人事評価制度の導入・見直しで使える助成金|雇用管理制度・雇用環境整備助成コースの要件と申請の流れ

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人事評価制度をつくる、または見直すときに使える国の助成金が、人材確保等支援助成金の「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」です。人事評価制度を導入すると、40万円(賃金要件を満たすと50万円)が支給されます。ただし、評価制度をつくっただけでは受け取れません。就業規則への明記、評価結果の賃金への反映、離職率を下げる目標の達成が必要です。この記事では、厚生労働省の令和8年4月8日版パンフレットをもとに、要件、金額、申請の流れ、注意点を整理します。

人事評価制度の導入・見直しで使える助成金とは

雇用管理制度・雇用環境整備助成コースとは、雇用管理制度や業務負担軽減機器等を新たに導入し、離職率を下げた事業主に、国が支給する助成金のことです。人材確保等支援助成金の一つで、厚生労働省が所管しています。

人事評価制度の導入・見直しで使えるのは、このコースにある「人事評価制度」の区分です。コースが対象とする雇用管理制度は、賃金規定制度、諸手当等制度、人事評価制度、職場活性化制度、健康づくり制度の5つです。

パンフレットによると、支給の対象は、「魅力ある職場」をつくる制度を導入して適切に運用し、離職率が下がった事業主です。評価制度を整えた時点では支給されません。計画期間が終わってから12か月間の離職率を確認し、その結果を見て支給が決まる仕組みです。

人事評価制度で受け取れる金額はいくらか

人事評価制度を導入すると、40万円が支給されます。賃金要件を満たすと50万円です。複数の雇用管理制度を導入する場合の上限は、80万円(賃金要件を満たすと100万円)と定められています。いずれも令和8年4月8日版の金額です。

項目 賃金要件なし 賃金要件を満たした場合
人事評価制度の助成額 40万円 50万円
複数の雇用管理制度を導入したときの上限 80万円 100万円

パンフレットには、賃金規定制度(40万円)と人事評価制度(40万円)を組み合わせて合計80万円とする活用例があります。賃金表と評価制度は連動させる会社が多いため、この組み合わせは実務でも検討しやすいでしょう。

賃金要件とは、計画期間中に、対象労働者の毎月決まって支払われる賃金を引き上げる取り組みのことです。引き上げ前後の3か月分を比べ、全ての対象労働者の賃金が3%以上、または5%以上増えると、助成額の25%が加算される仕組みです。3%以上の区分には、雇用保険被保険者数の推移や労働局コンサルタントの相談援助を受けていることなど、追加の条件があります。

賃上げは、制度の実施日から計画期間の末日までの間に行う必要があります。実施日より前に賃上げをしていても、賃金要件を満たしたことにはなりません。

助成対象になる人事評価制度の要件

助成対象の人事評価制度とは、パンフレットが定める5つの項目をすべて満たす制度のことです。「評価制度」という名前や様式ではなく、中身で判断されます。

満たすべき5つの項目

  • (イ)労働者の生産性の向上に資すると見込まれる制度であることについて、労働組合または労働者の過半数を代表する者と合意していること
  • (ロ)人事評価の対象と基準・方法が明確で、労働者に開示していること
  • (ハ)評価の基準が年齢や勤続年数のみで決まらず、能力・技能・資格、行動・姿勢、成果・業績など、労働者本人の意思で高められる項目を対象としていること
  • (ニ)評価対象期間が1年以内で、評価を年1回以上行うこと
  • (ホ)評価の結果が、評価した労働者の賃金(諸手当・賞与を含む)に反映されること

(イ)の合意を確認できる書類は、計画の提出時に添付します。評価制度の設計が固まってから合意を取るのではなく、計画を出す前の段階で、過半数代表者と話し合っておきましょう。

賃金との連動は「平均的な評定で賃金が増える」ところまで明記する

個別要件では、評価と賃金の関係がさらに細かく定められています。評価結果が賃金に直接反映され、賃金の額や変動の幅・割合との関係が明確であることが必要です。加えて、新しい制度が賃金規定または賃金表と連動していることも必要です。さらに、最も一般的な評定を受けた対象労働者の賃金が、制度の実施日以後に増える仕組みであることを、労働協約または就業規則(賃金規定・賃金表を含む)に明記しなければなりません。

