MBO(目標管理)とOKRの違いとは?中小企業で目標設定を機能させる方法

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MBO(目標管理)とOKRは、どちらも目標を立てて成果を測る手法ですが、人事評価との距離や達成度の考え方に違いがあります。本記事では、労働政策研究・研修機構や厚生労働省の資料、Googleの公開ガイドをもとに両者の違いを比較表で整理し、中小企業が目標設定を機能させるための手順と運用上の注意点を解説します。

MBO(目標管理)とは何か

MBO(Management by Objectives)とは、目標管理と呼ばれる経営管理の手法で、目標によって業務を管理することを役目とするものです。労働政策研究・研修機構(JILPT)の「日本労働研究雑誌」2015年4月号(No.657)に掲載された髙橋潔氏(神戸大学教授)の解説によると、歴史をさかのぼればピーター・ドラッカーが『現代の経営』(1954年)で述べた「目標と自己統制による管理」に行き着きます。

同解説は、その中身を「はっきりした客観的な目標を立て、その達成に向けて計画を立て、担当者本人が自主的に実行し、その結果を評価するサイクルを回すこと」と説明しています。監督者の指示命令による統制が当たり前だった時代に、目標だけは組織の方針に合うように相談し、あとは本人の裁量と自発性に委ねるという発想が画期的だった、とも述べられています。

MBOの標準的な流れ

同解説は、典型的な目標管理制度(MBO)の流れを次の6段階で示しています。期首面談や期末面談は、この流れの一部にあたります。

  1. 期首面談(目標設定面接):観察したり測定できる具体的な(数値)目標を、上司と担当者が相談して決める
  2. 業務遂行:担当者本人が、合意した目標を達成するために必要な行動計画を立て、自発的に実施する
  3. 進捗確認・フィードバック:期中に、上司が業務の進捗度をふまえてフィードバックと示唆・助言を与える
  4. 目標達成度評価:期末に、上司が目標の達成度(達成率)の点から成果や職務遂行の程度を評価する
  5. 結果の開示:最終的にまとめた評価結果を、本人に通知する、または面談で開示する
  6. 期末面談(指導助言面接):上司と本人が対面し、次期の取り組みに向けた指導と助言を行う

MBOの利点と、評価だけが独り歩きする落とし穴

同解説は、MBO最大の利点を「目標を(相談のうえで)自ら設定することによって、担当者が仕事の仕方を自分でコントロールし、その自己統制がモチベーションをもたらすこと」だとしています。つまり、会社が一方的に目標を押しつけるのではなく、本人が納得して決めるところに意味があります。

一方で、同解説は、成果主義の浸透に伴ってこの制度が普及したこと、そして多くの組織で導入されるようになると「評価の部分だけが独り歩きをしてしまい、マネジメントの施策というよりは、人事評価の役割だけが取りざたされるようになった」ことも指摘しています。期末の評価シートを埋めるだけの制度になっているなら、この落とし穴にはまっている可能性があります。評価の形骸化については、評価制度が形骸化する3つの原因と対策でも整理しています。

OKRとは何か

OKRとは、Objectives(目標)とKey Results(成果指標)の組み合わせで目標を設定する手法のことです。Googleが公開している「Google re:Work」のOKRガイドは、OKRをGoogleが採用する目標設定の方法として紹介しています。なお、OKRの導入メリットやツールについては、当ブログの【解説】最新の目標管理手法「OKR」でも解説しています。

このガイドには、設定の目安として次のような記述があります。

  • 目標は3〜5個に絞る
  • 1つの目標につき、成果指標を3個ほど設定する
  • 成果指標は、数値化して測定し、簡単に評価できるようにする(Googleでは0〜1.0の範囲で設定している)
  • OKRでは、目標の60〜70%の達成率が理想的である
  • OKRは、従業員を評価するためのツールではない

最後の2点が、MBOとの違いを考えるうえで重要です。達成率100%を前提としない設計であり、評価のためのツールとして位置づけられていないことが、ガイドに明記されています。

MBOとOKRの違いは何か

結論から言えば、両者の最も大きな違いは、目標と人事評価の距離です。MBOは目標の達成度を評価に用いる流れを標準とする一方、Googleのガイドは、OKRを従業員を評価するためのツールではないと位置づけています。どちらも「目標を立てて測る」点は共通していますが、使いどころが異なります。

