
SDGsに取り組みたくても、費用や相談先に迷う中小企業は少なくありません。無料で使える公的な窓口には、よろず支援拠点、中小機構、商工会議所、自治体の登録制度と支援機関があります。この記事では、各窓口で何を相談できるかを公表資料で整理します。そのうえで、無料の窓口で足りる場面と、コンサルティング会社に頼む場面の見極め方を解説します。
SDGsの相談窓口とは?中小企業が最初に知っておくこと
SDGsの相談窓口とは、SDGsへの取り組み方を専門家や担当者に相談できる受付先のことです。国の機関、商工会議所、自治体、民間のコンサルティング会社などが、それぞれ窓口を設けています。
多くの中小企業は、最初から有料のコンサルティングを検討する必要はありません。中小機構は、SDGsを含む経営相談を無料で受け付けています。窓口ごとに得意な相談が違う点には、注意が必要です。この記事では、公表資料で確認できた範囲で、窓口の使い分けを整理します。
費用や運用は、地域や年度で変わることがあります。相談の前に、各窓口の公式ページで最新の内容を確認してください。
SDGsはどこに相談できる?無料で使える主な窓口
無料で使える主な窓口は、よろず支援拠点、中小機構、商工会議所、自治体の4つです。SDGsを名指しした窓口は、中小機構と、登録企業向けの支援を持つ一部の自治体にあります。ほかは経営全般の窓口なので、SDGsの相談に対応できるかを事前に確認してください。
よろず支援拠点:経営全般を何度でも無料で相談できる
よろず支援拠点とは、国が全国に設置した無料の経営相談所のことです。よろず支援拠点全国本部のページによると、売上拡大から商品開発、後継者の悩みまで、経営上の幅広い相談に応じています。課題の大小を問わず、何度でも無料で相談できる、というのが公式の案内です。
予約は、電話やメールなどで受け付けています。ヒアリングの後は、課題に合わせて専門家のチームが組まれる流れです。内容によっては、適切な支援機関の紹介も受けられます。詳細は、よろず支援拠点全国本部のページで確認してください。
確認できた資料にSDGsの記載はありません。SDGsも経営課題の一つとして相談できると考えられますが、対応できる専門家は拠点ごとに違います。予約のときに、SDGsや取引先対応の相談であることを伝えてください。
中小機構:SDGsに関する相談窓口と無料の経営相談
中小機構とは、独立行政法人中小企業基盤整備機構のことです。中小企業の経営を支援する国の機関で、SDGsを名指しした相談窓口を設けています。
SDGsに関する相談のページによると、窓口では対面、電話、オンラインで経営相談ができます。受付時間は平日の午前9時から午後5時です。一部の本部は時間が異なります。窓口のある本部と電話番号は、公式ページの一覧で確認してください。
経営全般の相談は、経営に関する相談のページにあります。対象は中小企業と創業を予定している方です。各分野の専門家が、無料で何度でも相談に応じます。相談分野の例には、マーケティングや生産管理と並んで、SDGsも挙がっています。
相談の方法は、次の3つです。
- 経営アドバイス:全国9カ所の地域本部で、対面かオンラインで専門家に相談する方法です。
- メール経営相談:専用フォームに送ると、原則3営業日以内にメールで回答が届きます。一般的なケースを想定した回答です。
- 経営相談ホットライン:電話で相談できます。通話料は利用者の負担です。
情報収集には、中小機構が作成した中小企業のためのSDGs活用ガイドブックも使えます。J-Net21のQ&Aは、取り組み方が分からないときの情報源として、このガイドブックを挙げています。
商工会議所:地域の経営相談の窓口として使う
日本商工会議所の経営相談のページによると、経営相談に対応する商工会議所は全国516カ所です。対象は、その地域で事業をしている方と、創業を予定している方です。法人か個人かを問わず、原則無料で使えます。
経営指導員が、中立の立場で助言します。必要に応じて、中小企業診断士や社会保険労務士などの専門家、ほかの支援機関と連携して課題解決を進める形です。地域の事情を知る担当者に、まず状況を話す窓口として向いているでしょう。支援内容は商工会議所ごとに異なるため、SDGsに対応しているかを事前に確認してください。
自治体:登録制度と、登録企業向けの支援を確認する
自治体のSDGs登録制度とは、SDGsに取り組む県内の企業や団体を、自治体が登録して公表する制度のことです。登録そのものは相談窓口ではありません。ただし、制度によっては、登録した企業が専門家の支援を受けられます。
