人事評価を昇給・賞与に反映する方法|評価と処遇をつなぐルールの作り方5ステップ

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面談

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人事評価制度はあるのに、昇給や賞与にはほとんど反映できていない。そうした中小企業の人事担当者に向けて、評価と処遇をつなぐルールの作り方を解説します。就業規則の記載事項と不利益変更の注意点を確認したうえで、昇給と賞与の役割分担、反映方式の選び方、原資の試算、規程への落とし込みを5ステップで整理し、運用上の落とし穴も紹介します。

評価はしているのに処遇に反映できていない、とはどういう状態か

人事評価制度を導入しているのに、評価結果が昇給や賞与にほとんど反映されていない中小企業は少なくありません。評価シートの記入や面談には時間をかけているのに、昇給は全員ほぼ一律、賞与も業績に応じた全社一律の支給になっている、という状態です。この状態が続くと、従業員は「評価をがんばっても給与が変わらない」と受け止め、評価面談そのものが形式的なものになっていきます。

よくある3つの症状

評価と処遇が切れている会社には、次のような共通点があります。

  • 評価と報酬の対応表がない:評価が「A」「B」と出ても、それが昇給額や賞与額にどう変換されるのかが決まっていない
  • 昇給が年功的に決まっている:賃金表の号俸が毎年自動的に上がる仕組みのまま、評価が関与する余地がない
  • 賞与の配分が経営者の裁量になっている:賞与の総額は決まるが、個人への配分基準が文書化されておらず、説明できない

本記事では、評価結果を昇給・賞与につなぐための「ルール」を、法的な前提の確認から、設計の手順、運用での注意点まで順に解説します。

ルールを作る前に押さえる法的な前提

評価と処遇をつなぐルールは、最終的に就業規則や賃金規程に落とし込む必要があります。設計の前に、関係する法的な前提を確認しておきましょう。

昇給に関する事項は就業規則の必ず書くべき項目

労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する事業場に就業規則の作成と届出を求めています(厚生労働省 栃木労働局の解説)。記載事項のうち、「賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」は、どの会社でも必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)とされています。つまり、昇給の仕組みは、そもそも就業規則に書いておくべき事項です。

賞与は制度を設ける場合に記載する

一方、賞与などの臨時の賃金については、制度を設ける場合に限って就業規則への記載が求められます(確かめよう労働条件(厚生労働省))。賞与を支給する以上は、支給の対象者、算定の方法、支給時期などを規程に明記しておくことが、従業員への説明責任の面でも重要です。

評価の反映ルールを変更するときは不利益変更に注意する

これまで年功的に上がっていた昇給を、評価連動に切り替える場合は、従業員にとって不利益になる人が出る可能性があります。労働条件は、労働者と使用者の合意に基づいて決定・変更するのが原則です。就業規則の変更によって労働条件を変更する場合は、変更が合理的であることと、変更後の就業規則を労働者に周知させていることが必要で、合理性は、労働者が受ける不利益の程度、変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働組合等との交渉状況などを踏まえて判断されます(労働契約ポータルサイト(厚生労働省))。

この点から、制度の切り替えでは次の工夫が有効です。

  • 導入の目的と仕組みを事前に説明し、従業員代表や労働組合の意見を聞く
  • 評価による差をつける範囲を、段階的に広げる(初年度は賞与のみ反映する、など)
  • 就業規則の変更時には、労働者の意見を聴いたうえで届け出る(変更の場合も同様です)

評価と処遇をつなぐルールの作り方5ステップ

ステップ1:昇給と賞与の役割を分ける

最初に決めるのは、昇給と賞与のそれぞれに「評価のどの側面を反映させるか」です。役割を混ぜてしまうと、評価の結果を説明しにくくなります。

項目 昇給(基本給の改定) 賞与
主に反映する評価 能力・行動の評価(中長期の成長) 期間の業績・成果の評価(短期の貢献)
効果が及ぶ期間 翌期以降も続く(基本給が積み上がる) その期のみ
設計上の注意 一度上げると下げにくいため、慎重に設計する 会社の業績に応じて総額を調整しやすい

基本給の昇給は毎年積み上がるため、評価の差が長期的に大きな賃金差になります。賞与は単年度で完結するため、評価の差を見せやすい反面、会社業績の影響も受けます。この違いを踏まえて、昇給は「能力・行動評価」、賞与は「成果・業績評価」を中心に反映する設計が、説明しやすい形です。

ステップ2:評価の区分を決め、処遇に変換する単位をそろえる

評価結果を処遇に変換するためには、評価が「S・A・B・C・D」のような段階や点数の区分で出ている必要があります。区分の数は、たとえば5段階(S・A・B・C・D)にする方法があり、評価者が中間の評価に集中しやすい場合は、4段階(中間の「普通」をなくす)にする方法もあります。区分の定義は「どのような状態ならAか」を行動や成果の言葉で示し、評価者によって解釈がぶれないようにします。

