これまでの人事評価制度では多くの場合半年~1年ほどの評価期間を設け、その期間中の従業員の仕事に対しフィードバックを行っていましたが、昨今ではビジネス環境の変化により柔軟に素早く対応するため、「リアルタイムフィードバック」という評価方法が注目を集めています。
そこで、昨今では高頻度でフィードバックを行う「リアルタイムフィードバック」が注目されています。
今回はリアルタイムフィードバックの概要、メリット、導入の際の注意点について解説します。
目次
リアルタイムフィードバックの概要
リアルタイムフィードバックとは、1~2週間に1度等の高い頻度で上司から部下に対しフィードバックを行う評価方法です。
1年や半年などの長期の評価期間の節目に行う面談などでフィードバックを行う企業が多いですが、目まぐるしく移り変わる市場に合わせ企業も対応する必要がある中で、目標・評価だけが半年~1年ごとでは、目標設定当時と評価時で企業の目指すところ・求めることが変化し、実態とそぐわなくなってしまう可能性があります。
また、長期間に一度しかフィードバック機会が設けられていないと、フィードバックされたときには記憶が曖昧になってしまっていることなどにより、フィードバックの効果が低かったり、被評価者の納得感が低かったりする場合があるという問題もあります。
このような背景から、即時にフィードバックを行うリアルタイムフィードバックという方法が注目されるようになりました。
リアルタイムフィードバックのメリット
リアルタイムフィードバックには次のようなメリットがあります。
従業員の目標を企業の状況の変化に合わせて見直しやすい
リアルタイムフィードバックでは、ビジネス環境の変化などに伴い企業の状況が変化した場合でも、従業員の目標や業務の方向性などをそれに合わせて素早く見直すことができます。
都度フィードバックを受け目標を素早く見直すことで、企業の求めることと従業員の目標とのギャップが生じたまま業務を遂行したり、目標とは異なる業務を遂行したりするような状況を避けることができます。
より効果的なフィードバックとなる可能性が高い
リアルタイムフィードバックでは従業員の行動が即座に評価・フィードバックされるため、従業員が自身の行動を見直し、改善しやすく、時間が経ってからフィードバックを受けるよりも効果が出やすいです。
フィードバックを受けるまでに期間が空いてしまうと、多くのフィードバックを一気に受けた結果、改善しなければならない点が一気に発生してしまい何からやっていいのか迷ってしまったり、そのうちいくつかは記憶が曖昧になってしまっていたりする可能性があります。
この点、都度フィードバックを受けることで、記憶が鮮明なうちに少しずつ改善を重ねることができるため、従業員の成長に繋がりやすいです。
上司・部下間のコミュニケーションが増加する
都度フィードバックを行うことで、上司と部下のコミュニケーションが増加し、業務や方向性の摺り合わせが常にできている状態になり、認識の相違やすれ違い等も起きづらくなります。
また、コミュニケーションが活性化することで信頼関係の構築にも繋がるため、チームワークの強化、ひいては企業の組織力の強化に繋がります。
評価に対する部下の納得感を得やすい
リアルタイムフィードバックを導入した場合、都度フィードバックを受けながら目標や方向性などを擦り合わせた上での評価となるため、認識の相違などが起こりづらく、評価に対する部下の納得感を得やすいというメリットがあります。
リアルタイムフィードバックの注意点
上記の通りメリットの多いリアルタイムフィードバックですが、導入の際には以下の点に注意する必要があります。
上司が積極的にフィードバックを行う
リアルタイムフィードバックでは、上司が部下の仕事を把握し、積極的にフィードバックを行う必要があります。
行動→フィードバック→改善のサイクルを短い期間で繰り返すことで高いフィードバック効果が期待できる評価方法ですが、上司がきちんと部下の行動をみることができていなかったり、十分なフィードバックができていなかったりすると、その効果は激減してしまいます。
部下から上司に対して都度フィードバックを求めることは難しい場合が殆どですので、上司から声をかけるようにしたり、定期的にフィードバックを行う時間をスケジュールに組み込んでおいたりするなど、十分なフィードバックが行われる体制を整えることが必要です。
上司がフィードバックスキルを身につける
リアルタイムフィードバックでどれだけ高いメリット・効果が得られるかは、上司のフィードバックスキルでも左右します。
フィードバックを行う機会が増えるため、長期間での評価やフィードバックよりも、上司のスキルが問われる場面も増え、また部下もフィードバックを受ける機会が増えるため、適切でないフィードバックを受けたりフィードバックを受けられなかったりした場合に不満が募る可能性も増加します。
リアルタイムフィードバックにより繰り返しフィードバックを行うことで上司のスキルも向上していくというメリットもありますが、場合によっては、上司のスキル習得・向上のための研修などの実施も検討する必要があります。
上司の負担が増え過ぎないよう調整する
先述の通り、リアルタイムフィードバックでは上司が積極的にフィードバックを行う必要があり、部下との対話の時間も増えるため、必然的に上司が評価に費やす時間は増加します。
昨今は上司自身がプレイングマネージャーであることが多いため、今まで通りの業務量や進め方でリアルタイムフィードバックを導入してしまうと、上司は自身の業務と部下へのフィードバックで高い負担を抱えてしまいかねません。
上司がフィードバックを行いながら自らの仕事も遂行できるよう、業務の量や進め方、スケジュールなどを調整する必要があります。
まとめ
今回はリアルタイムフィードバックの概要、メリット、導入の際の注意点について解説してきました。
リアルタイムフィードバックは部下の成長に繋がりやすい評価方法ですが、一方で上司のスキルに依存しやすかったり、上司の負担が大幅に増加したり、その結果フィードバックまで疎かになってしまったりする可能性もあります。
導入の際は、上司が適切にフィードバックを行えるよう、研修を行ったり業務量の調節を行ったりなど、上司にまかせっきりにするのではなく企業側も高い効果を出せるようサポートしましょう。
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