インセンティブポイント制度は、従業員のモチベーション向上に役立つ新しい報酬制度として注目を集めています。
そこで今回は、インセンティブポイント制度の概要や具体例から、メリット・デメリット、導入の際の注意点、おススメの利用方法まで解説いたします。
目次
インセンティブポイント制度とは?
インセンティブポイントは、第3の報酬と呼ばれますように賃金・報酬制度の一つと考えられます。インセンティブポイントが、給与や賞与と違う点は、日々の細かな活動や成果に対して、報酬をポイントという形で支給するという点です。通常の評価制度に従った四半期や半期の中長期な成果に対しての報酬とは違い、短期の成果や行動に対しての報酬になります。
また、インセンティブポイントは、手当を含む給与や賞与と違い少額であることから、小さなゴールを設けやすく、非常に自由度が高い設計ができ、ポイントという性質上公開や相互付与などができることも特徴となります。インセンティブポイント制度は、日々の仕事に評価と報酬を直結させやすいため、従業員のモチベーション向上に役立つ費用対効果の高い制度です。
インセンティブポイント制度の具体例
インセンティブポイント制度は、個人やチームの日々の成果や行動を評価し、会社、上司または同僚からポイントが付与される制度です。具体的には、以下のような行動や成果に対して付与することができます。これらの付与ルールの数や種類は、企業独自で設定することができます。
インセンティブポイント制度導入の目的
インセンティブポイントは、自由度が高い設計ができることから目的も多種多様に考えられます。企業が考える大目標や部署が考える中目標、グループが考える小目標など段階で分けることも可能です。
具体的には以下のような目的に利用されることがあります。また、企業はインセンティブポイント制度を利用することにより、従業員への会社からのメッセージを明確にすることができます。
① 働き方改革の実現
- 朝9時に出社して定時に帰宅する(日単位) 100ポイント
- テレワークを1回利用する 100ポイント
- 男性社員が育児休暇を取得した 2000ポイント
② 新商品の販売をスタートダッシュさせる
- テレアポを実施した(件数毎) 100ポイント
- 販売代理店を新規に獲得した 1000ポイント
- SNSで新商品がつぶやかれた(件数毎) 100ポイント
③ チームワークを高めて職場環境を改善する
- 他メンバーの意見にアドバイスをする 50ポイント
- 他メンバーの作業を手助けする 100ポイント
- チーム内の業務の改善案を提案する 500ポイント
その他にも以下のような目的による設計などができます。
- 日々の努力を評価し、モチベーションを高める
- パートアルバイトの評価制度に利用する
- 生産性向上、エンゲージメントを促進する
- 従業員満足度向上させ定着率を向上させる
- チームワークとコミュニケーションを活性化する
- 現場の責任者に権限を付与する
インセンティブポイント制度と他の報酬制度の違い
インセンティブポイント制度と比較される制度として、賞与制度と歩合制度があります。インセンティブポイントと賞与の大きな違いは、会社の業績と連動するかしないかという点にあります。インセンティブポイントはあくまでも個人の行動や成果に対してのものであることから、会社の業績に影響を受けることは原則ありません。
また、インセンティブポイントと歩合給(手当)の違いは、歩合の場合は、営業契約など1件に対していくらを支払うというもののに対して、インセンティブポイントでは、契約以外のアポイントや資料請求などにも付与できる他、定量的ではない行動に対しても付与することができます。歩合制よりも自由度が非常に高い制度となります。
インセンティブポイント制度のメリット
① プロセス評価
インセンティブポイントは、付与の即時性という利点を生かし、数値化できない行動を評価することができます。ともすれば社内ボランティアとなりがちな作業に対して正当に評価することで、モチベーションの向上につながります。
② 可視化することで金額以上のモチベーションにつながる
インセンティブポイント制度は、ポイントであることから給与や賞与と違い、情報を共有することを比較的従業員も受け入れる傾向にあります。縁の下の力持ちの評価などが可視化されますので、これまで表に出づらい部分で周囲や会社を支えてきた従業員のモチベーションは勿論、ひいては他の従業員の他者をサポートすることに対するモチベーションの向上にもつながります。
③ 利用目的の自由度の高さ
インセンティブポイント制度は、多種多様な目的に対して利用できます。生産性向上、エンゲージメント、コミュニケーションの活性化、働き方改革など様々な目的を達成するための行動や成果に対してポイントを付与するルール設計ができます。