神奈川県の例です。かながわSDGsパートナーに登録した企業は、SDGsの専門家によるサポートを受けられます。支援するのは、公益財団法人神奈川産業振興センター(KIP)です。KIPのページには、専門家の派遣について書かれています。「企業経営の未病改善アドバイザー派遣(無料)」と「経営アドバイザー派遣(有料)」を併せて実施するとのことです。このページの掲載日は2023年2月24日です。現在の内容は、KIPに確認してください。
埼玉県にも、県が登録するSDGsパートナーの制度があります。登録者は、令和8年7月31日時点で2,298者です。登録の要件や手続きは、自治体ごとに違います。所在地の都道府県や市区町村に、同様の制度や相談窓口がないかを調べてください。
宣言書の作り方は、中小企業のSDGs宣言の作り方で解説しています。融資の優遇や補助金は、SDGs・ESGの取り組みで受けられる融資の優遇と補助金を参照してください。
窓口の違いを比べる
窓口ごとの違いを表にまとめます。費用は、公式ページに記載のあるものだけを載せています。
| 窓口 | 費用 | 向いている相談 | 事前に確認すること |
|---|---|---|---|
| よろず支援拠点 | 無料(何度でも) | 経営全般の悩みの整理、支援機関の紹介 | SDGsに対応できる専門家がいるか |
| 中小機構(SDGsに関する相談・経営相談) | 無料(電話は通話料が利用者負担) | SDGsの進め方の相談、情報収集 | 担当の地域本部と受付時間 |
| 商工会議所 | 原則無料 | 地域の事情を踏まえた経営相談、他機関への橋渡し | SDGsに対応しているか。 | 支援内容は商工会議所で異なる | 自治体の登録制度・支援機関 | 制度による(無料と有料の両方がある例あり) | 登録による対外的な発信、登録企業向けの専門家支援 | 登録の要件と、支援の最新状況 | 中小機構のハンズオン支援 | 有料(専門家1人1日あたり1万7,500円・税込) | 数カ月かけて、専門家と社内で課題解決を進める | 審査があること、社内チームを組めるか |
無料の窓口で足りるのは、どんなときか
「何から始めるかが決まっていない」段階は、無料の窓口で足ります。有料の支援を検討するのは、期限や作業量の壁が出てからでも遅くありません。
無料の窓口が向く場面
- SDGsと自社の仕事の関係が、まだ整理できていない
- 取引先や金融機関に何を聞かれるか、見当がつかない
- 宣言や登録制度を使うか、迷っている
- 自社に合う融資や補助金、支援機関を知りたい
この段階の悩みは、情報の整理と方向づけです。公的な窓口は、費用をかけずに第三者の意見を聞ける場として使えます。
コンサルへの切り替えを考える場面
次のような場面では、民間のコンサルティング会社に頼む価値が出てくると考えます。
- 取引先から回答期限つきで、SDGsやESGの調査票への回答や目標設定を求められている
- 社内に担当者を置けず、資料作りや実行を進める人が足りない
- 温室効果ガスの算定など、専門的な計算と資料づくりが必要になっている
- 数カ月にわたって、社内への定着を支える伴走が必要になっている
この4つは、公表資料に書かれた基準ではなく、当社の整理です。公的な窓口の中心は、助言や情報提供です。作業を丸ごと任せたい場合は、公的な窓口だけでは足りないことがあります。
間の選択肢:公的な有料支援(ハンズオン支援)
ハンズオン支援とは、中小機構が専門家を一定期間派遣し、中小企業の課題解決を支援する制度のことです。ハンズオン支援のページには、支援テーマの例として「SDGs対応」が載っています。期間は数カ月から10カ月程度(20回程度)で、費用は専門家1人1日あたり1万7,500円(消費税込)です。
利用の流れは、相談の申し込み、課題の掘り下げ、申込みと審査の順に進みます。そのあとは、支援計画の策定、専門家とのマッチング、支援の実施、成果の確認と続く流れです。審査があり、社内プロジェクトチームの編成も必要です。中小企業が主体となって課題解決に取り組む事業なので、作業を丸ごと任せる支援ではありません。民間のコンサルに頼む前に検討したい、選択肢の一つです。
窓口に相談する前に準備すること
相談の質は、準備で決まります。次の5つのステップで、1枚のメモを作っておくと、話が早く進みます。
- ステップ1:相談のきっかけと期限を書く。取引先からの依頼、金融機関の質問、採用、経営者の意向など、理由を1つに絞ります。
- ステップ2:すでに行っている取り組みを棚卸しする。省エネ、働き方の改善、人材育成、地域貢献など、実態のあるものだけが対象です。
- ステップ3:使える時間と予算の上限を決める。担当者が週に何時間使えるか、費用をいくら出せるかが目安です。
- ステップ4:聞きたいことを3つに絞る。「何から始めるか」「宣言は必要か」「使える支援はあるか」などです。
- ステップ5:まず公的な窓口を1つ予約する。従業員数、業種、所在地を伝えておくと、話が早いでしょう。
