
企業の業績向上や計画的な売上の積み重ねのためには、効果的な目標管理が不可欠です。
しかし、設定の基準があいまいである、部署ごとに目標の設定がバラバラであるなどの理由で、目標管理が功を奏していない企業も多いのではないでしょうか。
今回はGoogleやFacebook、メルカリなどの先進企業で広く活用されている目標管理手法である「OKR」について、その概要、導入のメリット、活用方法まで詳細に紹介します。
自社の目標管理方法を改善したいと思っている方は、是非最新の目標管理手法を参考にして、自社にフィットする目標管理の方法を構築してみてください。
目次
OKRの概要
「OKR」とは、経営管理のための目標設定および管理の方法で「Objective and Key Results」(目標とそれに対応する重要な結果)の頭文字をとったものです。
O(目標)とKR(目標を実現するための主要な成果)をセットで設定し、全社のOKRとチームOKR、個人OKRを、一貫性をもってリンクさせることで、チーム、社員の目標達成のための戦略を全社目標と同じ方向性をもって設定することが可能となります。
当初は米インテル社が開発し成果を上げましたが、それに倣ってGoogleをはじめとする有名企業がこぞって採用するようになりました。
現在では、OKRを適切に管理するシステムツールも多数開発されています。
OKRの特徴
OKRの手法の中で特徴的であるのは以下の点です。
1. 組織の戦略実行のために設定され、必ずしも人事評価の基準にされるものではない。
2. 短いサイクル(主に四半期)で設定され、進捗の確認、フィードバックが頻繁に行われる。
3. 目標は全社で共有される。
4. 目標は許容される達成水準が70%程度になるように設定され、成果の測定は主にSMARTで行われる。
※SMART:Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Attainable(実現性がある)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期限がある)
MBO・KPIとの違い
目標管理手法としてよく用いられるのはMBO及び近年ビジネスマンの間でも頻繁にミーティングの中で用いられるKPIでしょう。
MBO(Management by Objective)は経営の神様と称されるピーター・ドラッカーにより提唱された目標管理手法です。
当初は「自己統制による目標管理」手法とされていましたが、さまざまな企業に採用されるうちに少しずつ変化していき、年1度の人事評価や報酬の決定の手段として採用されることが多くなりました。
OKRとの違いでいうと、MBOにおける目標はチームのメンバー間のみで共有され、チームがその目標を達成するか否かが最も重要な人事評価の基準になりますが、OKRは人事評価の基準とすることが主な目的ではなく、全社的な目標との一貫性を重要視する点で異なります。
KPI(Key Performance Indicator)は目標に至るマイルストーンになるもので、プロジェクトの進捗度合いを測る指標です。
OKRでは、全社目標とそれを達成するための重要な結果がセットで設定されるため、KPIは「KR」を達成するために設定される指標と位置付けられるでしょう。
OKRのメリット
OKRによる目標管理手法は、全社的に導入されて初めて意味を持つものです。
それは、OKRが以下のようなメリットを期待して導入されるものであるためです。
全社目標とチーム・個人目標の方向性が統一される
OKR導入の目的は、個人の目標達成がチームの目標達成に貢献し、各チームの目標達成が会社全体の目標の達成となる、という形になるように目標設定に一つの方向性をもたせることにあります。
従来型の目標管理手法は、各チームが独自の目標設定を行うために、全社目標に結び付いていない、または個人の目標達成がチームリーダーの手腕にかかっているケースがみられるなど、目標の設定方法が適切でない場合があるという欠点がありました。
反面、OKRは個人の目標が全社の目標につながっていることが理解できるために、全社一丸となって目標達成に取り組む姿勢が明確になります。
社内のコミュニケーションが高まる
OKRは、多くの場合四半期ごと、短いサイクルの場合には1か月ごとに設定され、その都度進捗管理、フィードバックが行われます。
また、設定された目標は他部署との連携が不可欠なものもあります。
そのため、OKRの導入は社内のコミュニケーションが活発に行われる契機になります。
優先するタスクが明確になる
OKRでは、全社目標、チーム目標、個人目標がSMARTの形で明確に設定されるために、仕事の優先順位が明確になり、個人の取り組みが全社目標の達成により貢献しやすくなります。
