LGBTとは、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)を表す用語のひとつで、3つの性的指向と1つの性自認に関する単語の頭文字をとった言葉です。
多様性(ダイバーシティ)を認めることが重要視される現代においては、職場でも同様の価値観の尊重が求められます。
人事課においても、LGBTの従業員や就職希望者からの質問や要望について、回答や対応ができる環境を整えておく必要があります。
そこで今回の記事では、企業において留意すべき点にフォーカスし、LGBTの概要と注意点を解説いたします。
目次
LGBTの概要
LGBTとは、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)を表す用語のひとつで、3つの性的指向と1つの性自認に関する単語の頭文字をとった言葉です。
Lは「レスビアン(女性同性愛者)」Gは「ゲイ(男性同性愛者)」Bは「バイセクシャル(両性愛者)」Tは「トランスジェンダー(性別越境者)」を意味します。
「LGBT」の中で、「L」「G」「B」は性的指向に関係するもので、「T」は性自認に関する用語です。
LGBTに該当する方は「セクシュアル・”マイノリティ”」と表される通り少数派ではあるようですが、それを理由に業務上、または業務の延長戦上(休憩時間・人間関係等)の不利益を被ることのないよう、企業側も工夫し配慮していく必要があります。
※セクシュアル・マイノリティはLGBTだけでは表せない部分も多くありますが、本記事においては割愛します。ご興味のある方は是非調べてみてください。
PRIDE指標について
PRIDE指標とは、LGBTに関する職場における取り組みを評価する指標のことです。
2016年から表彰が始まりました。
企業がどれだけLGBTに関する取り組みを積極的に行っているかについて、以下の項目で評価されます。
・行動宣言
インターネットで広く、LGBTに関連する取り組みを社内外に公表していることや、性的指向や性自認などの用語が宣言に含まれることなど。
・当事者コミュニティ
「社内コミュニティがあること」や「社内に相談窓口があること」など。
・啓発活動
「人事担当者への研修」や「新入社員への研修」など。
・人事制度
「性別の扱い」や「トイレ」をLGBTの方が働きやすい形にしているかなど。
・社会貢献、渉外活動
「LGBT関連イベントへの従業員の参加」や「LGBTへの理解を深める教育支援」など。
PRIDE指標では以上の項目のもと、LGBT関連の活動や取り組みが優秀な企業を、毎年表彰しています。
LGBTの方が就職する上での悩み
LGBTの方はマイノリティであるが故に、就職をする上で、LGBT以外の人材にはない悩みを抱えていることがあります。
例えば下記のような点です。
会社の理解が得られるか分からずに不安
LGBTの方は、「会社の理解が得られるか分からない」という不安を抱えていることも多いです。
企業説明会やインターンに参加したとしても、LGBTであると公表していない人にとっては、自分に適した環境が整備されているか等聞きたいことがあっても、質問がしにくい場合もあるでしょう。
通称名を使用したい
LGBTの方の中には、通称名を使用したいと考えている方もいます。通称名とは、戸籍上の登録名とは異なるあだ名に該当するものです。
トランスジェンダーの方は、出生時の名前が出生時の性別によって付けられたものであるため、違和感を覚え、普段は通称名を使用している場合があります。
職場でのメールや社員同士での呼び方など、日常的にも通称名が使用できるか否かは、LGBTの方の働きやすさ・過ごしやすさに繋がります。
リクルートスーツを性自認に合わせたい
現在、日本における就職活動の場では、多くの場合スーツの着用が原則とされています。
その上、スーツは「男性用」と「女性用」で分かれているケースが大半です。
しかし、LGBTの方の中には、戸籍上の性別と、自分自身が捉えている性別(=性自認)が異なる方もいます。
また自分自身の性別を「両性」や「無性」と捉えている方もいるので、男性か女性のどちらかに当てはまらない場合もあります。
そのような場合、「リクルートスーツを性自認に合わせたい」と考えている方もおり、出生時の性別と性自認のどちらに合わせたスーツを着ていくかが悩みにつながる場合があります。
性別欄に性別を記入しなければならない
履歴書を筆頭に、多くの書類には性別の記入欄があります。
しかし、性別欄に性別を記入しなければならないことも、LGBTの方にとっては悩みの一つになります。
近年では、性別欄に「その他」という欄が用意されることも増えてきました。
しかし、いまだに性別欄で性別を記入しなければならないものも多く残っているため、LGBTの方の悩みにつながっています。
LGBTに関連する注意点
LGBTのカミングアウトへの対応を決めておく
企業の人事担当の方が抑えておくべきLGBTに関係する注意点として、従業員や就職希望者からLGBTのカミングアウトがあった場合に回答や対応ができるように環境を整えたり対応について社内で共有しておいたりするという点が挙げられます。
具体例としては、LGBTの方がLGBTであることを公表したことで、ハラスメントを受けることがないような対策が必要です。
LGBTの方に対するハラスメントは、「SOGIハラスメント(SOGIハラ)」と呼ばれます。
SOGIハラには、性的マイノリティであることを蔑む行為や、当事者の許可なく周りに言いふらす「アウティング」といったものが該当します。
企業の対応としては、こうした行為がハラスメントであることを従業員に周知することや、ハラスメントを行った従業員への対応を定めておくことなどが求められます。
なお、ハラスメント全体の概要と種類、注意点については以下の記事で解説していますので、併せてご確認ください。
自社に該当者がいないと決めつけない
LGBTに該当する人が働きやすい職場環境を構築することは、すべての企業に求められることです。
現代社会では「企業の社会的責任」の1つとして、すべての従業員が働きやすい職場づくりが義務となっています。
しかし現状では、誰もカミングアウトしていないからという理由で、「自分の会社にはLGBT該当者がいない」と思い対策等を検討していない企業もあります。
この点、調査団体による調査(※)では、日本全体の中で10%弱の人は「自分は性的マイノリティである」と回答しています。
このデータを踏まえると、自社の中にLGBTに該当する方がいる可能性を考慮し、LGBTの方が働きやすい職場環境を構築するなどの対策をすべきであると言えます。
※調査団体により異なりますが、概ね1.6~10%程度との結果が出ています。
参考:JobRainbow「LGBTの割合は13人に1人? 100人に1人? バラつく理由」
トイレへの配慮
LGBTへの理解やハラスメント防止等、心がけ面での対策の他、施設等物理的環境面での対策も検討する必要があります。
例えば、LGBTの中でもトランスジェンダーの方は、日常的にトイレに対する悩みを抱えています。
性自認と出生時の性が異なるため、どちらのトイレを利用すべきか悩むということです。
こういった悩みに寄り添う意味でも、企業はLGBTに配慮したトイレの設置を検討する必要があります。
しかし「LGBT用のトイレ」を設置すれば、問題が解決するわけではありません。これがトイレに対する配慮の難しい点です。
重要なのは、トイレの設置という「ハード」の整備ではなく、誰もが気兼ねなくトイレを使える環境を作り出すという「ソフト」の面を企業として推進することです。
まとめ
今回の記事では、LGBTの概要と注意点を解説いたしました。
LGBTの問題は、本当に多様で1人1人違います。一概に「この対策をすればよい」と言い切れる正解はありません。
大切なのは、「多様性を認めていくこと」です。LGBTの方に限らず、すべての従業員にとって働きやすい環境を、企業として作り出していきましょう。
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