評価調整会議の進め方|評価者の甘辛を揃える中小企業向けの最小構成と、議論する対象の絞り方

この記事が役立ったら、シェアをお願いします。

リファラル採用2

評価調整会議は、評価者が付けた評価を持ち寄り、評価者ごとの甘辛を確認して揃える会議です。ただし全員分を議論しようとすると会議が長引き、肝心の論点が埋もれがちです。従業員50〜300名の企業が運営できる最小構成(参加者・事前資料・時間配分)と、議論する対象を絞る手順を解説します。厚生労働省の人事評価実施規程などの公表資料も参考に、評価者研修の次に整えたい運用を整理します。

評価調整会議とは何か

評価調整会議とは、評価者が付けた一次評価を持ち寄り、甘辛や基準のずれを確認して最終的な評価を決める会議のことです。「評価会議」「評価のすり合わせ」「キャリブレーション」と呼ぶ企業もあります。

同じ行動を見ても、A部長は「期待どおり」、B部長は「期待を超えた」と評価することがあります。ずれたまま昇給や賞与に反映すると、評価の中身より配属先で処遇が決まったと従業員が受け取りかねません。

評価者研修は、評価を付ける前に基準の読み方をそろえる取り組みです。評価調整会議は、評価を付けたあとに結果を点検する場です。つまり、研修で防ぎきれなかったずれを、会議で見つけて直す関係と言えます。研修の進め方は、評価者研修の進め方で解説しています。

評価のばらつきは、会議でどう揃えるのか

全員分の評価を議論せず、ずれが出やすい評価だけを3つの条件で選び、根拠を行動の事実で確認します。評価者が複数いる中小企業でも、これなら運営できる最小の進め方です。流れは、評価者別の分布を見る、議論の対象を絞る、根拠を確認する、変更の理由を記録する、の4段階です。

手順の詳細は後半で説明します。その前に確認したいのが、公的機関の人事評価での「調整」の位置づけです。

公的機関の人事評価に見る「調整」の位置づけ

厚生労働省の人事評価実施規程にある3者の役割分担

厚生労働省は、職員の人事評価の進め方を「厚生労働省人事評価実施規程」に定めています。第7条は、評価者、調整者、実施権者の3者で評価を確認する分担を示しています。

評価者が評価を行い、調整者がその評価を「不均衡があるかどうかという観点から審査」して全体評語を付ける、という順です。そのあと、実施権者が調整者による調整を審査し、適当と認める場合に確認を行う流れです。

この規程は厚生労働省の職員を対象にしたもので、民間企業には適用されません。それでも、評価する人、点検する人、最終確認をする人を分ける考え方は、会議の役割を決める際の参考にできます。

全員の評価を最初から見直すのではなく、不均衡が疑われる評価の点検に役割を絞れば、時間も短く済みます。調整の観点が「不均衡があるか」に置かれていることは、会議の設計の手がかりです。

自己評価と上司評価が違う項目は、理由を言葉にする

厚生労働省の「評価の方法について」は、職業能力評価基準に基づく評価シートの記入方法を説明しています。上司がコメントを書くとき、自己評価と上司評価が異なる項目は、具体的な行動例を示すとされています。「なぜこの評価であると判断したのか」も明示する扱いです。

そのうえで、認識を共有するためのフィードバック面談を行い、上司評価に修正の必要があれば評価を修正する流れです。

この考え方は、評価調整会議の確認にそのまま使えます。評価の根拠が行動の事実で書かれていれば、会議は評価者の印象ではなく、事実をもとに進められます。

中小企業向けの最小構成。誰が、何を用意し、どう進めるか

ここから先は、従業員50〜300名の企業を想定した、ネクストプレナーズの提案です。法令や公的機関が定めた形式ではないため、評価者の人数や評価の頻度に合わせて調整してください。

項目 最小構成の目安 そうする理由
参加者 評価者(部門長・課長など)全員、人事責任者、最終決定者(社長または担当役員) 評価者が全員そろわないと、部署どうしの基準を比べられないため
進行役 人事責任者。人事責任者が評価者を兼ねる場合、自部門の議論は別の参加者に進行を任せる 自部門の評価を説明しながら進行すると、公平に見えにくいため
事前資料 評価者別の評語分布表、評価シートと根拠メモ、自己評価と上司評価の差の一覧 当日に資料を探す時間を省くため
開催の頻度 評価期ごとに1回。
評価結果を確定する前に開く 確定したあとに開くと、変更しにくくなるため 時間配分 議論する対象者1人あたり5分程度を目安に、全体の長さを決める 全員分を議論しない前提で、時間を区切るため 最終決定 最終決定者が確認し、変更があれば理由を記録する 変更の責任の所在をはっきりさせるため

