福利厚生の費用対効果の見直し方|法定外福利費の実態と優先順位の付け方

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福利厚生の見直しを任されたものの、何から手を付ければよいか分からない総務・人事担当者に向けて、福利厚生の費用対効果の見直し方を整理します。厚生労働省の就労条件総合調査で法定外福利費の実態を確認したうえで、制度の棚卸し、利用率とコストの評価、優先順位の付け方、見直し時に押さえたい税務の注意点を順に解説します。

福利厚生の費用対効果の見直しとは

福利厚生の費用対効果の見直しとは、会社が負担している福利厚生の費用と、それによって得られている効果(定着・採用・健康・働きやすさなど)を照らし合わせ、お金をかける先を選び直すことです。

見直しの対象になるのは、主に法定外福利費です。法定外福利費とは、法律で義務づけられている社会保険料などの法定福利費とは別に、会社が任意で行う福利厚生にかかる費用のことです。厚生労働省の就労条件総合調査では、住居、医療保健、食事、文化・体育・娯楽、私的保険制度への拠出金、慶弔見舞などに分けて集計されています。

「前任者の時代から続いているから」「他社もやっているから」という理由で残っている制度は、気づかないうちに総額が膨らんでいることがあります。一方で、むやみに削ると従業員の不満や採用面での不利につながります。そこで、まず自社の費用が世の中の平均と比べてどの位置にあるかを知り、そのうえで制度ごとに評価していく順序で進めるのが現実的です。

法定外福利費の実態は?厚生労働省の調査から確認する

法定外福利費の平均は、令和3年の調査で常用労働者1人1か月あたり4,882円です。以下は、厚生労働省の令和3年就労条件総合調査(労働費用)を基にした数値です。この調査は令和3年1月1日現在の状況を対象とし、労働費用は令和2年(又は平成31(令和元)会計年度)の1年間について調べたものです。数値はすべて「常用労働者1人1か月平均」です。

労働費用の中で法定外福利費はどれくらいを占めるか

労働費用総額は408,140円で、そのうち現金給与額が334,845円(82.0%)、現金給与以外の労働費用が73,296円(18.0%)です。現金給与以外の労働費用の内訳は次のとおりです。

項目 金額(円) 現金給与以外に占める割合
法定福利費 50,283 68.6%
退職給付等の費用 15,955 21.8%
法定外福利費 4,882 6.7%
現物給与の費用 481 0.7%
募集費 718 1.0%
教育訓練費 670 0.9%

法定外福利費は、労働費用総額に対しては約1.2%(4,882円÷408,140円で当サイトが計算)にとどまります。社会保険料などの法定福利費が大部分を占めるため、会社の裁量で見直せる福利厚生の費用は、それほど大きくないことが分かります。だからこそ、限られた金額をどこに配分するかが重要になります。

法定外福利費の内訳はどうなっているか

法定外福利費4,882円の内訳は、住居に関する費用が最も大きく、次いで医療保健、食事の順です。

項目 金額(円) 構成割合
住居に関する費用 2,509 51.4%
医療保健に関する費用 729 14.9%
食事に関する費用 493 10.1%
私的保険制度への拠出金 373 7.6%
慶弔見舞等の費用 184 3.8%
文化・体育・娯楽に関する費用 163 3.3%
労災付加給付の費用 88 1.8%
財形貯蓄奨励金、給付金及び基金への拠出金 48 1.0%
その他の法定外福利費 296 6.1%

企業規模によって配分は大きく違う

同じ調査では、企業規模によって法定外福利費の使い方が大きく異なることも分かります。中小企業が見直しの参考にするなら、全体平均よりも自社の規模に近い区分を見るほうが実態に合います。

企業規模 法定外福利費計(円) 住居(円) 食事(円) 私的保険制度への拠出金(円)
1,000人以上 5,639 3,974 174 111
300〜999人 4,567 2,506 427 157
100〜299人 4,546 1,832 690 367
30〜99人 4,414 960 849 1,027

法定外福利費の総額は規模による差が比較的小さい一方、中身は大きく異なります。1,000人以上では住居が70.5%を占めるのに対し、30〜99人では住居が21.8%、食事が19.2%、私的保険制度への拠出金が23.3%と、配分が分散しています。規模が小さい企業ほど、住居に偏らず、食事や保険など幅広い制度に少額ずつ配分している傾向が読み取れます。

