中小企業のSDGs取り組み事例|公的機関の事例集で見える共通パターンと、自社で真似できる最初の一歩

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中小企業のSDGs取り組み事例を、中小機構のJ-Net21や小規模企業白書などの公的資料で読み、共通するパターンを整理しました。従業員1人から68人までの5社を取り上げ、業種ごとの出発点の違いと、自社の強みや既存の設備を生かして始める最初の一歩の決め方を、手順にして解説します。

公的機関の事例集とは何か。どこで読めるのか

公的機関の事例集とは、国の機関や中小企業基盤整備機構(中小機構)などがまとめた資料のことです。SDGs(持続可能な開発目標)に取り組む中小企業を取材し、取組の中身を整理して公開しています。民間のまとめ記事と違い、取材先の所在地・業種・規模が明記されているため、自社と条件の近い会社を探しやすくなっています。

代表的な資料は次の3つです。

関東経済産業局は、令和5年度に「地域の中堅・中小企業の『SDGs経営』先進レポート」も公表しています。地域の企業が連携して一体でSDGsを進める3つの取組を詳しく紹介した資料です。

関東経済産業局の事例一覧には、2026年11月時点で10社が載っています。所在地は東京都が3社、茨城県と埼玉県が各2社、神奈川県・長野県・静岡県が各1社です。業種は製造業が6社で、残りは建設業、物品賃貸業、かばん・袋物小売業、燃料小売業が1社ずつです。ただし、確認した時点では一覧から各社のPDFを開けませんでした。そこで本記事では、一覧に書かれた情報だけを使いました。各社の取組の中身は、内容を確認できたJ-Net21と小規模企業白書の事例から紹介します。

公的資料から見る、中小企業のSDGsの現在地

事例を読む前に、小規模事業者全体の状況を確認します。2021年版の小規模企業白書によると、SDGsに「既に取組を行っている」または「取組を検討している」小規模事業者は約1割でした。「内容を知っているが取組は検討していない」「言葉を聞いたことはあるが内容は知らない」と答えた層も加えると、約7割です。

取り組む目的でいちばん多かったのは「社会的責任の達成」です。「自社・自社商品・サービスの知名度向上」「自社好感度の向上」「新たな事業機会の獲得」は、それぞれ約3割から約4割でした。BtoB型の事業者では、「取引先との関係維持」を挙げた事業者も約3割います。取組の効果については、約5割が「大いに効果があった」または「ある程度効果があった」と答えています。

ただし、これは調査の結果であり、取り組めば業績が上がるという保証ではありません。白書は、SDGsに取り組む事業者で売上高の回復した事業者の割合が高いと示しました。そのうえで、「回復に結びついている可能性がある」と書くにとどめています。

中小企業のSDGs取り組み事例を5社読む

ここからは、J-Net21の「SDGs達成に向けて」と小規模企業白書に載っている事例から、業種も規模も異なる5社を取り上げます。数字はいずれも各ページに書かれたもので、取材時点の情報です。

志田内海株式会社(青森県・土木・建築):本業の知見を海の保全に向けた

志田内海は、土木・建築・砕石・道路維持を手がける建設会社で、従業員は68人です。志田崇会長は、前身の一つである志田建設の後継者でした。漁港建設で付き合いのあった漁師や研究者から、陸奥湾のアマモ場が減っていると聞きました。アマモ場とは、小魚の隠れ場や産卵場所になる海草の群生地のことです。これを機に、2007年からアマモを守り育てる礁体「竜宮礁」の開発を始めました。

実証実験では、3基の礁体を海底に置いて約2年調べました。その結果、礁体の中でアマモが育つこと、ナマコやメバルの稚魚が生息すること、桁曳き網漁の妨げにならないことを確かめています。礁体は直径1.5m、高さ0.3mのコンクリート製で、設置数は県外を含めて4万基以上になりました。2022年には社内にサステナブル事業室を設けました。2025年3月には、NPO法人や大学と保全に取り組むあおもり駅前ビーチの0.37haの海域が、環境省の自然共生サイトに認定されています。

水揚げされても捨てられることのある未利用魚のカナガシラを使った「かながしらラーメン」も、事業化しました。イベントで200食を売り切ったあと、通常は1kgあたり10〜20円程度の魚を、100円で漁師から買い入れています。採用面では、新卒採用で「SDGsへの取り組みを知って志望した」と話す学生がいると、同社は述べています。