賃金の引き下げや降格を行う内容は、助成金の趣旨に反するものとされています。評価を理由とする降給・降格の規定を含む制度は、そのままでは要件を満たさない可能性があります。計画を出す前に、労働局へ確認してください。

評価結果を昇給・賞与につなぐルールの作り方は、人事評価を昇給・賞与に反映する方法で解説しています。

すでに制度がある会社は「改定」として対象になる場合がある

すでに人事評価制度がある会社でも、「改定」として扱われる場合があります。パンフレットが挙げるのは、次の2つです。

  • 就業規則などに、評価の対象と基準、評定と賃金との関係が規定されていない状態から、全ての項目を満たす形で改めて規定する場合
  • 必要な項目はすべて満たし、一定期間運用している制度について、「更なる生産性の向上に資するもの」となるよう改めて規定する場合

ただし、過去に導入していた制度と同様のものを再度導入する場合は、新たな導入に当たりません。改定として申請するときは、改定として扱える状態であることを示す賃金規定や人事評価規定の写しを、計画に添付します。

申請の流れ:計画認定から支給申請まで

この助成金は、制度を導入する前に計画の認定を受ける必要があります。導入してから申請しても、支給の対象にはなりません。流れは次のとおりです。

  • ステップ1:計画開始日までに、事業所ごとに雇用管理責任者を選任し、労働者に周知する
  • ステップ2:雇用管理制度等整備計画を作成し、本社所在地を管轄する都道府県労働局へ提出する
  • ステップ3:認定を受けた計画に基づき、就業規則などに人事評価制度を明記して導入し、評価に基づく賃金を支払う
  • ステップ4:計画期間の終了後12か月間、制度を運用し、離職率の目標を達成する
  • ステップ5:評価時離職率算定期間の終了後2か月以内に、支給申請書を提出する

ステップ2の計画の提出期限は、計画開始日の6か月前から1か月前までです。計画開始日は、最初に制度を導入する月の初日です。計画期間は、3か月以上1年以内で設定します。人事評価制度では、導入日から1年を超える日に評価に基づく賃金の支払日が来る場合に限り、1年3か月以内まで延ばせます。

導入日と実施日の違いにも注意してください。導入日は、就業規則を変更したときに定めた施行年月日です。実施日は、人事評価制度の場合、導入した制度に基づく賃金を支払った日です。評価を実施して賃金に反映するところまでが、計画期間に収まっている必要があります。

パンフレットの例では、2026年6月10日に計画を認定申請し、計画期間を2026年8月1日から2027年7月31日に設定します。離職率を確認する期間は2027年8月1日から2028年7月31日で、支給申請期間は2028年8月1日から9月30日です。この例では、計画の認定申請から支給申請の開始まで、2年以上あきます。

認定後に計画を変える場合は、変更書を労働局へ提出します。変更書を出さずに、認定を受けた計画と異なる導入や実施をした場合は、原則として支給の対象になりません。

離職率の目標はどう決まるか

離職率の目標は、計画を提出する前の12か月間の離職率(計画時離職率)より、評価時離職率を下げることです。目標は、雇用保険一般被保険者が10人以上の事業所なら1ポイント以上の低下、1〜9人なら計画時離職率を上回らないことです。あわせて、評価時離職率は30%以下でなければなりません。

離職率の計算式は、「所定の期間の離職による雇用保険一般被保険者資格喪失者数 ÷ 期間の初日の雇用保険一般被保険者数 × 100」です。算出は事業主単位です。同一の事業主が設置する全ての雇用保険適用事業所を含めるため、一部の事業所だけで計算することはできません。

パンフレットの例は次のとおりです。人数規模が15人で計画時離職率が10.0%なら、評価時離職率は9.0%以下にしなければなりません。計画時離職率が0.8%の場合は、評価時離職率0.0%が目標です。離職がもともと少ない会社には、厳しい目標です。

