SDGsへの取り組みを取引先や求職者に示したいと考えても、「宣言」と何を書けばよいのか、自治体の登録制度を使うべきかで迷う中小企業は少なくありません。この記事では、内閣府が整理する宣言・登録・認証制度の位置づけを押さえたうえで、埼玉県・神奈川県・横浜市の制度の違い、宣言書に記載すべき項目、作成から公表までの手順を、公的機関の公表資料に基づいて解説します。
SDGs宣言とは何か:まず押さえたい位置づけ
SDGs宣言とは、自社がSDGs(持続可能な開発目標)にどのような方針で取り組むのかを、文書にして社内外に示すものです。法律で作成が義務づけられているものではなく、書き方に決まった型もありません。そのため、「何から書けばよいのか」「どこまで書けば宣言として通用するのか」で手が止まりやすい分野です。
一方で、自治体が運営するSDGsの登録制度や認証制度では、宣言書や取組内容の提出が申請の前提になっている例があります。つまり、宣言書は自社の方針を整理するための文書であると同時に、自治体の制度を利用するための入口にもなります。
内閣府地方創生推進事務局は、「地域において地方創生SDGsに積極的に取り組む事業者等を『見える化』するための仕組みづくりを支援するため」として、「地方創生SDGs宣言・登録・認証制度ガイドライン」を取りまとめています。自治体が事業者の取り組みを見える化する仕組みは、国のガイドラインでも整理されている取り組みです(内閣府地方創生推進事務局「地方創生SDGs金融」関連ページ)。
この記事では、中小企業の経営者・担当者が、自社でSDGs宣言を作り、必要に応じて自治体の制度につなげるまでの流れを、公的機関のページで確認できた内容に基づいて整理します。
宣言・登録・認証の違いを整理する
内閣府のガイドラインの名称には、「宣言」「登録」「認証」の3つの言葉が並んでいます。自治体の制度はこの3つの呼び方が混在しており、同じ「SDGsの制度」でも、事業者に求められることが異なります。申請前に、どのタイプの制度なのかを確認することが大切です。
大まかな整理は次のとおりです。ここでの整理は、後述する各自治体の公式ページで確認できた内容に基づく、この記事の説明です。
| 呼び方 | 考え方 | 公式ページで確認できた例 |
|---|---|---|
| 宣言 | 事業者が自らSDGsに取り組む方針を文書で示す | 埼玉県の登録申請時に提出する「宣言書」 |
| 登録 | 自治体が定めた要件を満たすことを確認し、名簿などに登録する | 埼玉県SDGsパートナー、かながわSDGsパートナー |
| 認証 | 評価項目に沿って点数をつけ、基準を満たした事業者を認証する | 横浜市SDGs認証制度「Y-SDGs」 |
宣言は自社だけで作れますが、登録や認証は自治体の審査・確認を経るため、取引先や金融機関への説明材料としては重みが増します。ただし、登録や認証を受けること自体が目的ではなく、中身のある取り組みが伴っていることが前提です。
自治体の制度の具体例:埼玉県・神奈川県・横浜市
ここでは、公式ページを実際に確認できた3つの制度を紹介します。自社の所在地の制度は内容が異なるため、申請の際は必ず各自治体の最新の案内を確認してください。
埼玉県SDGsパートナー登録制度
埼玉県の制度は、宣言書を要件とする登録制度です。埼玉県の公式ページによると、対象は「埼玉県内に本社又は支社等を有し、県内で事業活動を行う企業・法人・個人事業主、NPO、団体、大学等」で、個人は対象外です。
登録の要件は次の2点です。1つ目は、環境・社会・経済の3分野でそれぞれSDGs関連の取組と指標が設定されていること。2つ目は、SDGs達成に向けて実施している、または実施する予定の取り組みの内容が、具体的かつ明確であることです。
様式を載せたページには、「登録申請書」「SDGs達成に向けた宣言書(要件1)」「SDGs達成に向けた県内企業等の基本的取組事項(要件2)」などが示されています。様式のページには、申請内容は県のシステムに直接入力するため、ダウンロードは不要と書かれています。
登録者には、登録証の授与、ロゴマークの使用、県ホームページでの紹介、県の制度融資である産業創造資金の利用などの特典があると案内されています。登録者数は、第1期から第18期までの合計で2,298者(2026年7月31日時点)と掲載されています。
かながわSDGsパートナー
神奈川県の公式ページによると、対象は「SDGsの取組等を実施している企業、NPO、団体、大学」です。主な要件には次のような項目があります。
- 県内に事業所を有する企業・団体等であること(県内で継続的に2か年以上事業を実施していることを証明できる場合は例外あり)
- 経済・社会・環境の三側面すべてに関わるSDGsの取組等を実施していること
- SDGsの取組等を、対外的に公表・発信していること
- 県のSDGsの取り組みに、年1回程度以上積極的に参加し、多様なステークホルダーとの連携が図れること