ステップ3:反映の方式を選ぶ

評価の区分を処遇に変換する方式には、主に次のようなものがあります。

対象 方式 内容 向いている会社
昇給 号俸(昇給ピッチ)方式 評価区分ごとに上がる号俸数を決める 賃金テーブルがすでにある会社
昇給 昇給率マトリクス方式 評価区分と現在の賃金水準(等級内の位置)の組み合わせで昇給率を決める 等級内の賃金のばらつきを調整したい会社
賞与 基本給連動方式 基本給に基準月数と評価係数を掛けて算出する 賞与の算式を分かりやすく示したい会社
賞与 業績連動+個人評価方式 会社業績で総額を決め、個人評価で配分する 業績の変動が大きい会社

賃金テーブルがまだ整っていない場合は、先に等級と号俸の仕組みを整えておくと、昇給への反映が設計しやすくなります。

ステップ4:原資を先に決め、配分の差を試算する

評価連動のルールは、まず昇給と賞与の総額(原資)を決めてから、その原資を評価区分にどう配分するかを考えます。評価区分ごとの人数分布を過去の評価結果から仮置きし、配分した場合に総額が原資に収まるかを試算します。たとえば、評価が高い人の昇給を手厚くしても、全体の分布がA評価に偏っていると、総額が想定を超えてしまいます。区分ごとの人数の目安を設けるか、原資を超えた場合の調整ルールを決めておく必要があります。

ステップ5:就業規則・賃金規程に書き、手順を文書化する

最後に、決めた内容を賃金規程などに落とし込みます。次の項目が書かれているかを確認してください。

  • 昇給の時期(毎年何月に行うか)と、評価の対象期間
  • 評価結果と昇給額・賞与額の関係(対応表や算式)
  • 賞与の支給対象者、支給時期、算定期間、算定方法
  • 会社の業績が悪い場合に、昇給や賞与を行わない・減額する場合があること
  • 休職や休業期間がある場合の扱い

昇給と賞与のルール例(数字は説明用の仮の例)

ここでは、考え方をつかむための仮の例を示します。数値は説明のために置いたもので、自社の賃金水準や原資に合わせて設計してください。

昇給の例:評価区分ごとの昇給号俸

評価区分 昇給の号俸数 イメージ
S 4号俸 期待を大きく上回る成果・行動
A 3号俸 期待を上回る
B 2号俸 期待どおり(標準)
C 1号俸 期待をやや下回る
D 0号俸 期待を大きく下回る

標準のB評価を2号俸とし、上下に1号俸ずつ差をつけた形です。D評価を0号俸としていますが、基本給を下げる降給を行う場合は、あらかじめ就業規則に降給の要件を定めておく必要があり、不利益変更の問題が生じやすい点に注意が必要です。

賞与の例:基本給連動と評価係数

賞与額を「基本給 × 基準月数 × 評価係数」で算出する例です。基準月数は会社業績をもとに毎期決め、評価係数は評価区分ごとに定めます。

評価区分 評価係数
S 1.2
A 1.1
B 1.0
C 0.9
D 0.8

基本給が30万円、その期の基準月数が2.0か月の従業員の場合、B評価なら30万円 × 2.0 × 1.0 = 60万円、A評価なら30万円 × 2.0 × 1.1 = 66万円となります。同じ基本給で、評価による差は6万円です。評価係数の幅を広げるほど差は大きくなりますが、評価の精度が十分でない段階で差を大きくすると、不満や不信感につながります。最初は小さな幅から始め、評価者の運用に慣れてから広げていくのが現実的です。

配分の差をつけすぎないための確認点

評価係数の平均が1.0前後になっているか、つまり評価の分布を掛け合わせたときに総額が原資から大きくずれないかを、導入前に必ず試算します。ずれが大きい場合は、係数を見直すか、全体を調整する係数を別に設けます。

運用で起きやすい4つの落とし穴

評価者によって甘辛が出る

評価が処遇に直結すると、評価者は部下との関係を気にして、全員を高めに評価しがちです。そうなると、評価の差が出ず、原資も超えてしまいます。評価者研修で評価基準を共有し、評価の確定前に管理職が集まる調整会議を設けて、部署間のばらつきを確認することが有効です。

育児休業などを理由に不利益な評価をしてしまう

妊娠・出産や育児休業などを理由とする不利益な取扱いは禁止されています。厚生労働省の労働局の解説では、禁止される例として、減給や賞与等での不利益な算定、昇進・昇格の人事考課で不利益な評価を行うことが挙げられています(厚生労働省 福井労働局の解説)。評価期間中に休業した従業員の評価・賞与の扱いは、休業という事由そのものを理由に評価を下げることのないよう、規程と運用を点検してください。