株式会社金森合金(石川県・銅合金・アルミ合金などの鋳造):技術を廃材の循環に向けた

金森合金は1714年に創業した従業員10人の鋳造会社です。通常は別々に行うことが多い精錬と鋳造を、社内で一貫して行っています。SDGsを進めるホテル側がこの技術に着目し、取り組みが始まりました。ハイアット セントリック 金沢で出るアルミ缶を精錬し、ホテルのレストランで使う皿などに作り変えています。2023年には、いしかわエコデザイン賞の銀賞(製品領域)を受賞しています。

2024年1月の能登半島地震のあと、被災地の廃材で大阪・関西万博のサインスタンドを作ることを提案し、同年5月に選ばれました。廃材は正規の回収先に届くまでに3か月かかり、約300kgが集まったと同社は振り返っています。

エシカルバンブー株式会社(山口県・竹製品の製造・販売):地域の困りごとを商品にした

エシカルバンブーは2016年に創業した従業員約20人の会社で、竹を使ったタオルや洗剤を製造・販売しています。出発点は、創業者の田澤恵津子氏がフリーランスでマーケティングの仕事をしていた頃に、大手電力会社から受けた相談でした。放置された竹林が送電線にからみつき、停電が起きているという内容です。田澤氏は、伐採してもすぐ生える竹を、計画的に手入れすれば半永久的に使える資源だと捉え直しました。

同社は、ボランティアや補助金に頼らず、竹林の管理者から販売者まで関わる全員が利益を得ることで事業が続くと考えています。そのため、安売りをせずに付加価値を付けて販売しています。所有分を含めて管理する竹林は約100haです。2020年2月には、宇部市の廃校を借り上げた竹の総合施設「竹ラボ」を開設しました。2023年11月には、第11回グッドライフアワードの環境大臣賞・地域コミュニティ部門を受賞しています。

株式会社colourloop(京都府・廃棄繊維のリサイクル):従業員1人でも大手と組めた

colourloopは、2019年に京都工芸繊維大学の大学発ベンチャーとして起業した、従業員1人の会社です。国内では衣類などの繊維が年間200万t廃棄され、リサイクルされるのは26%程度にとどまっています。同社は、廃棄繊維を色で分けてから再生すれば、くすんだ灰色にならず、魅力のある素材になると考えました。そして「カラーリサイクルシステム」を確立しています。

製造まで自社で抱えず、廃棄衣料のリサイクルを手がける会社と、家具の企画・製造を手がける会社の2社と協力しています。この3社で、廃棄繊維を素材にしたベンチ5脚を大阪・関西万博に提供する予定です(取材時点は2025年3月)。文具大手や衣料・小物のセレクトショップとのコラボ商品もあります。同社は、無理して買ってもらうのではなく、魅力的だから買いたいと思われる商品を目指すと話しています。

株式会社きぬのいえ(埼玉県・染色整理業):新しい設備を買わずに始めた

きぬのいえは、従業員6名の染色整理業の会社です。売上の7割を占めるOEMが伸び悩み、新しい収益の柱を探していました。寄居町商工会のワークショップで、退色や黄ばみの出た衣類を再生する染め直しの案が出ます。決め手は2つです。新たな設備投資が要らず、培ってきた技術ですぐ始められること、そしてSDGsの12番「つくる責任 つかう責任」に合っていることです。

2020年6月に始めた染め直しサービス「SOMA Re:」は、既存の染め工程の遊休時間を使っています。価格はTシャツ1枚1,000円からです。開始から半年で受注が500件を超え、売上の5%を占めるまでになりました。一方で、染め直しは一人の染色職人が担っており、増える注文への対応が課題だと白書は書いています。

5社を並べると、次のとおりです。

企業 所在地・業種 従業員数 出発点 組んだ相手
志田内海 青森県・土木・建築 68人 漁港建設で聞いた、陸奥湾のアマモ場の減少 NPO法人、大学、地元の漁業関係者
金森合金 石川県・鋳造 10人 社内に一貫して持つ精錬・鋳造の技術 ホテル
エシカルバンブー 山口県・竹製品 約20人 電力会社から相談された竹林の被害 行政、地域住民、事業者
colourloop 京都府・廃棄繊維のリサイクル 1人 繊維のリサイクル率が低いという課題 大学、リサイクル会社、家具の製造会社
きぬのいえ 埼玉県・染色整理業 6名 OEMの伸び悩みと、既存の染色技術 商工会のワークショップの参加者

