SDGsとは国連サミットで加盟193ヵ国が2030年までの15年間で達成しようと採択した、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)のことです。
世界中の誰もがわかるカラフルな17のゴール、その下には具体的な169のターゲット、その成果を測るための232の指標が設定されています。 「誰ひとり取り残さない」という理念に向けて、経済・環境・社会に配慮した行動が企業にも求められています。
引用:ネクストプレナーズ・SDGsコンサルティングサービス
SDGsの目標達成期限である2030年まで10年を切った昨今、「SDGs」という言葉の認知度はかなり上がってきました。
今では、「SDGsを知らない」「自社には関係ない」という企業よりも、
「SDGsという言葉はよく聞くし、企業で取り組みが必要ということもわかっている。」
「ただ、何から始めればよいのか、何ができるのかわからない。」
「SDGsへの取り組みが自社にどのように影響するかわからない。」
「今となってはコロナの影響もあり、社会貢献的な取り組みは優先度が低い。」
そんな企業が多くなってきているのではないでしょうか。
しかし、実はWith/Afterコロナの今だからこそ、企業はより優先度を上げてSDGsに取り組むべきなのです。
その大きな理由のひとつとして、SDGsとも密接に関わる「ESG投資」という考え方が広まったことが挙げられます。
そこで、本ブログではSDGsとESG投資の関係性を解説するとともに、何故企業は「今だからこそ」SDGsに取り組むべきなのか、今回から数回に分けてお伝えしていきます。
1.SDGsとは
2.ESG投資とは
3.SDGsとESG投資の関係性
4.With/Afterコロナの時代にこそSDGsに取り組むべき理由
5.何から取り組めばいいのか(SDG Compass)
今回はまず、上記目次のうち1~3にあたる、SDGsとESG投資の概要及び双方の関係性について解説します。
目次
SDGsとは
SDGs(Sustainable Development Goals)とは、日本語では「持続可能な開発目標」と訳され、国連加盟国が2030年までに達成すべきと定めた、世界共通の17の目標です。
SDGsで目指すのは、経済・環境・社会の3点のバランスがとれた持続可能でよりよい世界で、前身のミレニアム開発目標(MDGs)とは異なり、途上国だけではなく先進国も含め全世界が対象です。
また、国や地方自治体、政府は勿論、企業や個人においても取り組むべき世界中の目標という位置付けで、「誰一人取り残さない」を原則に採択されています。
SDGsはあくまで目標であり、法的に義務付けられているわけでも、取り組まないことについての罰則が規定されているわけでもありません。
そのため、一部の企業においては優先度が低くなっていたり、後回しになっていたりする現状があります。
しかし、企業がSDGsに取り組むことでメリットが生じることに反比例して、企業がSDGsに取り組まないことにはデメリットが生じます。
しかも、With/Afterコロナ情勢下では、それが今まで以上に顕著になることが予想されます。
つまり、SDGsに取り組まないことは、法的な罰を受けるものではないものの、「SDGsに取り組まないことを理由に不利益が生じる」という状況になる可能性が極めて高いため、ある種「罰」ともいえる結果に繋がる可能性が高い=リスクのあるものだと言い換えることができます。
では、その「デメリット」「不利益」「リスク」とは何なのか、そして企業はそれらを避けるためにどのような行動をすればよいのか、それは次回以降でお伝えします。
次の2章ではそれらをお伝えするに先んじて、「SDGs」と併せて理解しておくべき言葉である「ESG投資」とは何なのかについて解説します。
ESG投資とは
ESG投資とは
ESG投資とは、投資先企業選定の際の判断材料として、財務情報に加え、「環境」「社会」「企業統治」という非財務情報3点を考慮する投資方法です。「ESG」とはその3点の頭文字をとった言葉で、それぞれ「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治/コーポレートガバナンス)」からとられています。
従来は投資先企業の選定においては、財務諸表から読み取ることのできる売り上げや利益等の財務情報が重視されてきました。