なお、これらは全企業の平均値であり、「この水準に合わせるべき」という基準ではありません。平均より高いか低いかではなく、自社の目的に合った使い方になっているかを軸に判断してください。

福利厚生の費用対効果を測るにはどうするか

費用対効果は、制度ごとに「かかっている費用」「利用されている度合い」「会社が狙った目的への貢献」の3点で評価します。福利厚生の効果は金額で直接測れないため、目的ごとに代わりの指標を置くのが基本です。

  • 費用:制度ごとの年間総額と、利用者1人あたりのコスト(年間費用÷利用者数)
  • 利用の度合い:利用率(利用者数÷対象者数)と、利用が特定の層に偏っていないか
  • 目的への貢献:従業員アンケートでの満足度や必要度、退職面談で挙がる理由、採用面接での反応など

具体的には、利用者1人あたりのコストが高く、利用率も低い制度は、見直しの優先度が高いと判断できます。反対に、費用が小さくても従業員の満足度が高い制度は、残す価値があると考えられます。

福利厚生を見直す手順(5ステップ)

見直しは、次の5つのステップで進めます。制度の種類を整理したい場合は、当サイトの法定外福利厚生の種類と導入のポイントや人気の福利厚生とトレンドも参考にしてください。

ステップ1:制度と費用を棚卸しする

まず、福利厚生として実施している制度をすべて書き出します。制度名、年間費用、対象者、利用者数、開始時期、根拠となる規程や協定の有無を一覧にします。経理上は福利厚生費でなく別の科目で処理されている費用(慶弔費、食事補助、保険料など)も漏れなく拾います。

ステップ2:各制度の目的を言葉にする

制度ごとに「何のために始めたか」を整理します。採用力の向上、定着、健康の維持、生活の支援、一体感の醸成、賃金の補完など、目的が書けない制度は、見直しの有力候補です。

ステップ3:効果を測る指標を決める

目的に応じて、利用率や満足度、必要度などの指標を決めます。数値が手元になければ、全従業員向けの簡単なアンケートを実施します。「使っている」「使っていないが必要」「使っていないし不要」の3択でも、判断材料として十分に役立ちます。

ステップ4:制度を4つの区分に分けて評価する

利用率とコストの水準で、制度を次の4つに分けます。

区分 状態 対応の方向性
維持 利用率が高く、コストも妥当 現状を維持し、定期的に点検する
内容の見直し 利用率は高いが、コストが大きい 補助の上限額、自己負担の割合、委託先の条件を見直す
使いやすさの改善 利用率は低いが、目的は重要 周知方法や申請手続きを改善し、利用を促す
縮小・廃止の検討 利用率が低く、目的も薄れている 代替策を示したうえで、縮小・廃止を検討する

ステップ5:配分を組み替えて、従業員に説明する

縮小・廃止で生まれた財源は、従業員の必要度が高い制度に振り向けます。変更する際は、理由と代替策、実施時期を事前に説明してください。就業規則や労使協定に定めのある制度を変更する場合は、手続きが必要になることがあるため、社会保険労務士などの専門家に確認することをおすすめします。実施後は、1年を目安に利用率と満足度を再点検します。

見直しの前に確認したい試算の方法

自社の法定外福利費が平均と比べてどうかを確認するには、年間総額を従業員数と12か月で割って、1人1か月あたりに直します。たとえば、先ほどの調査の100〜299人の区分の平均(4,546円)を当てはめると、1人あたり年間54,552円、従業員100人の会社で約545万円(4,546円×12か月×100人)となります。自社の実額がこれを大きく上回るか下回るかは、見直しの目安のひとつにはなりますが、それだけで過多・過少を判断することはできません。調査の対象には、業種や制度の有無が異なる多様な企業が含まれるためです。