比較項目 MBO(目標管理) OKR
目標の組み立て 上司と担当者が相談し、観察・測定できる具体的な(数値)目標を決める Objectives(目標)と、その達成度を測るKey Results(成果指標)をセットで設定する
目標の数の目安 公的資料に目安の記載なし(会社が決める) 目標は3〜5個、1目標につき成果指標は3個ほど
達成度の考え方 期末に目標の達成度(達成率)の点から評価する 目標の60〜70%の達成率が理想的
人事評価との関係 標準的な流れに期末の達成度評価が含まれる(成果主義の浸透とともに普及) 従業員を評価するためのツールではない
主な狙い 本人が目標を自ら設定することによる自己統制とモチベーション 成果指標を数値化して測定し、目標への進み具合を確認する

この表のとおり、MBOは「評価・処遇の仕組みに組み込みやすい」手法であり、OKRは「挑戦的な目標を追う」ための手法と整理できます。OKRで目標達成率が60〜70%でよいとされている以上、達成率をそのまま賞与や昇給に結びつけると、本人が高い目標を掲げにくくなる、と考えられます。これは資料の記述からの推論であり、実際の運用では会社ごとの設計が必要です。

中小企業ではMBOとOKRのどちらを選ぶべきか

評価・処遇と目標をつなげたい中小企業は、まずMBOの枠組みで目標設定を整えるのが現実的です。理由は、MBOの標準的な流れには期末の目標達成度評価が含まれており、評価・処遇との接続を前提にしやすいこと、一方でOKRは評価のためのツールではないと位置づけられていることです。

判断の目安を、次のように整理します。

  • 評価や賞与・昇給の根拠として目標を使いたい場合:MBOの枠組みを基本にする
  • 目標が形だけになっており、会社の方針と個人の仕事がつながっていない場合:まず目標の展開(ブレイクダウン)と共有を整える
  • 新規事業や改善活動など、挑戦的な目標を追いたい部門がある場合:その部門に限ってOKR的な考え方(高めの目標と成果指標)を試す
  • 管理職が評価面談に慣れていない場合:OKRに切り替える前に、期首・期中・期末の面談の型を整える

評価と処遇のつなぎ方については、人事評価を昇給・賞与に反映する方法が参考になります。人事評価制度をこれから整える場合は、中小企業の人事評価制度、一から作るなら最初にやるべき3つのこともあわせてご覧ください。

中小企業で目標設定を機能させる手順

MBOでもOKRでも、うまくいかない原因の多くは、手法そのものではなく、目標の立て方と運用にあります。厚生労働省の「生産性&効率アップ必勝マニュアル ~マネジメント手法~ L 目標の重要性」(令和4年3月、生活衛生関係営業の生産性向上を図るためのマニュアル(基礎編))は、目標設定の考え方を図解しています。同マニュアルは生活衛生関係営業向けですが、目標の立て方は業種を問わず参考になります。

目標の書き方:「目指す状態」を数値や具体的な状態で表す

同マニュアルは、「目標」とは「目指す状態」を表現したものであり、「目指す状態や成果」がわかるように表現するとしています。適切な例として「○○の拡大、○○の削減、○○の徹底」、見直したい例として「○○の実施、○○の推進、○○の管理」を挙げています。また、目標値は数値や具体的な状態で表現するとし、適切な例に「○○の10%向上」「○○を対応可能にする」、見直したい例に「○○を目指す」「○○を改善する」を挙げています。

さらに、すべてを数値で表せるわけではないが、数値で表すとわかりやすくなるので、まずは数値目標を考え、数値で表せないときは定性的な達成状況を表す目標でもよい、とされています。

目標設定の6ステップ

以上の資料をふまえ、中小企業が目標設定を機能させるための手順を、次の6ステップに整理します。ステップ1〜3・5は同マニュアルの考え方、ステップ4・6はMBOの標準的な流れに沿った内容です。

  1. ステップ1:会社全体の目標と、その理由を決めて社内に共有する。同マニュアルは、「なぜ、この目標を掲げるか」を共有することが特に重要だとしています
  2. ステップ2:大きな目標を、部門・個人の目標へ展開する。同マニュアルでは、総合目標(例:売上20%向上)を部分目標(例:客数20%増、客単価5%増)、個別目標(例:買上点数5%増)へブレイクダウンし、施策とひもづけます
  3. ステップ3:目標の言葉と指標を定義する。同マニュアルは、「リピート顧客を10%増やす」と決めるなら、リピート顧客の定義、何と比べて10%か、期間はいつかを決めておかないと成果を確認できないとしています
  4. ステップ4:期首面談で上司と本人が合意する。MBOの標準的な流れにある目標設定面接にあたります
  5. ステップ5:施策ごとに実施内容・担当者・実施期間を決め、長期の取り組みには中間目標を置く。同マニュアルは、取り組みの管理を施策→個別目標→部分目標の順に行い、期間中でも達成が見通せないときは計画や施策を見直すとしています
  6. ステップ6:期末に達成度を振り返り、次の目標につなげる。結果の開示と期末面談で、次期の指導助言まで行います

