本ブログではSDGsとESG投資の関係性を解説するとともに、何故企業は「今だからこそ」SDGsに取り組むべきなのかお伝えします。
1.SDGsとは
2.ESG投資とは
3.SDGsとESG投資の関係性
4.With/Afterコロナの時代にこそSDGsに取り組むべき理由
5.何から取り組めばいいのか(SDG Compass)
前回の記事では、上記1~3にあたる、SDGsとESG投資の概要及び双方の関係性について解説しました。
そこで述べたSDGsとESG投資の関係性からもわかる通り、企業がSDGsに取り組むべき大きな理由のひとつは、「社会の投資の流れがESG投資に傾いているから」「そのESG投資への対策にSDGsが有効であるから」であると言えます。
しかし理由はそれだけに限らず、他にも「優秀な人材の確保、特にSDGsネイティブともいわれるミレニアル世代の採用に有効」「SDGs達成に貢献している企業はステークホルダーから好印象を持たれやすい」などの側面もあります。
今回は、上記4にあたる、これらの「With/Afterコロナの時代にこそ企業がSDGsに取り組むべき理由」について深く掘り下げてお伝えします。
これは、裏を返せば、前回の記事1章の最後でお伝えした「SDGsに取り組まない『デメリット』『不利益』『リスク』とは何なのか」という問いの答えでもあります。
目次
ESG投資への対策に有効
さて、企業がSDGsに取り組むべき第一の理由として、「ESG投資対策に有効だから」とお伝えしました。
SDGsがESG投資対策に有効である理由については前編の記事でお伝えしましたので、ここではESG投資対策を行うべき理由についてお伝えしていきます。
欧米を中心にダイベストメントが加速している
国内外においてESG投資残高が増加傾向にあることは前編の記事でおつたえしましたが、その一方で欧米を中心とした投資家の間では「ESGに配慮しない企業・事業からのダイベストメント(投資撤退)」を行う流れも活発化しています。
日本においても、2015年にGPIFがPRI(責任投資原則)に署名していることに加え、2020年10月には菅総理が脱炭素宣言をしたことで、今後はよりESG投資の割合は増加し、比例してESGに配慮しない企業・事業からのダイベストメント(投資撤退)も加速することが予想されます。
そのため、自社の商品や事業がESGに配慮していないと投資家に判断された場合、今後投資額がプラスにならないだけではなく、既に投資を受けている部分についてマイナスになる可能性があります。
これからの時代、安定して投資を継続してもらうには、自社がESGに配慮しているということを積極的にアピールしていく必要があります。
大企業のみならず中小企業でも対策が必要
このように、社会の投資の流れがESGに傾いているとなると、大企業がESG投資対策をしなければならない理由は明白ですが、実は投資を受けない中小企業もESG投資への対策が不要というわけではありません。
それは、SDGsへの取り組み、ESGへの配慮を行う上では、果たすべき責任はサプライチェーンにも及ぶという考え方が影響しています。
ESG投資における投資先として選ばれたい大企業は、SDGsやESGへの取り組み・対策を行いますが、それは決して自社内の取り組み等のみで完結するものではありません。
その責任はサプライチェーン(商品等が消費者に届くまでの全過程)にも及ぶと考えられており、SDGs等を推進していく上では、例えば自社から始まり自社の商品の一部となる製品を製造している会社、その会社が材料を調達している会社、更にその会社が作業を外注している会社…という形で、サプライチェーン上に存在する全ての環境について、SDGsやESGに配慮する必要があります。
つまり、上記の例で言えば、自社内でどれだけ労働環境や労働条件に配慮していても、サプライチェーン上のある一部分だけでも、過酷な労働環境を強いられているような環境があった場合、SDGsやESGへの配慮が十分とは言えないと判断されるということです。
特にこのコロナ禍においては、サプライチェーンの見直しを行う企業も多く、持続可能性が高いと見做されないと取引中止の対象とされてしまうことも考えられます。
サプライチェーンの透明性に関する法律
この考え方に基づき、既にいくつかの国ではサプライチェーンの透明性の確保を要請する法律が施行されています(※)。
当該国の企業においては、国内は勿論、国外の取引先についても適切な労働環境が整っているか等の把握をする必要があり、日本の企業も当然その対象です。
※イギリスの現代奴隷法、カルフォルニア州のサプライチェーン透明法、フランスの人権デューディリジェンス法など。ドイツやオランダ、EU全体でも同様の法律の検討が進んでいたり、企業から政府に制定を求めたりしています。
そのため、SDGsやESGに配慮していない、特に逆行するような企業は、それらの国との直接の取引や、それらの国と取引している企業との取引が減少していく、ひいては完全に打ち切られてしまう可能性があるということです。
今実際にこの種の法律が施行されている国は多くありませんが、SDGsやESGをはじめとする世界の動向、重視する点、課題感等を鑑みると、ゆくゆくは全世界的に同様の法律が制定される可能性も十分にあります。
全世界的に法律が整備されるのは近々の話ではないにしても、EUを含め現在法律の制定が検討されている国で実際に施行されるだけでも、その影響は広く及ぶことが予想され、いずれにせよ遠くない将来、全世界的にSDGs、ESGに配慮した活動が求められることとなるでしょう。