インセンティブポイント制度のデメリット
① 予算(支出)
インセンティブポイント制度をあらたに導入する場合は、報酬である以上企業のあらたな支出となります。仮に月に2000円を従業員に支給することを目安とした場合、従業員1000名の会社では、月間200万円のあらたな支出となります。また、インセンティブポイントの原資を給与や賞与に求めた場合、歩合の色合いが強くなり各人の収入が安定しない恐れがあり、モチベーションの低下につながります。
② 個人間格差
インセンティブポイントは、評価に対しての報酬であることから個人間での格差が生じます。評価制度や報酬制度によるものですので、格差自体は発生しますが、インセンティブポイントの付与結果をチーム内で共有や公開した場合、チーム内の雰囲気が悪くなることがあります。
③ 成果主義の弊害・個人主義の助長
インセンティブポイントは、明確なルール(行動)に紐付き支給される報酬であることから、その行動や成果のみに囚われる方がでてきます。インセンティブポイントを付与する成果や行動のみを実施する方がでてくることがあり、組織としての活動や中長期の目標への行動が阻害される恐れがあります。
インセンティブポイント制度の注意点
① インセンティブポイントの付与ポイント額
インセンティブポイントは、1つのポイント付与基準に対して、ポイント額は自由に決められます。しかしながら、ポイント額は必ずしも高いから良いというものではありません。
例えば、ポイントが高ければ、ポイント付与をするための行動のみを目指しがちになります。しかし、逆にポイント額が低いと、モチベーションが低くなりインセンティブポイント制度が形骸化してしまいます。
② インセンティブポイントの利用先
支給されたインセンティブポイントが利用されなければ、報酬としての意義がありません。魅力的なポイント利用先がない場合は、逆にモチベーション低下につながりますので、社員アンケートなどで事前に確認するか、ポイント利用先を複数用意するかをした方が良いでしょう。また、溜まったインセンティブポイントを消化するよう期限を設けることや、キャンペーンなどの実施も併せて検討しましょう。
③ インセンティブポイント付与ルールは会社の方針に従う
インセンティブポイント制度は、人事制度である以上会社の経営戦略や方針に従う必要があります。会社の経営戦略や方針に沿う形でインセンティブポイント制度を設計すると非常に高い効果を得られますが、逆に齟齬がある場合は、インセンティブポイント制度が害悪になることもあります。また、評価制度の中長期(四半期、半期、年間)の目標と齟齬がでることのないよう、付与ルールを設計しなければなりません。
インセンティブポイント制度の賢い利用方法
ここで、当社がお勧めするインセンティブポイント制度の効果的な使い方をご紹介します。
① インセンティブポイント制度を 1on1 と組み合わせて使う
インセンティブポイント制度は短期行動を評価する制度であるため、1on1ミーティングとの親和性が高いです。1on1ミーティングは、多くの場合、週に1回(短いサイクルで)実施することから、1週間の行動や成果を言葉だけでなく、インセンティブポイントとして評価することができるため、1on1ミーティングの効果を向上させることができます。
② インセンティブポイント制度をパートアルバイトの評価制度に使う
パートアルバイトに対して独立した評価制度を設計している企業は少なく、またパートアルバイトの評価は多くの場合時給に直結することから、自由度が少なく評価期間も長くなりがちになります。例えば、無理にシフトに入った、急遽別の拠点のヘルプをしたという貢献に、金銭的な報酬を出すことは、システム上難しい場合があります。
インセンティブポイント制度は、第3の報酬制度として独立して設計することができるため、パートアルバイトの行動や日頃の成果を適切に評価することができ、パートアルバイトに対して評価制度が確立していない場合は、インセンティブポイント制度を利用することができます。
③ インセンティブポイント制度をサンクス制度(サンクスカード)に使う
サンクス制度又はサンクスカードは、従業員同士が感謝を相互に送ることで、コミュニケーションを活性化し、チームワークを高める効果があります。サンクスカードは、アナログの手書きで送りあうこともできますが、デジタルとして利用することもできます。サンクスカードは必ずしも報酬とは紐づくものではありませんが、インセンティブポイント制度と紐づけポイントを相互付与することで、累積感謝を可視化することもできことから、効果的に利用することができます。
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