担当者を任されたばかりなら、SDGs担当者を任されたら最初にやることから読むと整理しやすくなります。取引先からアンケートが届いたときは、取引先のSDGsアンケートの答え方に回答の準備をまとめています。
コンサルティング会社に頼むときの確認点
有料の支援に進む場合は、契約の前に次の点を確認してください。複数社から話を聞き、同じ条件で見積りを比べると、判断しやすくなります。
- 支援の範囲:助言だけか、資料作りや実行まで含むか
- 費用の内訳:月額かスポットか、追加費用が出る条件は何か
- 期間と終わり方:いつまで続き、何ができたら終了か
- 成果物:宣言書、行動計画、報告資料など、手元に残るもの
- 定着の方法:担当者が自分で進められるよう、ノウハウを引き継いでもらえるか
- 経験の近さ:自社の業種や、取引先の求めに近い支援の経験があるか
ネクストプレナーズの見解
SDGsの相談で最初に迷うのは、費用よりも、誰に何を聞けばよいかだと考えます。まず公的な窓口で状況を整理し、足りない部分だけ有料の支援を使う順番をおすすめします。よくある誤解は、有料のコンサルに頼まないと始められない、というものです。取引先の期限が近い場合や、人手が足りない場合は、外部の力を早めに借りるほうが負担は小さくなるでしょう。
当社も、SDGs導入の支援サービスで相談を受け付けています。初回ヒアリングは無料で、全国オンラインに対応しています。
監修者
監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)
東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長。
本記事は公的機関の公表資料等を基にした一般的な情報です。個別の制度設計・手続きは専門家にご確認ください。
よくある質問
Q. SDGsは、どこに相談できますか。
無料で使える窓口は、中小機構、よろず支援拠点、商工会議所、自治体の4つが中心です。SDGsを名指しした窓口があるのは中小機構で、対面・電話・オンラインで経営相談ができます。よろず支援拠点と商工会議所は経営全般の窓口なので、SDGsに対応できるかを予約のときに確認してください。
Q. SDGsの相談は、無料でできますか。
公的な窓口の経営相談は、無料で利用できます。中小機構、よろず支援拠点、商工会議所は、公式ページで無料と案内されています。ただし、中小機構の電話相談は通話料がかかります。専門家を派遣するハンズオン支援は有料で、専門家1人1日あたり1万7,500円(消費税込)です。
Q. よろず支援拠点で、SDGsの相談はできますか。
経営全般の窓口なので、SDGsを経営課題として相談できる可能性はあります。ただし、確認できた公式ページにSDGsの記載はなく、対応できる専門家は拠点ごとに違います。予約のときに、SDGsの相談であることを伝えて確認してください。
Q. コンサルティング会社に頼むのは、どんなときですか。
取引先の回答期限が近い、社内に担当者を置けない、専門的な算定や資料づくりが必要、といった場面です。これは公表資料の基準ではなく、当社の整理です。何から始めるかが決まっていない段階は、無料の窓口で足りることが多いと考えます。
Q. 中小機構のハンズオン支援は、いくらかかりますか。
費用は、専門家1人1日あたり1万7,500円(消費税込)です。期間は数カ月から10カ月程度(20回程度)とされています。審査があり、社内プロジェクトチームを編成して主体的に取り組む必要があります。
Q. 自治体のSDGs登録制度に入ると、相談に乗ってもらえますか。
制度によります。登録そのものは相談窓口ではありません。神奈川県では、登録企業が神奈川産業振興センターの専門家のサポートを受けられると案内されています。登録の要件と支援の内容は、自治体ごとに確認してください。
出典・参考資料
- よろず支援拠点・生産性向上支援センターとは(よろず支援拠点全国本部)
- SDGsに関する相談(中小企業基盤整備機構)
- 経営に関する相談(中小企業基盤整備機構)
- ハンズオン支援(専門家派遣)(中小企業基盤整備機構)
- 中小機構におけるSDGsへの取り組み(中小企業のためのSDGs活用ガイドブック)(中小企業基盤整備機構)
- SDGsの取り組み方が分からないのですが、どのように情報収集を行えばよいでしょうか?(中小企業基盤整備機構(J-Net21))
- 経営相談(日本商工会議所)
- かながわSDGsパートナーについて(神奈川県)
- SDGSへの取り組みを支援します(公益財団法人神奈川産業振興センター)
- 埼玉県SDGsパートナー(埼玉県)
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