業種別に見ると、起点にしている自社の資産が違う

5社を業種ごとに並べると、SDGsの出発点が違うことが分かります。ただし、5社だけを筆者が整理したもので、業種全体の傾向を示すものではありません。

業種 起点にした自社の資産 事例
建設業 工事の現場で得た知見と、地元の関係者とのつながり 志田内海
金属の鋳造(製造業) 社内で一貫して持つ精錬・鋳造の技術 金森合金
繊維・染色 既存の染色技術、設備の遊休時間、リサイクルの研究成果 きぬのいえ、colourloop
竹製品 地域で放置されている未利用の資源と、マーケティングの経験 エシカルバンブー

関東経済産業局の一覧には、燃料小売業、かばん・袋物小売業、物品賃貸業の会社も載っています。これらの取組の中身は本記事では確認できていないため、該当する業種の方は、各社の資料を直接確認してください。

5社に共通する4つのパターン

5社の取組を読み比べると、次の4つが共通していました。これも筆者の整理です。

パターン1:新しい事業を作る前に、自社の強みから出発している

5社とも、SDGsのためにまったく新しいことを始めたわけではありません。志田内海は漁港建設の知見、金森合金は精錬と鋳造の技術、きぬのいえは染色の技術を、地域や社会の課題に向けています。「何をするか」より先に、「自社に何ができるか」を整理しています。

パターン2:追加の投資を抑える工夫がある

きぬのいえは、新しい設備を買わず、染め工程の遊休時間を使いました。金森合金は、地元新聞社が印刷で使ったアルミ製の刷版を回収してアルミ合金製品に作り変えています。精錬と鋳造を社内で一貫して行えるため、廃材を自社の技術で素材に戻せます。志田内海も、最初の実証実験は3基の礁体を海底に置くところから始めました。

パターン3:一社で抱えず、地域や取引先、大学と組んでいる

エシカルバンブーが関わる「YAMAGUCHI Bamboo Mission」は、2023年8月に発足しました。行政・地域・民間が加わる連携の枠組みです。colourloopは、リサイクルと家具製造の2社と組んでいます。志田内海は、NPO法人や大学と保全活動を進めています。関東経済産業局が令和5年度のレポートで、地域の企業が連携して進めるSDGsに着目したのも、同じ流れです。

パターン4:小さく試し、採算が合う形にしている

志田内海のかながしらラーメンは、1年以上の試行錯誤のあと、イベントで200食を売り切ってから事業化を決めました。エシカルバンブーは、補助金に頼らず、関わる全員が利益を得る形を目指しています。きぬのいえは、1枚1,000円からの価格で始め、半年の受注数と売上比率を確かめています。

自社で真似できる最初の一歩:5ステップ

上のパターンを自社に当てはめる手順です。最初の試行を1つ決めるところまでを扱います。

ステップ1:自社の技術・設備・人脈・廃棄物を書き出す

まず、使える資産を紙に書き出します。技術や資格、設備の空き時間、捨てている端材や廃材、取引先や地域とのつながりが対象です。きぬのいえが活用した染め工程の遊休時間は、書き出さなければ資産として意識されにくい例です。

ステップ2:地域や取引先の困りごとと照らし合わせる

次に、書き出した資産で解決できそうな困りごとを探します。エシカルバンブーは電力会社の相談から、志田内海は漁師や研究者の話から始まりました。取引先、自治体、商工会、金融機関の担当者に、困っていることを聞いてみるのが近道です。

ステップ3:既存の設備と人でできる小さな試行を1つ決める

候補が出たら、新しい設備や人を増やさなくても始められるものを1つだけ選びます。きぬのいえの染め直しのように、既存の設備と技術で始められ、価格を決めて売れる形なら、採算の見通しを立てやすい形です。

ステップ4:関連するSDGsのゴールを2〜3個に絞る

試行が決まったら、関連するゴールを2〜3個に絞って社内外に示します。きぬのいえは、染め直しを「つくる責任 つかう責任」と結び付けました。ゴールの選び方は、SDGsの17ゴールの選び方で手順を解説しています。

ステップ5:数字で記録し、続けるかどうかを判断する

最後に、件数や売上に占める割合などを記録します。きぬのいえは、受注件数と売上比率を確認できる状態でした。指標の絞り方は、SDGsのKPI設定の方法も参考にしてください。進め方に迷うときは、中小企業のSDGs相談窓口と無料の公的支援も確認してください。

