政府から3度目となる緊急事態宣言が発令され、更に期限も5月末まで延長されることが発表されました。
コロナ禍を契機に、常時テレワークに切り替えた企業や、緊急事態宣言期間中はテレワーク可能とする企業は、この1年でかなり増えたように感じます。
当社でも緊急事態宣言期間に準じてテレワークを実施しています。
一方で、テレワーク環境や細かい制度の整備については未だ完全に完了したわけではないという会社も多いようです。
テレワーク手当もその一つで、導入検討が進んでおらずお悩みの企業様が多いからか、当社で以前公開したテレワーク手当の支給額や支給対象、支給月、想定用途などの事例を紹介した記事は当社で公開している他の記事と比較してもかなり多くのアクセスをいただいております。
そこで、今回はテレワーク手当の支給方法について紹介していきます。
「どんな支給方法があるのか?」
「どの支給方法が自社に合っているのか?」
などお悩みのご担当者様はご参考にしていただきたいです。
また、最後にはこの4月に創設されたテレワークに関する助成金「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」についても簡単に紹介いたします。
目次
テレワーク手当の導入状況
本題に入る前に、まず現状のテレワーク手当の導入状況についてみていきます。
多くの企業で検討されているテレワーク手当ですが、現在どの程度の企業が実際にテレワーク手当を導入しているのでしょうか。
『月刊総務』が2021年4月6日〜4月13日に全国の総務担当者148名を対象に行った「福利厚生に関する調査」では、テレワーク手当を導入している企業は約3割でした。
また同調査では、テレワーク手当の支給方法について「毎月一律の金額を支給」する形をとっている企業が過半数となっています。
参考:月刊総務・テレワーク手当の実施率は約3割。福利厚生の課題は「平等性」「制度の利用率」「経営層の理解」など
導入の済んでいる企業はまだ3割と少ない数字ではありますが、今回3度目の緊急事態宣言が出されたこと、テレワークが緊急事態か否かに関わらず新しい働き方として普及し始めていることなどから、今後テレワーク手当を導入する企業は増加していくであろうことが予想できます。
テレワーク手当を導入する企業の増加に比例して、従業員が「何故うちの会社では手当が出ないのか」という疑問を持つ可能性も高くなりますので、従業員からの要望や質問が出た際に回答できるよう、お早めに検討することをおすすめします。
パナソニックもこの4月から始めることを発表しています。
参考:日本経済新聞・パナソニック、在宅勤務手当を月3000円 4月から
テレワーク手当の支給方法
前章の最後にご紹介したパナソニックは毎月現金で支給していますが、テレワーク手当はそれ以外の方法によっても支給することができます。
支給内容
まず、支給内容については現金支給と現物支給の何れかの方法が考えられます。
現金支給
現金支給を選択する場合、かかると見込まれる費用分を試算した額や、実際にかかった費用などの相当分を現金で支給します。
現金支給には、従業員それぞれが特に必要なものや細かいこだわりなどに合致するものを支給された金額の範囲で選ぶことができるため満足度が上がるというメリットがある一方で、実費精算でない場合、会社の想定した用途で使ってもらえない可能性があるというデメリットにもなり得ます。
現物支給
現物支給を選択する場合、テレワークに必要な物品等を会社が購入し、従業員に支給します。
現物支給には、会社が使途を限定できる(会社の想定外の用途で使用されるということが起こりづらい)というメリットがある反面、従業員の希望するものを与えられず、従業員の満足度向上につながりづらいというデメリットがあります。
従業員それぞれが指定したものを会社が購入し支給するという方法であれば、現金支給と同様に従業員が好きなものを選択することが可能ですが、管理する会社の負担が大きく、特に数百人以上の大規模の会社では従業員一人一人の指定したものを支給するという選択は難しい可能性が高いです。
支給タイミング
次に、支給するタイミングですが、①毎月一定額を支給する方法、②一時金として支給する方法、③実費精算する方法があります。
毎月定額支給(定額加算)
毎月一定額を支給する場合、他の手当等と同様に、毎月の給与と併せて一定額を支給する形となります。
特に期間を定めずにテレワークを実施している企業や、原則or完全テレワークに切り替えている企業ではこちらの方法が多く採られているようです。
この方法を採る場合、課税や割増賃金算定基礎の対象となります。
一時金として支給
一時金として支給する場合、在宅勤務開始前等任意のタイミングである程度まとまった金額を支給します。
今回のコロナ禍により取り急ぎテレワーク及びテレワーク手当を導入した企業や、緊急事態宣言中など期間の目処を定めてテレワークを実施している企業で実施されているようです。
こちらの方法も毎月定額支給の場合と同様に課税対象となります。
実費精算
実費精算の場合、従業員に必要なものを自費で購入してもらい、後から経費精算で実費分を支給する形となります。
実費精算は給与所得とはみなされませんので課税対象となりませんが、毎月領収書確認等の管理コストが発生します。