手続きは、申請フォームから提出し、県が内容を確認して、要件を満たしていれば登録されるという流れです。登録のメリットとして、SDGsパートナー支援融資の保証料に対する補助、県による広報、パートナー間のマッチング支援、専門家による個別支援などが挙げられています。登録者数は1,673者(2026年8月31日現在)です。
この制度では、登録後にも県の取り組みへの参加が求められる点が特徴です。登録して終わりではなく、地域の中で連携していく意思があるかが問われます。
横浜市SDGs認証制度「Y-SDGs」(認証の例)
横浜市の公式ページによると、横浜市の「Y-SDGs」は、登録ではなく認証の制度です。対象は、SDGs達成に向けて積極的に取り組む事業者(市内外の企業・各種団体・NPO法人・市民活動団体等)です。
環境・社会・ガバナンス・地域といった分野の評価項目に沿って評価し、合計点数に応じて3つのランクに分かれます。得点率が8割以上でSupreme、6割以上でSuperior、3割以上でStandardです。認証の有効期間は4年間で、費用は無料と案内されています。
このように、同じ「自治体のSDGs制度」でも、宣言書を出して登録するもの、要件を満たすことを確認して登録するもの、点数で評価して認証するものと、性格が大きく異なります。まずは自社の所在地の自治体に、どのような制度があるのかを調べることから始めましょう。
SDGs宣言に記載すべき5つの項目
宣言の書き方に全国共通の型はありませんが、埼玉県や神奈川県の要件を見ると、求められている内容には共通点があります。それは、「環境・社会・経済の3つの側面に触れていること」「取り組みが具体的であること」「外部に公表すること」です。これらを踏まえ、宣言書に盛り込むとよい項目を5つに整理します。なお、ここから先の項目の整理は、公的機関の要件を参考にしたこの記事の一般的な考え方であり、制度ごとの様式が定められている場合はそちらを優先してください。
1. 基本方針:経営理念とSDGsのつながり
最初に、なぜSDGsに取り組むのかを、自社の経営理念や事業内容と結びつけて書きます。「SDGsが話題だから」という書き方では、読み手に伝わりません。自社が地域や顧客に提供している価値と、SDGsの目標がどう重なるのかを、2〜3文で示すと説得力が増します。
2. 環境・社会・経済の3分野の取り組み
埼玉県の登録要件は、環境・社会・経済の3分野でそれぞれ取り組みを設定することを求めています。神奈川県も三側面すべてに関わる取り組みを要件としています。登録制度を使わない場合でも、この3分野で整理しておくと、偏りのない宣言になります。
- 環境:省エネルギー、廃棄物の削減、再生可能エネルギーの利用など
- 社会:働き方の改善、人材育成、多様な人材の活躍、地域貢献など
- 経済:事業を通じた課題解決、取引先との適正な関係、新たな価値の創出など
人事・労務の分野に近い取り組みは、「社会」に位置づけやすいものです。自社がすでに行っている取り組みを棚卸しするだけでも、3分野のうち複数を埋められることが多くあります。
3. 指標:取り組みを測る物差し
埼玉県の要件には、取り組みに加えて「指標」の設定が含まれています。指標とは、取り組みの進み具合を確認するための数値や基準のことです。たとえば「年次有給休暇の平均取得日数」「紙の使用量」「地域行事への参加回数」のように、自社で実際に把握できるものを選びます。
最初から高い目標を掲げる必要はありません。現状の数値を把握し、無理のない目標を置くことが、継続につながります。測れない目標は、後で成果を説明できなくなる点に注意が必要です。
4. 実施体制と見直しの時期
誰が責任者なのか、どの頻度で進み具合を確認するのかも、宣言に書いておくと実行力が高まります。中小企業では、経営者自身が責任者となり、年に1回、取り組みを振り返る場を設ける形が現実的です。埼玉県の制度には取組進捗状況報告書の様式があり、登録後も取り組みの状況を報告する想定になっています。自社で宣言を作る場合でも、振り返りの仕組みを最初から組み込んでおくとよいでしょう。
5. 公表の方法
神奈川県の要件には、SDGsの取り組みを対外的に公表・発信していることが含まれています。宣言は、作って社内に置いておくだけでは意味がありません。自社のウェブサイト、採用ページ、会社案内などに掲載して、取引先や求職者が確認できる状態にします。
宣言を作るための手順
実際に作成を進める際の手順を、5つの段階に整理します。これも一般的な進め方の例です。
- 現状の棚卸し:すでに行っている環境・社会・経済の取り組みを書き出します。新しいことを始める前に、実績を確認します。
- 優先する取り組みの選定:自社の事業と関わりの深い取り組みを、3〜5つ程度に絞ります。多くを並べるよりも、続けられる範囲に絞るほうが、信頼されます。
- 指標と目標の設定:各取り組みについて、現状値を把握し、1年後の目標を置きます。
- 宣言文の作成と社内共有:経営者の名前で宣言文をまとめ、従業員に説明します。現場の協力がなければ、取り組みは進みません。
- 自治体制度への申請と公表:自社の所在地に制度があれば、要件を確認して申請します。あわせて、自社サイトなどで公表します。