受給前に確認したい注意点

パンフレットや支給要領には、申請前に見落としやすい条件がいくつかあります。主なものを挙げます。

  • 計画の提出前に、導入する制度の費用と認められる金銭(預かり金を含む)を支払うと、新たな導入と認められないこと
  • 計画開始日の前日から6か月前〜計画期間の末日の間に、雇用保険被保険者を事業主都合で解雇等していないこと
  • 過去に同じ区分(人事評価制度)の助成金を受給している場合は、最後の支給決定日の翌日から3年が経過していること
  • 支給対象の制度導入について、他の助成金等を受けている場合は、原則としてこの助成金は受けられないこと
  • 人事評価制度は、対象事業所の全ての対象労働者を適用対象とする制度であること

この助成金は予算の範囲内で支給されます。確認項目が多いため、支給の可否が決まるまで時間がかかる場合もあります。不正受給の場合は、支給済みの助成金を返還し、事業主名も原則公表されます。支給申請書の写しなどの保管期間は、支給決定から5年間です。

ネクストプレナーズの見解

評価制度は、助成金の要件に合わせてつくるのではなく、自社の評価の目的を先に決めてください。そのうえで、要件を満たせるかを確認する順序をおすすめします。評価結果と賃金の連動は設計に手間がかかるため、賃金テーブルの整備と同時に進めたほうが手戻りは少ない、と考えます。離職率の目標は、評価制度が機能しているかを測る指標にもなります。評価のばらつきを減らす評価者研修も、計画の段階から組み込んでおくとよいでしょう。

まとめ:最初の一歩は就業規則と賃金規定の点検

人事評価制度で助成金を使うには、計画開始日の6か月前から1か月前までに、労働局へ計画を提出します。まず、現行の就業規則と賃金規定が、5つの項目と賃金連動の要件をどこまで満たしているかを点検します。そのうえで、管轄の都道府県労働局に事前に相談してください。制度の設計から整備までを相談したい場合は、ネクストプレナーズにお問い合わせください。

本記事は公的機関の公表資料等を基にした一般的な情報です。個別の制度設計・手続きは専門家にご確認ください。助成金の内容は年度ごとに改正されるため、申請の前に最新の厚生労働省の資料をご確認ください。

監修

監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)

東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長。

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よくある質問

Q. 人事評価制度の導入で使える助成金は何ですか?

人材確保等支援助成金の「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」が使えます。人事評価制度を導入すると40万円(賃金要件を満たすと50万円)が支給されますが、離職率を下げる目標の達成が条件です。

Q. 人事評価制度の助成金はいくらもらえますか?

人事評価制度1つで40万円、賃金要件を満たすと50万円が支給されます。複数の雇用管理制度を導入する場合の上限は、80万円(賃金要件を満たすと100万円)です。いずれも、厚生労働省の令和8年4月8日版パンフレットに記載された金額です。

Q. すでにある人事評価制度を見直す場合も助成の対象になりますか?

対象になる場合があります。「改定」として扱われる場合は2つあります。評価の基準や評定と賃金との関係が就業規則等に未規定の状態から規定する場合と、すでに要件を満たす制度を更なる生産性向上のために規定し直す場合です。ただし、過去に導入していた制度と同様のものを再度導入する場合は対象外です。

Q. 計画はいつまでに提出すればよいですか?

計画開始日の6か月前から1か月前までの間に、本社の所在地を管轄する都道府県労働局へ提出します。計画開始日は、最初に制度を導入する月の初日です。計画期間は3か月以上1年以内で設定します。

Q. 離職率が下がらなかった場合、助成金は支給されませんか?

支給されません。雇用保険一般被保険者が10人以上の事業所では、計画時離職率より1ポイント以上の低下が必要です。1〜9人の事業所は、計画時離職率を上回らないことが条件です。評価時離職率は30%以下である必要もあります。

Q. 人事評価制度で降給や降格を行う規定があっても助成金は受けられますか?

そのままでは要件を満たさない可能性があります。賃金の引き下げや降格を行う内容は、助成金の趣旨に反する制度とされているためです。計画を出す前に、管轄の都道府県労働局へ確認してください。

出典・参考資料

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人事ブログ編集部
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