しかし、昨今の投資においては、財務諸表からは読み取ることのできない、環境への配慮や社会問題への取り組み、企業の不祥事等防止への尽力などの非財務情報にも注目し、投資先を決定する投資家が増えています。
JSIF(日本サステナブル投資フォーラム)の調査によると、ESG投資残高は世界でも日本でも年々増加しており、2019年には日本におけるESG投資残高が330兆円を超え、総運用資産残高に占める割合は55.9%と半数以上を占めています。
2020年調査では前年比6.6%減でしたが、それでも残高は310兆円を超えており、総運用資産残高に占める割合も51.6%と依然半数以上です。
なお、2020年調査で残高が減少したことについては、昨年比で3月末の株価が下落したことが要因として考えられるとのことで、今後は改めて増加していくことが予想されます。
参考:JSIF・サステナブル投資残高調査
ESG投資における評価基準
それでは、ESG投資ではどのような企業が高く評価されるのでしょうか。
実は、ESG投資における評価基準は、明確には定められていません。
どのような方法でESG投資を行えばよいのかという手法(※1)や評価機関がESGの視点から評価した株価指数(※2)が評価機関や団体等から公表されていたり、また(ESG投資のために策定されたものではないものの)参考にできるものとして、国際基準として提唱されている原則(※3)、参考となるガイドライン(※4)等が発表されていたりはしますが、それらの優先順位や目指すべきレベル感等は評価機関によって異なりますので、あくまで「参考」という位置付けです。
最終的な判断は投資家自身の基準によってなされます。
環境問題の解決に重点をおく投資家もいれば、人権問題を重視する投資家、企業内部の透明性を重視する投資家もいるでしょう。
※1参考:GSIA・ESG投資の手法(日本語訳)
※2参考:Dow Jones Sustainability Index(DJSI)、FTSE Blossom Japan Index、MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数等。
※3参考:国連グローバル・コンパクト・国連グローバル・コンパクトの10原則l
※4参考:GRIガイドライン(GRIスタンダード)
ESG投資で重視されるのは企業の持続可能性
このように、ここでいうESGの定義や重視する課題等は一定ではないものの、最終的にESG投資により求めるのは、中長期的な目線でみた利益(=投資先企業の持続可能性)です。
ESG投資の考え方が現れた背景には、企業が短期的な利益を求めるが故、環境や社会問題、内部統治等に配慮しない経営をすることが増えた結果、環境破壊を要因とする資源不足や災害、不祥事等により経営が立ち行かなくなったり売り上げが著しく低下したりする企業が続出したという状況があります。
そこで、財務情報より図ることのできる短期的な利益のみならず、中長期的な利益、つまり投資先の企業の持続可能性(サステナビリティ)に着目して投資を行おうという考え方がでてきたのです。
そして、企業の持続には「ESG」への配慮が欠かせないことから、「ESG投資」すなわち持続可能な企業=ESGに配慮した企業への投資という投資方法が提唱されました。
ここで「持続可能性」という言葉が出てきた通り、ESG投資における目的(持続可能な企業への投資)とSDGsの目的(持続可能でよりよい世界の実現)は、一部共通しています。
これが、冒頭でお伝えした、「企業が今だからこそSDGsに取り組むべき理由のひとつにESG投資がある」という点に繋がります。
次の第3章では、SDGsとESG投資の関係について解説します。
SDGsとESG投資の関係性
SDGs推進とESG投資対策
前章の最後で触れたように、SDGsとESG投資は、何れも「持続可能性」がキーになるという点において共通しています。
目的が共通しているということは、そのための手段=取り組みも、共通する部分が出てきます。
それは、SDGsの3要素「経済・環境・社会」のうち「環境」「社会」が、ESG投資の「E」「S」と正しく一致していること、そして、SDGsの17の目標の全てはESGの何れかに分類されることからも明らかです。
環境省は、「環境、経済、社会を三層構造で表した木の模式図」の中で、「模式図の三層それぞれに、関連の深いSDGsのゴール」として、「経済」にSDGsのゴール8と9、「社会」にゴール1,2,3,4,11,5、「環境」にゴール6,12,14,7,13,15、「ガバナンス」にゴール10,17,16をあてはめています。