環境省は、企業向けに「持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド」を公表しており、企業にとってSDGsに取り組む意義と、具体的な取り組みの進め方、先駆的な企業の事例などを説明しています(環境省「SDGs活用ガイド」)。取り組みの進め方を詳しく知りたい場合は、あわせて参照してください。
つまずきやすい点と注意事項
実態の伴わない宣言を避ける
宣言の内容が実際の取り組みと離れていると、取引先や求職者からの信頼を損なうおそれがあります。環境や社会への貢献を実態以上に見せかける行為は、「SDGsウォッシュ」と呼ばれ、批判の対象となる場合があります。宣言には、すでに実施していること、または実施できる見通しのあることだけを書きます。
自治体の制度は内容と要件が異なる
ここで紹介した3つの制度だけでも、対象・要件・手続きは異なります。たとえば神奈川県では、登録後に県の取り組みへの参加が求められます。申請前に、募集要項を読み、登録後の義務や負担を確認してください。費用や更新の有無、申請期間なども、制度ごとに異なります。
登録や認証は宣言の代わりにならない
自治体の登録を受けたあとも、自社の宣言や取り組みの内容は、自社の責任で整理しておく必要があります。登録証やロゴは、取り組みそのものを示すものではありません。何に取り組み、どう成果を測っているのかを、自社の言葉で説明できる状態にしておくことが重要です。
まとめ
中小企業がSDGs宣言を作る際のポイントは、次の3つです。
- 宣言・登録・認証は別のものであり、自治体の制度ごとに求められる内容が異なる
- 宣言には、基本方針、環境・社会・経済の3分野の取り組み、指標、実施体制、公表方法を盛り込む
- まず自社の取り組みを棚卸しし、所在地の自治体の制度を確認したうえで、実態に合う範囲で宣言する
人事・労務の面では、働き方の改善や人材育成といった「社会」の取り組みが、宣言の中心になることが多くあります。自社の制度や運用を点検するところから、宣言づくりを始めてみてはいかがでしょうか。人事制度や賃金制度の整備についてのご相談は、株式会社ネクストプレナーズでも承っています。
本記事は公的機関の公表資料等を基にした一般的な情報です。個別の制度設計・手続きは専門家にご確認ください。また、自治体の制度の内容は変更されることがあるため、申請の際は各自治体の最新の案内をご確認ください。
よくある質問
Q. SDGs宣言は、必ず自治体に登録しなければなりませんか。
いいえ。SDGs宣言は自社の方針を示す文書であり、自治体への登録は任意です。ただし、埼玉県のように宣言書の提出を登録の要件としている制度もあります。取引先や求職者への説明材料として登録や認証を活用したい場合に、所在地の自治体の制度を確認するとよいでしょう。
Q. 宣言・登録・認証は、何が違いますか。
内閣府のガイドラインの名称に、宣言・登録・認証の3つの言葉が含まれており、自治体ごとに制度の形が異なります。この記事で確認した例では、埼玉県は宣言書の提出を要件とする登録、神奈川県は要件を満たすことを確認する登録、横浜市は評価項目の点数で3つのランクに分ける認証です。申請前に、制度のタイプと要件を確認してください。
Q. SDGs宣言には何を書けばよいですか。
全国共通の型はありませんが、基本方針、環境・社会・経済の3分野の取り組み、取り組みを測る指標、実施体制と見直しの時期、公表方法の5項目を盛り込むと整理しやすくなります。埼玉県は3分野ごとの取り組みと指標の設定を、神奈川県は三側面に関わる取り組みと対外的な公表を要件としています。自治体の制度を使う場合は、定められた様式を優先してください。
Q. SDGsの取り組みがまだ少ない会社でも宣言できますか。
宣言できます。まず、すでに行っている省エネ、働き方の改善、人材育成、地域貢献などを棚卸しし、実態のある取り組みだけを書きます。実態以上に見せる記述は、取引先や求職者の信頼を損なうおそれがあります。登録制度を使う場合は、制度の要件を満たすかどうかを事前に確認してください。
Q. 自治体のSDGs登録制度に申請するための費用はかかりますか。
制度によって異なり、公式ページで費用が明記されているとは限りません。横浜市のY-SDGsは無料と案内されています。埼玉県と神奈川県は、確認したページに費用の記載がなかったため、募集要項や担当窓口で確認してください。
出典・参考資料
- 地方創生SDGs金融(地方創生SDGs宣言・登録・認証制度ガイドライン)(内閣府地方創生推進事務局)
- 埼玉県SDGsパートナー登録制度(埼玉県)
- 埼玉県SDGsパートナー登録制度の様式について(埼玉県)
- かながわSDGsパートナー(神奈川県)
- 横浜市SDGs認証制度「Y-SDGs」(横浜市)
- 持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド(環境省)
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