【解説】「ジョブ・クラフティング」の概要とメリット、注意点

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会議2 - 【解説】「ジョブ・クラフティング」の概要とメリット、注意点仕事をする上で、金銭などの報酬のみならず、やりがいを求める人材も少なくありません。

やりがいを求めているにもかかわらず、毎日つまらない・退屈な仕事を「やらされている」と考えている従業員はモチベーションを保つことが難しく、生産性の低下を引き起こしたり、ひいては離職に繋がったりする可能性もあるため、「やらされている感」をどう払拭するかは企業としての課題となります。

そんな中、「ジョブ・クラフティング」という考え方が注目されています。

今回はジョブ・クラフティングの概要と方法、メリット・デメリットについて解説します。

ジョブ・クラフティングの概要

ジョブ・クラフティングとは、従業員の「やらされている感」を減らし、「やりがい」を持ってもらえるようにするという考え方です。

従業員自身が仕事へのモチベーションを維持でき満足感や楽しさを感じながら仕事に取り組むことは従業員にとっても企業にとってもメリットとなるため、企業が人材育成のプログラムのひとつとして取り入れることもあります。

ジョブ・クラフティングの考え方は、2001年に米国にて提唱(※)されました。
(※)エイミー・レズネスキー、ジェーン・E・ダットン『Wrzesniewski & Dutton』

従業員一人一人が、仕事に対するモチベーションを維持し、やりがいを感じられるよう自ら積極的に取り組み、主体的に作り上げていくことが、ジョブ・クラフティングの目的です。

ジョブ・クラフティングの具体的な方法

ジョブ・クラフティングでは、主に次の3点について見直します。
・仕事の内容、やり方
・人間関係
・仕事の捉え方、考え方

仕事の内容、やり方

第一に、作業の内容ややり方、スケジュール等の見直しを行います。

目標を設定しスケジュールを管理したり、仕事の中身が充実するように進め方等を工夫したりするほか、目標達成に向けた業務の優先順位を検討し、必要に応じて自らの業務内容(範囲)を増減させることも必要です。

人間関係

第二に、業務に関わる人間との関わり方の見直しを行います。

上司、同僚、顧客、取引先など、社内・社外問わず関わる人間の範囲を広げたり、それぞれとのコミュニケーションの取り方を工夫したりする必要があります。

周囲の人間と良好な関係を築くことにより、方向性のすれ違い等のコミュニケーション不足によるミスを防ぐほか、サポートや適切なアドバイスをもらう機会を増やすことにも繋がります。

仕事の捉え方、考え方

第三に、仕事自体の捉え方や考え方の見直しを行います。

現在の業務を行う目的や背景等を考え直すことで、「社会のためになっている」「誰かの役に立っている」ことを実感したり、自分の関心のある物事に関わることができているという意識に繋がったりすることで、仕事に対してやりがいを見出しやすくなります。

ジョブ・クラフティングのメリット

ジョブ・クラフティングには従業員、企業それぞれに次のようなメリットがあります。

従業員側のメリット

ジョブ・クラフティングにより、従業員は「やらされている感」よりも「やりがい」を感じ、仕事に対するモチベーションを維持できるというメリットがあります。

また、自ら主体的に仕事のやり方や計画などを考えたり周囲と積極的にコミュニケーションをとりながら行動したりすることにより、納得して仕事に取り組むことができ、仕事に関するストレスを感じにくいという点もメリットとなります。

企業側のメリット

ジョブ・クラフティングにより従業員が主体的に仕事に取り組むことで、企業としての生産性が上がるというメリットがあります。

加えて、自主性のある人材やリーダーシップを発揮する人材の育成にも効果的です。

また、モチベーションを維持し前向きに仕事に取り組むことは、離職の防止にも繋がる他、従業員の満足度の向上にも繋がります。

つまり、ジョブ・クラフティングではエンゲージメントの高い優秀な人材が定着しやすい環境を作ることができます。

ジョブ・クラフティングの注意点

会議資料 - 【解説】「ジョブ・クラフティング」の概要とメリット、注意点前章で紹介した通り、従業員自身にも企業にもメリットの多いジョブ・クラフティングですが、導入の際には次のような点に注意する必要があります。

仕事の属人化

ジョブ・クラフティングでは従業員個人が各自業務改善に取り組む必要がありますが、1人1人に丸投げした結果、仕事が属人化してしまうというような状況は組織として望ましくありません。

情報をまとめ・共有してもらう場を設けたり、個人の自主性を妨げない範囲で上司が確認したりなど、「その人にしかわからない仕事がある」という状況を避ける工夫をする必要があります。

やりがい搾取

従業員にやりがいを感じてもらうことは重要ですが、一方で企業側が「やりがいこそが報酬である」として、業務に見合った報酬を出さなかったり、長時間労働を強いたりする状況にならないよう、留意する必要があります。

上司からの押しつけや否定

ジョブ・クラフティングでは従業員の主体性を尊重することを重視しています。従業員が各自で業務改善などを行うことでやりがいのある仕事としていくことを目的としていますが、上司が業務改善をするように押し付けたり、従業員の改善案や工夫等を否定し自らの考えを押し付けたりするようなことがないよう留意する必要があります。

部下の仕事の仕方について、効率面等であるようであれば、真っ向から否定するのではなく、従業員の自主性を尊重した上でコミュニケーションをとりながら考え方を教えていく等の工夫が必要です。

まとめ

今回はジョブ・クラフティングについて解説しました。

ジョブ・クラフティングは自主性のある従業員が多かったり、従業員一人一人にある程度の裁量が与えられていたりする企業にとっては比較的導入しやすくメリットも感じやすい考え方と言えます。

一方で、受動的に仕事をこなす従業員が多かったり、従業員一人一人が考えて行動するというよりはある程度確定したマニュアルに沿ってこなしていく作業が多かったりする企業にとっては、従業員が個人で改善できる範囲に限界があったり、従業員が主体的に動くのにサポートが必要だったりするなど、導入が容易ではない可能性もあります。

導入にあたり企業によるフォローや上司のスキルが必要となる可能性もありますが、従業員にやりがいを感じてもらうにはジョブ・クラフティングは効果的であるため、メリットと注意点を充分に検討し、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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働き方改革サポ編集部
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