、情報管理の3つについて、用意する材料を整理します。

環境の設問(CO2排出量など)にはどう答えるか

排出量を聞かれたら、会社全体のScope1とScope2を把握するところから始めます。Scope1とは、事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼など)のことです。Scope2は、他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出を指します。環境省は、これらにScope3(Scope1、2以外の間接排出)を加えたものをサプライチェーン排出量としています。

供給先から排出量情報を求められたときに提供する情報について、環境省のQ&Aは2つの方法を挙げています。供給製品1個・1本・1箱あたりの排出量を示す「製品ベース」と、サプライヤーの組織レベルの排出量を、売上金額ベースなどの何らかのロジックで供給先に配分する「組織ベース」です。どちらで答えるかは、取引先の設問や指定に従います。

算定したことがない場合は、数字を推測で書かず、「未算定」と答えたうえで予定を書きます。取り組みの出発点としては、カーボンニュートラル診断ツール「キヅコ(KiduCO₂)」があります。中小機構が運営しており、理解度や取組状況を簡単に診断できる無料のツールです。排出量の算定そのものではなく、取組状況の診断である点には注意が必要です。

労働・人権の設問(ハラスメント防止など)にはどう答えるか

ハラスメント防止の設問には、方針、相談体制、対応手順を示す書類で答えられるようにしておきます。厚生労働省によると、職場のハラスメントを防止するために事業主が雇用管理上講ずべき措置は、法律と指針に定められています。セクシュアルハラスメントや妊娠・出産等に関するハラスメントについては、業種・規模に関わらずすべての事業主の義務です。主な措置は次のとおりです。

  • 事業主の方針を明確にし、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発する
  • 相談や苦情に応じ、適切に対応するための体制を整備する
  • 相談があった場合に、事実関係を迅速かつ正確に確認し、適正に対処して再発防止の措置を講ずる
  • 相談者や行為者のプライバシーを保護し、相談したことを理由とする不利益な取扱いを行わない旨を周知・啓発する

厚生労働省のページによると、令和7年法律第63号による改正で、カスタマーハラスメントと求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が、令和8年(2026年)10月1日施行で事業主の義務になりました。取引先の設問にこれらが含まれる場合は、方針と相談窓口の整備状況を確認してから答えます。

情報管理の設問にはどう答えるか

情報管理の設問では、SECURITY ACTIONの宣言を回答材料の1つにできます。SECURITY ACTIONとは、中小企業自らが情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する、IPA(情報処理推進機構)の制度のことです。

「一つ星」は、「情報セキュリティ6か条」に取り組むことを宣言するものです。6か条は、OSやソフトウェアを常に最新の状態にする、ウイルス対策ソフトを導入する、パスワードを強化する、共有設定を見直す、バックアップを取る、脅威や攻撃の手口を知る、の6つです。「二つ星」は、5分でできる自社診断を行ったうえで、情報セキュリティ基本方針を定めて外部に公開する宣言です。

注意したいのは、一つ星は、対策を実施する前でも申し込めることです。回答では、「宣言した」ことと「対策を実施済み」であることを区別して書きます。

できていない設問にはどう答えればよいか

できていない設問には、「未実施」と正直に書き、予定が決まっていれば時期を添えます。実態より良く見せる回答は避けます。当てはまらない設問は、「該当なし」と理由を書きます。

避けたい書き方は次のとおりです。

  • 一部の拠点の取り組みを、会社全体の取り組みのように書く
  • 計画段階の内容を、実施済みとして書く
  • 根拠書類を出せない数字を書く
  • 前年の回答を、期間や範囲を見直さずにそのまま使う

SDGsに貢献していると回答に書く取り組みについては、J-Net21のQ&Aが確認の観点を3つ示しています。

  • 経済・環境・社会の3つのバランスをとる考え方になっているか
  • 目標のアイコンを並べるだけで、実質的な効果をあまり期待できない取り組みになっていないか
  • 実現したい未来の姿や解決したい社会課題が不明確で、商品の販売促進や企業ブランドの向上だけのアピールになっていないか

SDGsの宣言の作り方や、自社の優先課題の整理は、中小企業のSDGs宣言の作り方とSDGsとサステナビリティ経営の違いの記事もあわせてご覧ください。

回答に迷ったときはどこに相談できるか

設問の意味は、まず取引先の担当窓口に問い合わせます。自社の取り組みの整理に迷う場合は、中小機構がSDGsに関する対面、電話、オンラインによる経営相談窓口を設置しています。受付は平日の午前9時から午後5時です(北海道は午後1時から午後5時)。経営相談チャットサービス「E-SODAN」も用意されています。

ネクストプレナーズの見解

取引先のSDGsアンケートは、新しい活動を発表する場ではなく、すでに行っている本業の取り組みを事実で示す場だと考えます。よくある誤解は、17の目標すべてに取り組んでいなければ答えられない、というものです。実務では、回答の控えと根拠書類を1か所にまとめ、更新する担当者を決めておくことをおすすめします。次の取引先から調査票が届いても、範囲と期間を合わせて見直すだけで回答できるようになります。

監修者

監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)

東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長。

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本記事は公的機関の公表資料等を基にした一般的な情報です。個別の制度設計・手続きは専門家にご確認ください。

よくある質問

Q. 取引先のSDGsアンケートには何を書けばよいですか?

本業の中で実際に行っている取り組みを、対象範囲と根拠書類を添えた事実で書きます。新しい取り組みを作る必要はありません。J-Net21(中小機構)のQ&Aは、本業を通じてできる地域貢献、社会貢献、環境改善の取組という視点で柔軟に考えるよう助言しています。

Q. SDGsの取り組みが特にない場合は、どう答えればよいですか?

事業の流れに沿って、すでに行っていることを洗い出したうえで、実施していない項目は「未実施」と書きます。J-Net21のQ&Aは、中小企業が地域の雇用の守り手として、地域貢献や社会貢献につながる取り組みを既に実施できていることも多いと説明しています。実施時期や方針が社内で決まっていない予定は書かないでください。

Q. SDGsの17の目標すべてに対応していないと答えられませんか?

すべてに対応している必要があるとは限りません。J-Net21のQ&Aは、ターゲットと直接合致しているかは問われず、長期的・間接的にそのゴールに関わることであれば問題ないと説明しています。取引先の設問が特定の目標や項目を指定している場合は、その指定に沿って答えます。

Q. 取引先からCO2排出量を聞かれました。算定していなくても答えられますか?

算定していない場合は、数字を推測で書かず「未算定」と答え、算定の予定を添えます。環境省のQ&Aは、提供する情報として、製品1個あたりの排出量を示す「製品ベース」と、組織全体の排出量を売上金額ベースなどで配分する「組織ベース」の2つを挙げています。どちらを求められているかは、取引先に確認してください。

Q. SECURITY ACTIONを宣言していれば、情報セキュリティの設問は十分ですか?

十分とは限りません。「一つ星」は、情報セキュリティ6か条に取り組むことを宣言するもので、対策を実施する前でも申し込めます。回答では、宣言したことと、対策を実施済みであることを区別して書いてください。

Q. できていない項目を「できている」と書いてもよいですか?

書かないでください。実態より良く見せた回答は、根拠を問われたときに説明できません。J-Net21のQ&Aも、SDGsらしい取り組みだけを掲げて他の分野に負の影響を与えるとSDGsウォッシュになるため、留意するよう求めています。

出典・参考資料

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