賞与にかかる社会保険料の負担を見落とす

賞与にも社会保険料がかかります。日本年金機構の案内によると、賞与の保険料は、実際に支払われた賞与額(税引き前)から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に保険料率を掛けて計算し、事業主と被保険者が折半して負担します。標準賞与額には上限があり、健康保険は年度の累計額573万円、厚生年金保険は1か月あたり150万円とされています(同じ月に2回以上支給した場合は合算して上限が適用されます)(日本年金機構「賞与にかかる保険料はどのように計算するのですか。」)。評価に応じて賞与を増やすと、会社が負担する社会保険料も増えるため、総額人件費の試算には含めておきましょう。

また、年3回以下の支給が賞与の対象となり、支給したときは支給日から5日以内に賞与支払届を提出する必要があります(日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」)。評価の確定作業を理由に支給が遅れないよう、評価のスケジュールは賞与の支給日から逆算して組んでおきましょう。

説明できない評価結果が出る

評価が処遇に連動すると、従業員は評価結果をこれまで以上に気にします。評価の根拠を面談で具体的に伝え、改善点と次期の目標を示すことが、納得感を高める基本です。評価を処遇に反映する会社ほど、評価理由のフィードバックの質が問われます。

導入のスケジュールと進め方

評価と処遇をつなぐルールは、次の順で進めると失敗しにくくなります。

  1. 現状の整理:現在の昇給・賞与の決め方、過去数年の評価分布、原資の水準を確認する
  2. 設計:昇給と賞与の役割、反映方式、評価係数や号俸数を決める
  3. 試算:過去の評価結果を当てはめて、総額が原資に収まるか、個々の従業員の変動が大きすぎないかを確認する
  4. 周知と意見聴取:従業員に説明し、意見を聴く。就業規則・賃金規程を整備して届け出る
  5. 試行と見直し:1サイクル運用して、評価の分布、従業員の受け止め、原資とのずれを検証し、次期の設計に反映する

最初から完全な仕組みを目指す必要はありません。まずは賞与の一部に評価を反映させ、運用が安定してから昇給にも広げる、という段階的な進め方も有効です。個別の制度設計についてご相談がある場合は、株式会社ネクストプレナーズにお問い合わせください。

まとめ

評価と処遇をつなぐには、(1)昇給と賞与の役割を分ける、(2)評価区分を決める、(3)反映の方式を選ぶ、(4)原資を決めて試算する、(5)規程に書いて文書化する、の5つを順に進めます。そのうえで、制度変更は不利益変更の観点から、従業員への説明と意見聴取を丁寧に行い、運用では評価のばらつきや休業者の扱い、社会保険料の負担に注意してください。

本記事は公的機関の公表資料等を基にした一般的な情報です。個別の制度設計・手続きは専門家にご確認ください。

よくある質問

Q. 人事評価の結果は、昇給と賞与のどちらに反映するのがよいですか。

役割を分けて両方に反映する方法が説明しやすい形です。基本給の昇給には能力・行動の評価、賞与にはその期の成果・業績の評価を中心に反映します。昇給は翌期以降も基本給として積み上がるため慎重に設計し、賞与は単年度で完結するため評価の差を見せやすい、という違いがあります。

Q. 昇給や賞与のルールは、就業規則に書く必要がありますか。

昇給に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項とされており、記載が必要です。賞与などの臨時の賃金は、制度を設ける場合に記載が必要な事項です。なお、就業規則の作成義務があるのは常時10人以上の労働者を使用する事業場です。

Q. 年功的だった昇給を評価連動に変えると、不利益変更になりますか。

従業員の中に不利益を受ける人が出る場合は、不利益変更の問題になり得ます。就業規則の変更で労働条件を変えるには、変更が合理的であることと、変更後の就業規則を従業員に周知させることが必要です。合理性は、不利益の程度、変更の必要性、内容の相当性、労働組合等との交渉状況などを踏まえて判断されます。事前の説明と意見聴取を丁寧に行ってください。

Q. 評価に応じて賞与に差をつけると、社会保険料はどうなりますか。

賞与にも社会保険料がかかります。実際に支払った賞与額(税引き前)から1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に保険料率を掛けて計算し、事業主と被保険者が折半して負担します。標準賞与額には上限があります。評価に応じて賞与額を増やすと会社負担分も増えるため、総額人件費の試算に含めてください。

Q. 育児休業を取った従業員の評価や賞与は、どう扱えばよいですか。

育児休業などを理由とする不利益な取扱いは禁止されています。厚生労働省の労働局の解説では、賞与等での不利益な算定や、昇進・昇格の人事考課での不利益な評価が禁止される例として挙げられています。評価や賞与の算定で休業期間をどう扱うかは、規程と運用を点検し、判断に迷う場合は専門家や労働局に確認してください。

出典・参考資料

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人事ブログ編集部
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