評価者が多い企業では、まず部門ごとに小さな会議を開き、そのあとに全社会議を1回開く2段階にする方法もあります。ただし、部門を超えたずれは全社会議でしか見つかりません。2段階にする場合も、全社会議には評価者別の評語分布表を出してください。

事前に配る資料は3点に絞る

資料が多いと、当日の議論より資料の読み込みに時間がかかります。次の3点があれば足ります。

  • 評価者別の評語分布表。評価者ごとに、各評語を付けた人数を並べた表です。
  • 評価シートと根拠メモ。評語に加えて、判断した行動の事実を1〜2行で書いたものです。
  • 自己評価と上司評価の差の一覧。大きく離れた人を人事が抜き出したもので、離れ方の基準は自社で決めます。

自己評価を取っていない企業は、3つ目を省いてかまいません。

議論する対象の絞り方。3つの条件で選ぶ

議論の対象は、次の3つに絞ります。評価者の分布が他と大きくずれている部署の評価、最上位と最下位の評価、自己評価と上司評価が大きく離れた評価です。どれにも当たらない評価は、会議では議論せずに確定します。

ステップ1:評価者別の分布を一覧にする

人事が、評価者ごとに各評語を付けた人数を集計します。評価者によって部下の人数が違うため、人数ではなく構成比で並べるほうが比べやすいです。

部下が2〜3人の評価者では、1人の評価で構成比が大きく動いてしまいます。分布の偏りだけでは判断せず、根拠メモの内容で確認してください。

ステップ2:3つの条件で議論の対象を選ぶ

条件1:評価者の分布が他と大きくずれている

他の評価者より最上位の評語が多い評価者や、中位の評語に集中している評価者は、基準の読み方がほかと違う可能性があります。どこからずれを問題にするかは、自社で決めておくとよいです。たとえば「全体の構成比と比べて2倍以上」のように数字で目安を置くと、毎回の判断が安定します。

条件2:最上位と最下位の評価

最上位や最下位は、昇給、賞与、昇格、降給など、処遇への影響が大きい評価です。根拠は、ほかの評価より丁寧に確認します。

条件3:自己評価と上司評価が大きく離れた評価

自己評価と上司の評価が大きく離れているときは、2つの可能性が考えられます。本人の知らない事実を上司が見ている場合と、上司が見落とした事実を本人が知っている場合です。厚生労働省の評価シートでも、この差には理由を書くとされています。

ステップ3:根拠を行動の事実で確認する

対象にした評価は、評価者が根拠を説明し、他の参加者が質問する形で進めます。質問は次の3つに絞ると、印象論に流れにくいです。

  • いつ、どの場面の行動を見て付けた評価なのか
  • 評価基準のどの項目に当たる行動か
  • 同じ等級の他者と比べて、どこが違うか

答えが「全体的に頑張っているから」のように行動の事実を含まない場合は、根拠が足りないと判断します。その場で結論を出さず、評価者に根拠メモの追記を頼んでください。

ステップ4:変更するか決め、理由を残す

変更するかどうかは、評価者の説明を聞いたうえで、最終決定者が判断します。変更する場合は、評価者が本人にフィードバックで説明できる理由かどうかを確認し、その場で記録します。評価者が理由を説明できない変更は、本人の納得を損ないかねません。

変更しないと決めた場合も、理由を1行で残してください。次回の会議で、同じ論点を最初から議論せずに済みます。

ステップ5:論点を次期の評価基準に反映する

同じ論点が複数の評価者から出た場合は、評価者の問題ではなく、基準の言葉が曖昧な可能性があります。たとえば、「期待どおり」の水準をどこに置くか、異動直後の人をどう評価するかなどが当たります。基準の改定は会議の場では決めず、人事が案をまとめて、次の評価期の前に周知する流れです。

会議で議論しないことを決めておく

扱わないことは、先に決めておくのが近道です。

  • 全員分、全項目の評価(議論の対象は3つの条件に当たる評価だけ)
  • 賞与原資や昇給率などの配分(別の会議で扱う)
  • 評価基準そのものの改定(論点を記録し、会議のあとに人事が検討する)

評価の点検と配分を同じ会議で扱うと、人件費の枠に合わせて評価を動かす議論に変わりかねません。評価と処遇をつなぐルールは、評価を昇給・賞与に反映する方法で整理しています。