以前の目標管理手法では、チームや個人ごとの目標の整合性にあまり気を払っていなかったために不要なコンフリクトを招いたり、コミュニケーション不足による仕事の停滞を招いたりしていましたが、OKRによる手法では、目標に対する「重要な結果」が全社的に共有されるために、全社目標における各チーム各個人の役割が明確になる結果、タスクの優先順位がつけやすくなります。
具体的なOKRの設定手順

OKRは、全社目標、目標達成のための事業戦略をまずは経営陣で設定し、その方向性に沿った形で全社的な目的(O)と目的達成のための重要な結果(KR)を決定します。
そして、その全社OKRの方向性に適合した形で各チームOKR、個人OKRを設定します。
具体的は手順の一例は以下の通りです。
1、全社目標・事業戦略を設定する(年間目標、四半期目標、各目標に対する事業戦略)。
2、全社目標を基に全社OKRを設定する。
3、全社OKRを各チーム(部署)に落とし込み、役割を明確にしてチームOKRを設定する。
4、各チーム内でチームOKRと整合性のとれた形で個人OKRを設定する。
5、全社OKR、チームOKR、個人OKRに一貫性があるかをチェックする。
各段階のOKRに整合性があるかがポイントになってきますので、OKRの設定については、各部署間で議論しながら設定したり、設定後にリーダーが集まってチェックし合ったりする機会を設けるなどの施策が効果的となります。
トップダウンか、メンバーでの議論を大切にするか
OKRの設定方法は詳細についてルールがあるわけではなく、採用企業によって様々です。
チームや個人が自ら設定することやコミュニケーションの機会を増やすことに意義があるとし、チームOKR、個人OKRを社員間の議論によって決定する会社もあれば、トップダウンの決定を中心にOKRを設定し、全社目標の方向性との統一を重視する会社もあります。
この辺りはトップマネジメントの決定になりますが、自社の特徴に合わせたOKRの採用方法が求められます。
OKRを効果的にするツール
OKRは特別なツールがなければ採用できないというわけではありませんが、OKRを視覚化し、全社的な一体感を持ちながら全社員に目標達成に向けた取り組みにフォーカスさせるためには、統一されたフォーマット・システムを用いることも一策です。
OKR導入支援システムは様々な会社から提供されており、OKR全体をツリー形式によってビジュアル化し、全社員が共有するとともに、進捗管理や達成状況チェック、コミュニケーションがとりやすいツールが用意されています。
ここではOKR導入支援のうち、日本語のサポートがある代表的なシステムを紹介します。
Resily(リシリー)
Resily株式会社が提供する「Resily」はコミュニケーション機能に特徴のあるOKR支援システムで、NTTコミュニケーションズ、SanSanなど多くの大企業の採用実績があります。
戦略策定に欠かせないツリー形式のOKRマップは非常にわかりやすいデザインになっています。
また各社員が目標達成の自信度を色分けして示すことができるユニークなツールを用意し、ボトルネックになっている事象を抽出しやすくするなどの工夫が盛り込まれています。
※URL:https://resily.com/
Wistant(ウィスタント)
RELATIONS株式会社が提供するWistantは「ピープルマネジメント」に焦点をあて、マネージャーのマネジメント能力を高め、魅力的な組織を目指すことを目的としたシステムです。
1on1の対話ツール、目標設定管理、フィードバック、評価から構成され、マネジメントを可視化します。
すでに300社以上の体験若しくは導入の実績があります。
※URL:https://www.wistant.com/
カオナビ
株式会社カオナビが提供する「カオナビ」は、人事管理ツールにOKR機能を付加しています。
トヨタ、みずほフィナンシャルグループ、パナソニックなど、多くの大企業に採用されています。
OKRテンプレートが充実していること、直感的にドラッグアンドドロップで操作できるインターフェースを備えていること、人事管理と連携していることが大きな強みです。
※URL:https://www.kaonavi.jp/
何のためにOKRを行うのかを明確にする
OKRは新しい目標管理手法として多くの企業に採用され、業績に影響しています。
しかし拙速にOKRを導入するのは危険です。短いスパンで目標設定・フィードバックが行われるために、各チーム、各個人に柔軟な行動の転換が要求されます。コミュニケーションを密に行わなければ機能不全に陥ります。
OKRの導入目的をトップから社員に丁寧に説明したうえで、目標設定・フィードバックの度に少しずつ改良を重ねながら組織になじませていけばスムーズにOKRを導入することができるでしょう。
全社目標達成の原動力となりうる強力な目標管理手法ですので、一度導入を検討してみてはいかがでしょうか。
また、目標管理とセットとなる人事評価について、以下の記事で解説していますので、こちらも併せてご確認ください。



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