【解説】同一労働同一賃金制度について

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同一労働同一賃金

同一労働同一賃金制度の概要

政府の働き方改革の1つである「同一労働同一賃金制度」が大企業は2020年4月より、中小企業(※1)は2021年4月より施行されます。

資本金額または出資の総額 3億円以下
※小売業またはサービス業の場合:5000万円以下
※卸売業の場合:1億円以下
常時使用する労働者数 300人以下
※小売業の場合:50人以下
※卸売業またはサービス業の場合:100人以下

「同一労働同一賃金制度」は、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すために導入されます。

この不合理な待遇差を解消する事によって、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにする事が狙いです。

※1:中小企業の定義・条件

同一労働同一賃金制度とは?

同一企業・団体において職務内容が同じであれば、雇用形態に関わらず、同一の賃金を支給するべきだというものです。

現行法でも、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との不合理な待遇差は許されていませんが、今回の改正はその判断の方法をより明確にするものとなっています。また派遣労働者については、派遣先の正規雇用労働者との不合理な待遇差を禁止する事を新たに盛り込んでいます。

2016年12月20日に、「働き方改革実現会議」において政府案として提示されたものが「同一労働同一賃金ガイドライン」です。
正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の改善を目指すために策定されました。

その後、関係者の意見や改正法案についての国会審議などを踏まえ、「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」として2018年12月28日に公布・告示されています。

(参考)厚生労働省/同一労働同一賃金ガイドライン

同一労働同一賃金ガイドラインについては、こちらのサイトで詳しく説明されていますのでご参考にしてください。

【関連】「同一労働同一賃金ガイドライン」の目的や内容、問題点について解説/BizHint

同一労働同一賃金ガイドライン案は、関係法が施行される2020年4月1日以降に正式に施行される見込みですが、それまでに適切な対応が出来るように準備が必要です。

同一労働同一賃金制度の導入目的

様々な事情により、非正規雇用を選択する労働者が増加している中、雇用形態に関わらず職務内容に応じた処遇を受けられるようにする事で、多様な働き方を選択できる社会にし、日本経済の成長力の底上げを図る事を目的としています。

同一労働同一賃金制度は、もともと欧州諸国に広まった考え方ですが、日本とは異なる点が見られます。

EU諸国の同一労働同一賃金制度は、1919年のヴェルサイユ条約(第一次世界大戦における連合国とドイツの間で締結された講和条約)での、『同一価値の労働に対しては男女同額の報酬を受けるべき原則』(第13編第2款第427条)から始まったと言われています。

EU諸国で普及している同一労働同一賃金制度は、人権保障の観点・法律に位置付けられており、性別や人権、障害などの事情で生じた差別や、宗教や信条などを理由とした差別を禁じる禁止原則の一つとして位置づけられています。

EU諸国では主に仕事の内容、つまり「職務」によって賃金が決まります。この「職務型」に対し、日本企業の多くは「職能型」であり、能力で賃金が決まります。

ただ、日本では能力評価の仕組みが整わないまま、職能の部分は勤続年数で評価されるようになりました。所謂、年功序列というものです。

EU諸国では、仕事内容が同じであればどの企業であっても賃金に大きな差はありません。どの職務に就くかによって賃金が決まります。
職務毎にスキルを高め、キャリアを形成していきます。そのため、異なる職種への変更はあまりありません。この点が日本との大きな違いですね。

同一労働同一賃金ガイドラインでは、「同一企業内の雇用形態による待遇差の是正」を目指したものとなっているため、企業が変われば同じ職務内容でも賃金が異なる可能性はあり得ます。

今回の同一労働同一賃金制度は、EU諸国の制度を参考にしつつ、日本の雇用慣行の上に制度化する事で、非正規雇用労働者の待遇改善が第一の目標のようです。

同一労働同一賃金制度のメリット・デメリット

同一労働同一賃金制度を導入する事で以下のようなメリット・デメリットがあります。

企業 労働者
メリット 非正規雇用労働者のモチベーション向上
非正規雇用労働者の生産性向上
労働参加率の向上
非正規雇用労働者の待遇改善
仕事の幅の拡大・能力向上
より自分にあった働き方・生き方が選べる
デメリット 人件費の高騰
制度対応にかかるコスト・手間の発生
正社員の賃金低下
リストラや新規雇用の減少

同一労働同一賃金の取り組み方

働き方改革

同一労働同一賃金制度を導入するにあたり、企業はどのような対応をしていけば良いかのいくつかポイントをあげます。

●正社員と非正社員の職務内容などを明確にする
正規雇用労働者と非正規雇用労働者の職務内容が同じであれば同じ賃金を支給しなければなりません。もしも違いがあるのであれば、賃金に差があっても問題ありません。合理的な理由のある待遇差とするために、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の職務内容を明確にする必要があります。

●人事制度や就業規則の見直し、変更の検討
職務内容を明確化すると共に、昇給・賞与・手当・福利厚生などの点についても正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間に不合理な待遇差がある場合は、人事制度や就業規則等の変更を検討する必要があります。

●人件費を算出して人員を調整する
正規雇用労働者と非正規雇用労働者の職務内容が同じであれば、人件費が高騰します。具体的にどの位の人件費になるのかを
事前に予測し把握する必要があります。もしも予測した人件費が予算を上回る場合は、人員調整も視野に検討しなければならないかもしれません。

●業務改善や商品・サービスの質や値段を上げて生産性を上げる
人件費の高騰で業績が下がったら元も子もありません。かと言って人材不足の昨今、これ以上は削減できないし、人員を削減したとしてもトラブルに発展する事もありリスクがあります。

業務改善を行い効率化を図ったり、商品・サービスの質や値段を上げて生産性を上げる方法を検討する事も必要です。

●働く環境を整備する
雇用形態に関係なく、正当な評価をし、達成具合による「賃金」を決める必要があります。モチベーションが高い人や能力のある非正規雇用労働者には、責任のある仕事も任せていくことが望まれます。組織としていかに、働きやすい環境を整備していくかが必要となります。

●正社員の賃金の引き下げを検討する
労使の合意を得れば正規雇用労働者の待遇を引き下げる事も不可能ではありませんが、賃金の引き下げは、労働者の不安を煽り、モチベーションを低下させ、離職や裁判沙汰へと発展する可能性もあるため、極力避けたい対応です。最終手段としての位置づけと考えた方が良さそうです。

同一労働同一賃金制度で求められるのは「客観的かつ公平な評価制度」です。
自社の評価制度に「不明瞭な点」や「不公平な点」がないかの見直しを行う事で社員の労働と貢献度を明確にし、賃金を決めていく事で社員の納得感も増し、離職の防止にも繋がるのではないでしょうか。

同一労働同一賃金の取り組み事例のご紹介

大企業は2020年4月より、中小企業は2021年4月より施行される同一労働同一賃金制度ですが、既に日本でも取り組みを進めている企業があります。幾つかご紹介させていただきます。

参考1)同一労働同一賃金の実現に向けた先進的な取り組み
参考2)【働き方改革成功事例18選】テーマ別に企業の取組内容をご紹介

デメリットも発生しているかもしれませんが、どの企業でも効果が表れているようです。中小企業も事例を参考に少しずつ整えてい区必要があります。

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赤坂 悦子
【バックオフィス担当】データ管理やシステム開発、総務全般ど幅広くバックオフィス系の業務を担当しています。 現在は業務・オフィス改善に注力しています。

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