評価調整会議で起きやすい失敗と防ぎ方

分布を揃えること自体が目的になる

評価者の分布に偏りがあっても、その部署に実際に成果の差があることもあります。分布は議論の入口にとどめ、評価を変える根拠は行動の事実に置いてください。評語の人数を、あらかじめ決めた比率に合わせる必要はありません。

声の大きい評価者の意見で決まる

発言の順番を先に決めておくのが有効です。まず評価者が根拠を述べ、次に他の参加者が質問し、最終決定者は最後に発言する順です。役職の高い人が先に意見を述べると、ほかの参加者は反対しにくくなります。

評価者を責める場になる

質問を「なぜその評価なのか」ではなく「どの場面を見たのか」にすると、責める雰囲気を和らげられます。会議の目的は評価者の判断を否定することではありません。全員が同じ基準で見られているかを確かめる場です。

経緯が記録に残らない

評価の根拠と調整の経緯を記録しておけば、本人から説明を求められたときに答えられます。評価を降給や降格の根拠にする場合の考え方は、人事評価を理由に降給・降格はできるかを参照してください。

ネクストプレナーズの見解

中小企業の評価調整会議は、統計処理を精密にするより、評価者が根拠を言葉にして質問し合う場にすべきだと考えます。評価者が少ない企業では、分布表の数字を眺めるより、根拠メモを読むほうがずれを見つけやすいでしょう。

よくある誤解は、会議で評価をそろえれば評価制度が機能する、という見方です。基準の言葉が曖昧なままだと、会議のたびに同じ議論が繰り返されます。会議で出た論点を、基準の改定につなげることをおすすめします。

次の評価期までにやること

次の評価期に間に合わせるなら、次の3つから始めてください。

  • 評価者別の評語分布表の様式を作る
  • 根拠メモの書式(いつ、どの場面、どの基準か)を決めて、評価者に配る
  • 最終決定者と会議の日程を決める

会議の設計や評価基準の見直しでお困りの場合は、ネクストプレナーズにご相談ください。

監修

監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)

東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長。

プロフィールを見る

本記事は公的機関の公表資料等を基にした一般的な情報です。個別の制度設計・手続きは専門家にご確認ください。

よくある質問

Q. 評価調整会議には誰が参加すればよいですか?

評価者全員、人事責任者、最終決定者の3者が基本です。評価者が全員そろわないと、部署どうしの基準を比べられません。人事責任者が評価者を兼ねる場合は、自部門の議論だけ別の参加者に進行を任せてください。

Q. 評価調整会議は年に何回開けばよいですか?

評価結果を確定する前に、評価期ごとに1回開くのが基本です。半期ごとに評価する企業なら年2回です。確定したあとに開くと、評価の変更が難しくなります。

Q. 評価者が少ない会社でも評価調整会議は必要ですか?

評価者が少ない会社でも、評価の根拠を第三者が確認する場として開く意味があります。評価者が1人なら評価者間の甘辛は生じませんが、根拠が行動の事実で説明できているかは、社長や人事責任者が確認できます。

Q. 評価調整会議で評価を変更してもよいですか?

変更できます。ただし、根拠が行動の事実で説明でき、評価者が本人に説明できる場合に限ってください。理由を記録しておくと、あとから説明を求められたときに答えられます。

Q. 評価調整会議と評価者研修は何が違いますか?

評価者研修は評価を付ける前に基準の読み方をそろえる取り組みで、評価調整会議は付けたあとに結果を点検する取り組みです。両方を行うと、ずれを防ぐ手立てと、残ったずれを見つける手立てがそろいます。

Q. 評語の人数を決まった比率に合わせる必要はありますか?

合わせる必要はありません。評価調整会議の目的は評価者間の不均衡を点検することで、分布を決まった比率にそろえることではありません。分布の偏りは、議論の対象を選ぶ入口として使います。

出典・参考資料

The following two tabs change content below.
投稿者アバター
人事ブログ編集部
ネクストプレナーズは働き方改革の様々な提案を行っております。ブログによる情報発信に加えて,セミナーも開催しておりますので是非ご参加ください。

人と制度に関するご相談は

  • 当社は、人事制度、企業年金制度、社宅制度等の企業の制度設計コンサルティングだけではなく、生成AI・DX導入による働き方改革を支援しております。また、労働組合向けにコンサルティングサービスも提供しています。お困りなことがございましたら、ご相談ください。

この記事が役立ったら、シェアをお願いします。