SDGsウォッシュ対策|2026年改定の環境表示ガイドラインで中小企業が点検すべき表現と手順

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SDGsウォッシュとは、実態が伴わないのに、SDGsや環境・社会への取り組みを実際以上によく見せてしまう発信のことです。2026年3月に環境省の「環境表示ガイドライン」が2013年3月以来の改定となり、中小企業でも自社サイトや求人、営業資料の表現を見直す機会になっています。本記事では、ガイドラインの基本事項と景品表示法・職業安定法の考え方を一次資料で確認し、避けるべき表現と点検の手順を解説します。

SDGsウォッシュとは何か

SDGsウォッシュとは、実態が伴わないのに、SDGsや環境・社会への取り組みを実際以上によく見せる表現や発信のことです。一般に使われている言葉であり、法令上の定義がある用語ではありません。本記事では、この意味で使います。

悪意がなくても起こりうる点が厄介です。たとえば、一部の製品だけで行っている取り組みを会社全体の姿勢のように書いてしまう、根拠を確認しないまま「環境にやさしい」と書いてしまう、といった場面です。自社のSDGsの取り組みをWebや求人、営業資料で発信しようとしている中小企業の経営者・広報・人事担当者にとって、発信の前に表現を点検する仕組みを持つことが大切になっています。

中小企業でもSDGsウォッシュが問題になるのはなぜか

発信の場が増え、取引先や求職者から取り組みの根拠を問われやすくなっているためです。環境省の環境表示ガイドラインでも、中小企業が取引先から環境に関する情報の提供を求められることがある点に触れられています。大企業だけの問題ではなく、取引や採用に関わる以上、中小企業も表現に責任を持つ場面が出てきます。

SDGsの全体像や、サステナビリティ経営との違いを整理したい場合は、SDGsとサステナビリティ経営の違いもあわせてご覧ください。

2026年改定の環境表示ガイドラインとは何か

環境表示ガイドラインとは、事業者や事業者団体が自ら行う環境に関する表示(自己宣言による環境主張)について、基本的な考え方と留意点を環境省がまとめた指針のことです。令和8年3月版は2026年3月31日に公表され、前回の版は2013年3月でした。国際規格のISO 14021、およびそれに対応するJIS Q 14021の考え方に沿った内容です。

対象は、商品に付ける表示だけではありません。景品表示法の対象となる表示に加えて、事業活動を紹介する表現、イメージ広告、企業としての姿勢の発信にも触れています。たとえば「海洋環境の保全に取り組んでいます」という企業姿勢の表現であれば、回収量や寄付の割合といった具体的な説明文を添える例が示されています。ブランド名だけを単独で使わず、補足の説明を付けることも求められています。

ガイドラインの基本5項目は何か

ガイドラインが示す基本は、次の5項目です。自社サイトや営業資料の点検でも、そのまま確認の軸として使えます。

  1. あいまいな表現や環境主張は行わない
  2. 環境主張には説明文を付ける
  3. ライフサイクル全体を考慮する
  4. 検証データや評価方法を提供でき、その情報にアクセスできる状態にする
  5. 比較する主張は、LCA(ライフサイクルアセスメント)による評価や数値などにより適切に行う

単独で使わないほうがよい表現は何か

「環境にやさしい」「地球にやさしい」「持続可能」などの表現は、説明文を付けずに単独で使わないことが基本です。ガイドラインは、「環境に安全」「環境にやさしい」「地球にやさしい」「無公害」「グリーン」「自然にやさしい」「オゾンにやさしい」「持続可能」「〇〇を含まない」といった表現を例に挙げ、これらと同等の表現も避けるよう求めています。何が、どの程度、何と比べて良いのかが読み手に伝わらないためです。

避けたい書き方 問題になりやすい点 書き方の方向性(ガイドラインの例を含む)
「環境にやさしい製品です」 何がどの程度良いのか分からない 「製品本体に再生プラスチック70%使用」のように、対象と数値を示す
「地球にやさしい経営をしています」 範囲も根拠も示されていない 具体的な取り組みと実績を説明文として添える
「省エネで環境に配慮」 比較対象がない 「年間消費電力量を約5%削減(当社従来品▲▲と比較)」のように、比較対象を明示する
「持続可能な素材を使用」 単独で使うと意味があいまい 素材の種類、使用割合、確認の方法を併記する

SDGsウォッシュは法的にも問題になるのか

商品やサービスの取引に関する表示が、実際よりも著しく優良であると示すものであれば、景品表示法上の優良誤認表示にあたるおそれがあります。消費者庁によると、優良誤認表示は景品表示法第5条第1号で禁止されています。環境表示ガイドラインにも、国内で2022年に景品表示法に基づく措置命令が行われたことが記載されています。

特に注意したいのは、根拠の示し方です。消費者庁が表示の裏付けとなる合理的な根拠の資料の提出を求め、期間内に提出されない場合は、措置命令の場面では不当な表示とみなされ(第7条第2項)、課徴金納付命令の場面では不当な表示と推定されます(第8条第3項)。「根拠は社内にある」では足りず、提出できる形で資料を整えておく必要があります。環境表示ガイドラインも、企業秘密を理由にしか検証できない主張は行ってはならないとしています。なお、景品表示法が適用されるかどうかは表示の内容や相手によって異なるため、個別の判断は専門家や消費者庁にご確認ください。

求人でSDGsや環境の取り組みを書くときは何に注意するか

求人票や募集広告では、取り組みの表現を実態に合わせ、虚偽や誤解を生じさせない書き方にすることが大切です。職業安定法第5条の4は、広告等により求人や労働者の募集に関する情報を提供するときは、その情報について虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないと定めています(厚生労働省の周知ページで確認できます)。