説明用の例:営業部の場合

あくまで説明用の例ですが、たとえば営業部の目標を「新規顧客からの受注額の向上」とする場合を考えます。「向上を目指す」のままでは見直したい表現にあたるため、「新規顧客からの受注額を前年度比で10%向上」のように、比べる対象と期間まで決めます。そのうえで、「新規顧客」の定義(例:過去2年間に取引のない顧客)を文書で決めておけば、期末に何をもって達成とするかで揉めにくくなります。

この目標を部分目標に分けるなら、「商談件数の増加」と「受注率の向上」などが考えられます。個人の目標は、その部分目標のうち本人が担当する部分から決めると、会社の方針と個人の仕事がつながります。

運用で注意したいこと

  • 目標のレベル感:同マニュアルは、やればなんとか達成できそうな、ちょっと背伸びをしたくらいの目標を掲げるとしています。達成が不可能な目標を掲げても、本人の意欲にはつながりません
  • 面談の質:MBOの利点は本人の自己統制にあるため、上司が目標を一方的に決める運用は避け、相談のうえで決めます
  • 評価だけにしない:期末の評価に偏らず、期中のフィードバックと助言をセットで行います
  • 共有:目標、取り組み内容、進捗状況、成果、課題を、わかりやすく表現してメンバーと共有します

ネクストプレナーズの見解

中小企業が最初に取り組むべきなのは、MBOかOKRかの選択ではなく、目標の言葉と指標を定義し、会社の方針から個人の目標までつなげることだと考えます。評価・処遇に目標を使うのであれば、まずMBOの枠組みで運用を整え、挑戦的な目標を追いたい部門にだけOKR的な考え方を試す、という段階的な導入をおすすめします。よくある誤解は、OKRを導入すれば評価制度の課題が解決するというものです。Googleのガイド自身が、OKRは従業員を評価するためのツールではないとしている点には注意が必要です。

まとめ

MBOは、上司と本人が相談して目標を決め、達成度を評価・面談につなげる手法です。OKRは、目標と成果指標をセットで設定し、60〜70%の達成率を理想とする、評価のためのツールではない手法です。評価・処遇とつなげたい中小企業は、MBOの枠組みで目標の定義・展開・共有・面談の型を整えることから始めるのが現実的です。

本記事は公的機関の公表資料等を基にした一般的な情報です。個別の制度設計・手続きは専門家にご確認ください。

監修

監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)

東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長。

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よくある質問

Q. MBOとOKRの違いは何ですか?

最も大きな違いは、人事評価との距離です。MBOは期末に目標の達成度を評価する流れを標準とし、成果主義とともに普及した制度です。一方、Googleのガイドは、OKRを従業員を評価するためのツールではないと位置づけ、目標の60〜70%の達成率を理想としています。

Q. 中小企業はMBOとOKRのどちらを導入すべきですか?

評価や賞与・昇給と目標をつなげたい場合は、まずMBOの枠組みで目標設定と面談の型を整えるのが現実的です。挑戦的な目標を追いたい部門がある場合に限り、OKR的な考え方を試す方法があります。いずれも自社の評価制度との整合を確認してください。

Q. MBOの標準的な流れはどのようなものですか?

期首面談で目標を設定し、業務遂行、期中の進捗確認とフィードバック、期末の目標達成度評価、結果の開示、期末面談での指導助言という6段階が標準的な流れとされています(日本労働研究雑誌2015年4月号)。

Q. OKRの目標は何個くらい設定すればよいですか?

Googleのガイドでは、目標は3〜5個に絞り、1つの目標につき成果指標を3個ほど設定するとされています。この数字はGoogleの運用の目安であり、自社の規模に合わせて調整が必要です。

Q. 目標を数値で表せない仕事はどうすればよいですか?

数値で表せない場合は、定性的な達成状況を表す目標でも構わないとされています(厚生労働省のマニュアル)。ただし、何をもって達成とするかを事前に具体的な状態で決めておくことが大切です。

出典・参考資料

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人事ブログ編集部
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