リファラル採用とは、従業員からの紹介による採用方法です。
近年は日本企業でも積極的に制度として導入されており、採用コストを抑えることができる等のメリットがあります。
そこで今回は、リファラル採用の概要からメリット・デメリット、導入に際する注意点まで詳しく解説いたします。
目次
リファラル採用の概要
リファラル採用とは、従業員に人材を推薦・紹介してもらう採用方法のことです。
「リファラル」という言葉には「推薦する」「紹介する」といった意味があります。
日本では、推薦・紹介による採用活動は「縁故採用」や「コネ採用」とも呼ばれ、マイナスのイメージで揶揄される場合もあります。
しかしアメリカでは、リファラル採用は一般的に行われており、また近年においては日本でも注目を集めています。
近年日本の企業で、リファラル採用が注目されている理由には、大別すると次の2つの要因が関係しています。
日本の人口減少問題の深刻化
1つ目が日本の人口減少問題の深刻化です。日本を支える重要な働き手世代(生産年齢人口)に該当する15歳以上かつ65歳未満の人口は年々減少を続けています。
生産年齢人口の減少が企業の人材不足を生み出しており、労働市場は売り手市場です。
こうしたマクロ環境の影響で、企業が優秀な人材を確保することが困難になっており、それにともない一人あたりの採用コストも上昇し続けています。
企業と人材のミスマッチ
もう1つの要因は、企業と人材のミスマッチです。
「配属された部署が希望に沿っていない」「職場の雰囲気が自分に合わない」など、近年は企業と人材とのミスマッチが増加傾向にあります。
またミスマッチの影響で、近年は在籍期間が短い離職者の割合も増えました。
この背景には、終身雇用制度の崩壊や転職市場の活性化も関係しています。
以前は終身雇用が当たり前だったので、ミスマッチが生じても離職せず我慢して働く人が多数でした。
しかし現在は、転職市場の活性化で転職を決意する人も多くいます。
このようなミスマッチによる離職を減らすために、リファラル採用を制度として導入する企業が増えました。
信頼できる従業員からの紹介で採用を行うため、自社に合わないというリスクを下げることができるのです。
リファラル採用のメリット
人材のミスマッチが減少する
リファラル採用のメリットの1つ目は人材のミスマッチの減少です。
先述したように、自社の特徴を把握していて従業員からの推薦のため、自社の労働環境や社風に適さないといったリスクを抑えられます。
また推薦を行う従業員は、推薦される人材の知人であり、人材の長所や性格を理解しているため、企業としても推薦される人としても、双方にメリットがある配属が可能となります。
採用コストが削減できる
メリットの2つ目は、採用コストの削減です。
企業の行う採用活動には、多くの場合多額のコストがかかりますが、リファラル採用の導入により、その採用コストが削減できます。
リファラル採用を導入すれば、大手就職サイトや転職サイトに広告を出したり、人材紹介企業に紹介料を払う必要性が少なくなります。
多くの場合、リファラル採用は、広告費用や紹介料より押させることができ、また採用のミスマッチが減少すれば、より費用対効果の高い採用活動といえます。
また、リファラル採用を導入することで、採用活動に要する時間も減少します。
費用的なコストと併せて、採用活動の時間的なコストを短縮することは、企業にとって大きなメリットとなります。
市場に出ていない人材にアプローチできる
メリットの3つ目は、市場に出ていない優秀な人材にアプローチができるという点です。
転職市場に出ていない優秀な人材も、リファラル採用を導入することで確保できる可能性があります。
転職サイトや人材紹介企業の利用は、前提として、そのサイトや企業に登録している転職を希望している人材だけであり、転職を希望していない優秀な人材は、そもそも転職活動を行っていません。
よって、企業が転職エージェントを利用しても、市場に出ていない人の採用は不可能です。
しかし、転職を考えていない人材であっても、知人に「私の会社で一緒に働かないか」と誘われたら、転職を検討するきっかけが生まれます。
このようにリファラル採用は、転職市場に出ていない優秀な人材を確保する可能性を高めます。
リファラル採用のデメリット
リファラル採用のデメリットとして、紹介料を目的に知人を推薦する従業員がいるという点が挙げられます。
通常、リファラル採用を導入する企業では、紹介者に対して紹介料を支給します。
しかし、紹介料が発生することが、リファラル採用にデメリットを齎す場合もあります。
リファラル採用の紹介料目当てで「誰でもいいから紹介しよう」と考える従業員がいる場合、紹介された人材が、優秀であったり自社にマッチしたりする可能性が高いとは限りません。
紹介料目当てで紹介された場合、本来のメリットは生じず、採用可否や紹介料の支払い可否等のトラブルのもととなります。
リファラル採用の導入における注意点
これまでに述べてきた通り、メリットが多い一方でトラブルにつながりかねないデメリットもあるため、導入の際には、次のような注意が必要です。
人間関係に配慮する
注意点の最も大きなものとしては、人間関係悪化のリスクに備える必要があるという点が挙げられます。
リファラル採用をきっかけに、企業と従業員の関係や従業員同士の関係が悪化することは避けなければなりません。
リファラル採用では、従業員の紹介で面接を受けた人材が不採用となったり、従業員の紹介で入社した人が社内でトラブルを起こしたりする可能性があります。
このような場合、不採用になったりトラブルを起こしたりした当事者だけでなく、紹介した従業員の評判も低下します。
また紹介した従業員が、「どうして私の紹介した人が不採用なのか」と企業に不満を持つ可能性もあります。
こうしたトラブルを避けるためにも、紹介する知人の情報などは事前に従業員に聞いておき、また、従業員には予め「紹介してくれた人を必ず採用するわけではない」旨を説明し、同意を得る等の対策が必要です。
制度として定着させる仕組みづくり
リファラル採用を成功させるためには、長期的に利用される制度として定着させ、自発的に紹介させなければなりません。
そのためには、従業員が円滑に紹介できる仕組みになるようしなければなりません。
例えば、社内に対して募集中のポジションを告知しどのような人材がマッチするかを詳しく記載したり、あるいは知人を誘うための文章などを会社側で作成・送信したり、あるいは紹介してくれた社員を全社員の前で表彰するなどのアイデアも考えられます。
紹介料について注意する
リファラル採用による紹介料の支払いについても注意が必要です。職業安定法という法律では、「労働者の募集を行う従業員に賃金以外を支払ってはいけない」と決められています(職業安定法第40条)。
つまり、リファラル採用の紹介料においても、「違法な紹介料(=『報酬』)を払ってはいけない」ということになりますので、支払方法については注意が必要です。
また賃金として、合法的に紹介料を支払うケースであっても、その金額に注意する必要があります。紹介料が低すぎても、従業員が人材を紹介するインセンティブが生まれません。
逆に高すぎても、紹介料目当ての紹介が増加する可能性が高まります。自社の状況や、必要とするスキル・経験等を勘案し、自社に合った金額設定を行う必要があります。
まとめ
今回は近年導入している企業が増加しているリファラル採用について、その概要からメリット・デメリット、導入するときの注意点を紹介いたしました。
採用コストが抑えられる、優秀な社員が採用・定着しやすい等、費用面でも採用面でもメリットの大きい制度ですが、先に紹介した通り、リスクとなるデメリットもありますので、自社に合った制度設計をしていくことが不可欠です。
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