環境表示ガイドラインは環境に関する主張を対象としており、私が確認した範囲では求人票を直接の対象として挙げてはいません。ただし、「SDGsに積極的に取り組む会社」と書いたときに応募者が何を期待するかを考え、根拠となる取り組みを具体的に書くという考え方は、求人にも活用できると考えられます。求職者への伝え方は、SDGsを採用に活かす方法でも整理しています。

取引先向けの営業資料では何に気をつけるか

取引先から根拠を問われても、すぐに説明できる状態で書くことです。ガイドラインは、検証データや評価方法を提供でき、その情報にアクセスできる状態にすることを基本事項に挙げています。根拠の例としては、試験成績書やサプライヤーからの証明書が示されています。

ガイドラインは営業資料を名指ししているわけではありませんが、自己宣言による環境主張の考え方として、営業資料の点検にも参考にできます。他社製品や従来品と比べる表現を使う場合は、比較対象を明示し、LCAによる評価や数値などで裏付けることが求められます。

自社サイト・求人・営業資料はどう点検すればよいか

発信物を洗い出し、表現ごとに根拠を確認し、必要な説明文を足すという順で進めます。次の5ステップで、社内の担当者が1人でも進められます。

  1. ステップ1:発信物を洗い出す。自社サイト、採用ページ、求人票、会社案内、営業資料、SNSなど、SDGsや環境に触れている媒体を一覧にします。
  2. ステップ2:表現を抜き出す。「環境にやさしい」「持続可能」など、単独で使われている表現や、数値も比較対象もない表現を探します。
  3. ステップ3:根拠資料を確認する。試験成績書、サプライヤー証明、社内の測定記録など、提出できる資料があるかを確かめます。資料がなければ、その表現は使わないか、言える範囲に書き換えます。
  4. ステップ4:説明文を足し、書き換える。対象範囲、数値、比較対象を明記し、後述のチェック項目で確認します。
  5. ステップ5:公開前の確認ルールを決める。公開前に確認する担当者を決め、取り組みの内容が変わったときは表現も更新します。

書き換え後に確認するチェック項目は何か

ガイドラインが環境主張に求める要件を、実務で使いやすい形にまとめると次のとおりです。

  • 検証できる事実に基づいているか
  • 製品全体の話か、部品や包装だけの話かが分かるか
  • 不利な事実を省略していないか
  • 誇張した表現になっていないか
  • 第三者による認証があるかのように見せていないか
  • 説明文が、主張のすぐ近くに書かれているか
  • 比較する場合、比較対象が明示されているか

一部の取り組みを会社全体の話に広げてよいか

広げないでください。ガイドラインは、ごく一部の取り組みから事業全体に効果があるかのような主張をしないこと、環境面でのトレードオフ(ある面の改善が別の面の負荷になること)があれば示すこと、カーボンオフセットを削減しないことの理由にしないことを示しています。取り組みの範囲を正確に書くことが、結果として自社の信頼を守ります。

SDGsの宣言や登録制度の活用など、取り組みの土台づくりについては中小企業のSDGs宣言の作り方で解説しています。

ネクストプレナーズの見解

中小企業では、SDGsの取り組みを大きく見せることよりも、小さくても検証できる事実を具体的に書くことを優先すべきだと考えます。よくある誤解は、悪意がなければ問題にならないというものですが、根拠を示せない表現は、意図に関わらず取引先や求職者の信頼を損なうおそれがあります。広報、人事、営業がそれぞれ別の資料を作ると表現がばらつきやすいため、社内で表現を確認する窓口を1つ決めておくことをおすすめします。

監修者

監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)

東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長。

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本記事は公的機関の公表資料等を基にした一般的な情報です。個別の制度設計・手続きは専門家にご確認ください。

よくある質問

Q. SDGsウォッシュとは何ですか?

SDGsウォッシュとは、実態が伴わないのに、SDGsや環境・社会への取り組みを実際以上によく見せる表現や発信のことです。法令上の定義がある用語ではなく、一般に使われている言葉です。

Q. SDGsウォッシュにならない表現とは?

対象、数値、比較対象を示した具体的な表現です。「環境にやさしい」「持続可能」といった表現を単独で使わず、「製品本体に再生プラスチック70%使用」のように説明文を添えることが、環境省の環境表示ガイドラインで示されています。

Q. 環境表示ガイドラインに沿っていないと景品表示法違反になりますか?

ガイドラインに沿っていないことだけで直ちに違反になるとは限らず、個別の表示内容で判断されます。ただし、実際よりも著しく優良と示す表示は優良誤認表示にあたるおそれがあり、合理的な根拠を示せない場合は不当な表示とみなされることがあります。個別の判断は専門家や消費者庁にご確認ください。

Q. 求人票に「SDGsに取り組む会社」と書いてもよいですか?

事実に基づく具体的な表現であれば書けます。職業安定法第5条の4は、求人や募集に関する情報について虚偽の表示や誤解を生じさせる表示を禁じているため、実際の取り組みの内容や範囲を具体的に書くことをおすすめします。

Q. 取り組みが一部の製品だけの場合はどう書けばよいですか?

一部であることが分かるように、対象の製品や範囲を明記して書きます。環境表示ガイドラインは、ごく一部の取り組みから事業全体に効果があるかのような主張をしないことを示しています。

Q. 表現の根拠として、どのような資料を用意すればよいですか?

試験成績書やサプライヤーからの証明書などです。ガイドラインは、検証データや評価方法を提供でき、情報にアクセスできる状態にすることを求めており、企業秘密を理由にしか検証できない主張は行ってはならないとしています。

出典・参考資料

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