優秀な人材の確保に有効
前回記事から前項までにおいて、ESG投資という投資の流れに絡めてSDGs推進の必要性について述べてきましたが、先述の通り、SDGsに取り組むべき理由はESG投資との関係においてだけではありません。
SDGsへの取り組みは、優秀な人材の確保にも有効であるという側面があります。
特にミレニアル世代の人材確保に効果的
特にミレニアル世代については、モチベーションのドライバーとなる要素の中に「社会的課題を解決したい」という理念が潜んでいるため、社会的課題の解決にあたり今最も重要視されているSDGsが注目を集めており、企業を選択する際、SDGsに貢献しているか否かを判断材料の一つとする動きも広まっています。
※この点については当社にてご提案している「SDGsスタートアップパッケージ」内で詳しくご説明しています。
また、パッケージ内容を簡略化したセミナーまたは社内勉強会もご提供しております。
SDGs勉強会の模様はSDGs記事一覧のレポートをご覧ください。
「SDGsスタートアップパッケージ」については、「SDGsスタートアップパッケージ」の資料をご確認いただくか、またはお問合せページから当社専門コンサルタントにご相談ください。
コロナの影響で採用や教育に割けるコストは低下の傾向
近年、売り手市場・採用難の状況が続いていましたが、コロナを経た現在は、多くの企業で売上の低迷や取引の減少、作業効率の低下(コロナ対策のための追加作業含む)等が起こり、場合よっては今後の事業継続の見通しが不透明になっている業種や企業もあります。
その影響により、新規雇用に割ける様々なコストが不足していることから、採用活動を控えめにすることを検討している(既に決定している)企業も多いようです。
加えて、時間・場所・金銭的な制約により研修等も行いづらくなっているため、ある意味「質より量」「採用後に教育」という形はとりづらくなっており、企業にとってはBeforeコロナとはまた違った形での採用難の兆しが見えています。
そこで企業に求められることは、今まで以上に優秀な人材を採用し、育て、定着させることです。
中にはコロナ禍でも業績や業務量が変わらなかったり寧ろ増加していたりする業種や企業もありますが、多くの場合、競合他社も同様であると考えられるため、優秀な人材を確保する、他社に流さないことが重要であることには変わりありません。
ステークホルダーから選ばれやすい
前2章では、SDGsを推進することで投資家や取引先、働き手に選ばれやすい企業になるという点をメリットとしてお伝えしましたが、実はSDGsを推進する企業はその他のステークホルダー、とりわけ消費者からも選ばれやすくなります。
今後、企業を取り巻くステークホルダーは働き手と同様にミレニアル世代が中心となっていきます。
消費者は環境に配慮されている商品を選ぶ
特に環境問題についてはメディア等でも頻繁に取り上げられていることもあってか、環境に配慮されている商品を積極的に選ぶという消費者は多いです。
例えば同様の商品を2つ比べたとき、商品のメインとなる(求めている機能等の)部分に大差がないのであれば、多少価格が高くても環境に配慮している商品を選ぶという消費者が増えています。
今では環境問題のみならずSDGsという言葉を目にすることも多くなり、企業の経営者や担当者だけでなく一般的にもSDGsという言葉とその意味がどんどん広まっていますので、SDGsに配慮している企業である、商品であるということをアピールすることで、上記の例のように競合他社、競合商品との比較において有利にはたらく場面も増えてくることが予想されます。
投資家や取引先は持続可能性やサプライチェーンに着目する
投資家や取引先も同じくミレニアル世代が増えていくため、企業の持続可能性に着目する必要があったりサプライチェーンに配慮する必要があったりすることに加えて、SDGsネイティブとしてSDGsを推進している企業に好感を持ち、投資先や取引先として選んでいく人が増えていくでしょう。
更に、コロナで多くの企業が存続不能に陥ったり商品の供給が追い付かなかったり、それにより自身の財政状況にも影響が出たり、普段とは異なる生活や消費のスタイルを強いられたりという状況を経験した投資家・消費者たちは、今後はより恒常的に持続可能性の高い企業・商品を選んでいく可能性が高いです。
これからの時代は、投資家、働き手、取引先、消費者そのほか全てのステークホルダーに対し、自社が今後社会にどのように成長し、どのように貢献し、どのように存続していくのかということを示し続けることで、選んでもらえる企業になる必要があります。
まとめ
今回は企業がWith/Afterコロナの時代にこそSDGsに取り組むべき理由、裏を返せば取り組まないリスク・デメリットとは何なのかについてお伝えしました。
次回はメリットを享受しリスクを避けるために企業はどのような行動をすればよいのかについてお伝えしていきます。
SDG Compass(企業行動指針)についても同時に解説しますので、自社でどのように取り組んでいくべきかお悩みの経営者様、人事ご担当者様、SDGsご担当者様は是非次回の記事を参考にしてください。
▼後編はこちら
また、当社ではSDGsに関するコンサルティングを行っております。
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