事例を読むときの3つの注意点

成果の出た取組が載っていると考える

事例集に載るのは、取材に応じられた取組であり、成果が見えているものが多いと考えられます。うまくいかなかった取組は載りにくいため、事例は「参考にする材料」にとどめ、そのまま再現できるとは考えないほうが安全です。

規模・業種・地域が違えば、条件も違う

万博への出展や表彰は、取組を続けた結果です。最初の目標にする必要はありません。自社の規模や地域で、同じ条件がそろうかを確かめてから、取り入れる部分を選びます。

人手と社内の理解が壁になりやすい

小規模企業白書のコラムに、九州経済産業局が2018年度に行った地域企業へのアンケートが載っています。SDGs推進の課題は、「社会的な認知度が高まっていない」が47.8%、「マンパワーの不足」が36.3%、「社内の理解度が低い」が32.3%でした。数年前の調査ですが、取組を始めるときは、担当者を1人決め、経営者が社内に方針を伝えるところから始めるのが現実的です。

ネクストプレナーズの見解

事例集を読むとき、同じ業種の会社だけを探すと、真似できる点が見つかりにくいと考えます。5社に共通していたのは業種ではなく、自社の強みと、地域や取引先の困りごとが重なる場所を見つけていたことです。まず自社の強みを棚卸しし、事例集は、その強みと似た使い方をしている会社を探すために読むことをおすすめします。表彰や認証を最初の目標にせず、小さく試して数字を残すところから始めるのが現実的だと考えます。

まとめ:事例集は、自社の強みを探すために読む

公的機関の事例集から読み取れるのは、SDGsの取組が、自社の強みや既存の設備と、地域や取引先の困りごとが重なる場所から生まれているという点です。次の一歩として、自社の技術・設備・人脈・廃棄物を1枚の紙に書き出すところから始めてください。取組の優先順位づけに迷う場合は、ネクストプレナーズにご相談いただくこともできます。

本記事は公的機関の公表資料等を基にした一般的な情報です。個別の制度設計・手続きは専門家にご確認ください。

監修

監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)

東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長。

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よくある質問

Q. 中小企業はSDGsで具体的に何をしていますか?

本業の強みや設備を生かした取組が中心です。たとえば建設会社は漁港建設の知見で海藻の保全礁を作り、鋳造会社はホテルで出たアルミ缶を皿に作り変え、染色会社は遊休時間で衣類の染め直しを始めています。いずれも中小機構のJ-Net21や小規模企業白書の事例で確認できます。

Q. 従業員が数人の会社でもSDGsに取り組めますか?

取り組めます。J-Net21の事例には、従業員1人のcolourloop、従業員10人の金森合金があり、小規模企業白書には従業員6名のきぬのいえが載っています。いずれも大学、ホテル、商工会など外部と組み、少ない人手を補っています。

Q. SDGsの取組を始めるのに、新しい設備投資は必要ですか?

必ず必要とは限りません。きぬのいえは、新たな設備投資をせず、既存の染め工程の遊休時間で染め直しサービスを始めました。ただし、事業の内容によって必要な投資は異なるため、まず自社の既存設備でできる範囲を確認してください。

Q. 中小企業のSDGs取り組み事例は、どこで探せますか?

公的機関では、経済産業省関東経済産業局の先進事例のページ、中小機構のJ-Net21、中小企業庁の小規模企業白書で探せます。掲載時点が資料ごとに異なるため、更新日と取材時点を確認してから参考にしてください。

Q. 事例と同じ取組を真似すれば、売上や採用に効果が出ますか?

効果は保証できません。2021年版の小規模企業白書では、SDGsに取り組む小規模事業者の約5割が効果があったと答え、取り組む事業者のほうが売上高の回復した事業者の割合が高いという結果でしたが、白書は「回復に結びついている可能性がある」と書くにとどめています。

Q. SDGsの17ゴールのうち、どれを選べばよいですか?

自社の事業や課題との関わりが深いゴールを、2〜3個に絞って選びます。きぬのいえは、染め直しの事業を12番「つくる責任 つかう責任」と結び付けました。自社の強みと取組の内容から逆算して選ぶと、無理のない選び方になります。

出典・参考資料

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株式会社ネクストプレナーズの編集部です。賃金・報酬、人事評価、福利厚生、社宅、退職金・企業年金、労働組合など、人と制度に関する実務情報をお届けしています。

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