なお、テレワーク手当が非課税となる場合については、国税庁の在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(令和3年4月30日更新)でご確認ください。
どの支給方法が多いか
では、これらの支給方法のうち、どの方法が多く採られているでしょうか。
企業の公開している事例を見る限り、現金支給が現物支給かについては、現金支給にしている企業が多いようです。
支給のタイミングについては、毎月定額支給若しくは一時金として支給している企業が多い印象ですが、それぞれの支給方法を組み合わせている企業もあるようです。
テレワークの実施期間や従業員数、従業員のテレワーク環境の凡その整備状況、経理のリソースなどを鑑み、自社に一番合った支給方法を選択しましょう。
人材確保等支援助成金(テレワークコース)
テレワーク手当については以上の通りですが、最後にこの4月から新たに創設されたテレワークに関する助成金について紹介します。
概要
厚生労働省は、「良質なテレワークを新規導入・実施することにより、労働者の人材確保や雇用管理改善等の観点から効果をあげた中小企業事業主」を対象に、厚生労働省の定める取組の実施に要した費用を支給する、「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」を創設しました。
参考:厚生労働省・人材確保等支援助成金(テレワークコース)
支給対象となる経費の範囲
支給対象となる経費の範囲は、下記の5つの取組の実施に要した費用です。
下記の5つに該当しない費用、特にPC、タブレット、スマートフォンの購入費用及びレンタル費用などについては支給対象外となっていますので特に注意が必要です。
1.就業規則・労働協約・労使協定の作成・変更
2.外部専門家によるコンサルティング
3.テレワーク用通信機器の導入・運用
4.労務管理担当者に対する研修
5.労働者に対する研修
支給対象事業主
人材確保等支援助成金(テレワークコース)は共通要項に定められた中小企業事業主向けの助成金です。
また、同助成金には「機器等導入助成」と「目標達成助成」があり、助成金を受給するためには、事業主はそれぞれ厚生労働省の定めた下記の措置を実施する必要があります。
機器等導入助成
機器等導入助成では、管轄の労働局から認定を受けたテレワーク実施計画に基づき、就業規則等の整備、取り組みの実施等を行ったうえで、評価期間内にテレワーク実施対象労働者全員が1回以上テレワークを実施する、または週平均1回以上テレワークを実施することで支給対象となります。
目標達成助成
目標達成助成では、テレワークに関する制度の整備の結果、評価時における離職率が30%以下且つ実施前に比べて低下していることのほか、評価期間1年後からの3か月間に1回以上テレワークを実施した労働者数が、評価期間1年後における対象事業所の労働者数に、計画認定時点における対象事業所の労働者全体に占めるテレワーク実施対象労働者の割合を掛け合わせた人数以上であることが支給対象となる条件となっています。
※機器等導入助成、目標達成助成何れもざっくりとした紹介ですので、詳しくは厚生労働省のHPや支給要領をご確認ください。
助成率
助成率は、機器等導入助成が支給対象となる経費の30%、目標達成助成が20%(生産性要件を満たす場合35%)です。
但し、何れの場合も、①企業当たり100万円②テレワーク実施対象労働者1人あたり20万円のうち低い方の金額が上限となります。
以上が人材確保等支援助成金(テレワークコース)の大まかな説明です。
詳しくは厚生労働省・人材確保等支援助成金(テレワークコース)をご確認ください。
まとめ
今回はテレワーク手当の支給方法と、この4月からの助成金人材確保等支援助成金(テレワークコース)について紹介いたしました。
テレワーク手当については冒頭で紹介した通り現状ではあまり導入が進んでいませんが、今後テレワークの更なる長期化や導入率の向上、一般化につれて、テレワーク手当の導入率も上がっていくことが予想されます。
また、コロナ禍の影響でテレワーク関連の制度等が整わないまま付け焼き刃的に開始したものの、徐々に規程・制度類が整備されたり自社に合ったテレワークの実施方法が固まってきたりすることで、テレワーク手当の導入や検討も始めているという企業もあるようです。
テレワーク自体はコロナ拡大以前から政府からも推進されており、最後に紹介した助成金のような補助制度も用意されています。
今後、テレワークの導入率とそれに伴うテレワーク手当の導入率が増加することは間違いないでしょう。
テレワーク手当は企業の費用負担の増加、管理コストの増加につながるため、なかなか手が出しにくいという企業もあるかもしれませんが、テレワーク手当を支給しない場合、従業員の満足度の低下、ひいては離職率の向上等のデメリットを生む可能性があります。
そのため、助成金の利用や交通費との相殺、自社に合った支給方法を選ぶなど、工夫をすることで導入を検討することがベストです。
テレワーク手当の支給額や支給対象などについては以下の記事をご確認ください。
- 「戦略人事」とは?概要と実現のためのポイント - 2022年7月4日
- テレワークに適した福利厚生制度|見直しの必要性と具体例 - 2022年5月24日
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