福利厚生の見直しで押さえたい税務の注意点

福利厚生の制度は、設計によって従業員への給与課税の有無が変わります。見直しの際には、次の3点を確認してください。いずれも国税庁の公表資料に基づく内容です。

  • 食事の支給:国税庁のNo.2594では、従業員が食事の価額の半分以上を負担していること、会社の負担額が1か月あたり7,500円(税抜)以下であること、の両方を満たす必要があるとされています。要件を満たさない場合は、給与として課税対象になります。
  • 従業員レクリエーション旅行:国税庁のNo.2603では、旅行の期間が4泊5日以内であること、参加人数が全体の50%以上であることが、課税されない要件として示されています。
  • 福利厚生費と交際費等の区分:国税庁のNo.5261では、従業員等におおむね一律に供与される社内行事の通常の飲食費や、一定の基準に従って支給される慶弔の金品(結婚祝、出産祝、香典、病気見舞いなど)は福利厚生費に該当するとされています。

制度を新設・変更する際に、税務上の取り扱いが変わらないかを事前に確認しておくと、後から従業員の負担が増えるような事態を避けられます。

ネクストプレナーズの見解

福利厚生の見直しでまず優先すべきは、制度を削ることではなく、制度ごとの目的を言葉にすることだと考えます。目的が整理されていれば、利用率が低くても改善で対応できるのか、役割を終えて縮小すべきなのかを判断しやすくなります。

よくある誤解は、「利用率が低い制度は不要」という考え方です。たとえば、慶弔見舞のように利用機会が少なくても、安心感の面で価値のある制度があります。また、限られた予算の中小企業では、福利厚生を増やすよりも、賃金や評価・処遇の見直しに配分したほうが従業員に届くケースもあると考えます。福利厚生は、賃金制度とあわせて全体のバランスで検討することをおすすめします。

まとめ

福利厚生の費用対効果を見直すには、次の流れが基本です。

  • 厚生労働省の調査で、法定外福利費の平均(1人1か月4,882円)と自社を比べる
  • 制度ごとに費用・利用率・目的への貢献を評価する
  • 4つの区分で、維持・見直し・改善・縮小を判断する
  • 税務上の取り扱いを確認し、従業員に丁寧に説明する

平均との比較はあくまで出発点です。自社の目的に合った配分になっているかを軸に、毎年1回の点検を続けてください。

監修者

監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)

東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長。

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本記事は公的機関の公表資料等を基にした一般的な情報です。個別の制度設計・手続きは専門家にご確認ください。

よくある質問

Q. 法定外福利費とは何ですか?

法定外福利費とは、法律で義務づけられている社会保険料などの法定福利費とは別に、会社が任意で行う福利厚生の費用のことです。厚生労働省の就労条件総合調査では、住居、医療保健、食事、文化・体育・娯楽、私的保険制度への拠出金、慶弔見舞などに分けて集計されています。

Q. 中小企業の法定外福利費の平均はいくらですか?

令和3年の就労条件総合調査では、常用労働者1人1か月あたりで、30〜99人の企業が4,414円、100〜299人の企業が4,546円です。全体の平均は4,882円です。ただし平均はあくまで目安であり、自社の目的に合っているかどうかで判断することが大切です。

Q. 福利厚生の費用対効果はどうやって測りますか?

制度ごとに、年間費用と利用者1人あたりのコスト、利用率、目的への貢献の3点で評価します。目的への貢献は金額で測れないため、従業員アンケートでの満足度や必要度、退職面談の内容などを代わりの指標にします。

Q. 利用率が低い福利厚生は、すぐ廃止したほうがよいですか?

すぐに廃止する必要はありません。利用率が低くても目的が重要な制度は、周知方法や申請手続きを改善することで利用が進む場合があります。目的が薄れ、代替策もある制度から、縮小・廃止を検討するのが現実的です。

Q. 食事補助は非課税になりますか?

要件を満たせば、給与として課税されません。国税庁のNo.2594では、従業員が食事の価額の半分以上を負担していることと、会社の負担額が1か月あたり7,500円(税抜)以下であることの両方が必要とされています。

Q. 従業員レクリエーション旅行の費用が課税されない条件は?

国税庁のNo.2603では、旅行の期間が4泊5日以内であること、参加人数が全体の50%以上であることが、課税されない要件として示されています。工場や支店ごとに行う場合は、その職場の人数が基準になります。

出典・参考資料

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人事ブログ編集部
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