※ゴールの列挙順は上記模式図の記載順に由るものです。
参考:環境省・環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書
つまり、SDGsへの取り組みとESG投資への対策は一部表裏一体であるため、
ESG投資対策をすることでSDGsへの取り組みに繋がったり、SDGsへの取り組みをすることでESG投資対策に繋がったりするということです。
SDGs推進から始める
企業がESG投資に対策することと、SDGsに取り組むことでは、後者の方が比較的スムーズに進められる可能性が高いです。
理由として、ESG投資にはSDGsのように具体的に目指すべきゴール等が定められていないことが挙げられます。
第2章にて紹介したようなESG指数や手法等は提唱されているものの、そのうちどこを重視するか、どこを基準とするか(更にはそれらのガイドライン等を参考にするか否か)等は投資家の判断によるものであり、企業側からは測ることができません。
そのため、「ESGに配慮」といってもどの範囲・レベルまでやればいいのか、いつまでにやればいいのか等がはっきりしておらず、対策としても具体的にどのような取り組みや活動をするべきなのかの判断が容易ではありません。
一方、SDGsは具体的な17の目標があることに加え、その下には更に細かいターゲットと指標が決められています。
そのため、SDGsの目標やターゲットなどから、会社でできること、自社の活動と結びつけやすいところを見つけ、上手く紐づけていくという検討・取り組みから始めることで、比較的容易に進めることができます。
勿論、ESGのそれぞれに対する具体的な対策内容やSDGsのターゲット・指標まで細かくみていくと、お互いにもう一方にはそぐわない(補い合えない)対策やターゲット等も出てくることが予想されるため、ESG投資において選ばれやすく、且つSDGs貢献企業として投資家以外のステークホルダーに選ばれやすい企業になるには、ESG投資、SDGsどちらの視点も取り入れ、対策していく必要がありますが、最初からどちらも完璧に対策するというのは困難です。
そのため、双方の視点でそれぞれ検討・対策していく必要のある要素があるとはいえ、まずはSDGsへの取り組みから始めて、足りない部分をESG投資目線で考え対策を検討する(その後、またSDGs視点で不足点を探していくというサイクルを回す)という形を採ることをお勧めします。
それぞれの投資家のESG投資の基準を推測して対策を練ったり、どちらにも合致する取り組みを模索したりして足踏みをするよりは、できることから始めて、不足部分を検討し、補っていくという流れで推し進めることが望ましいでしょう。
SDGsとESG投資の関係性
このように、SDGsとESG投資は、
・何れも世界全体が目指す「持続可能な社会」の実現に不可欠なもの
・企業においても自社の存続のために取り組みや対策をする必要がある
・企業において対策をする上では双方に重なり合う部分がある
・SDGsへの取り組みから始めるとESG投資対策も考えていきやすい
という関係にあります。
また、ESGとSDGsの関連性についてはGPIFの図も参考になります。
参考:GPIF ・ESG投資とSDGsのつながり
まとめ
今回は、SDGsとESG投資の概要及び双方の関係性について解説してきました。
新型コロナウイルスの企業経営への影響は感染拡大から1年が経過する現在も続いており、多くの企業では、業績・売り上げに不安が残る一方で顧客・取引先や従業員を筆頭とするステークホルダーからは時代に即した対応、新たな取り組みを求められています。
SDGs視点で経営を考える「SDGs経営」を導入することは、自社においては何を変えて何を継続すべきかを浮き彫りにすることにも繋がります。
次回以降は今回解説した内容を踏まえ、ではWith/Afterコロナの時代にこそSDGsに取り組むべき理由とは何なのか、また何から取り組めばいいのか(SDG Compass)について詳しくお伝えしていきます。
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状況が刻々と変化していく情勢に対応し、コロナ前と同様、ひいてはコロナ前以上に経営が好転するよう、SDGsやESG投資を上手く活用しましょう。
また、当社ではSDGsに関するコンサルティングを行っております。
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