【解説】育児休業制度の概要と実務

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「育児休業制度」とは、育児・介護休業法に定められた休業の制度です。

2017年にメルカリの社長が、「育児休業」として2か月の休業を取得することを発表し、大きな話題になりました。休業中、主要な業務は他の役員や社員が引き継ぎ、会議への出席等についてはWeb会議を開催するなどして対応したそうです。

このニュースを知って、「自分の会社の育児休業制度はどうなっているのか?」と興味をもった方も多いことでしょう。また、総務・人事担当者の中には、改めて就業規則を見直しはじめた方も少なくないと思います。

今回は「育児休業制度の概要」を説明します。

育児休業制度とは?

「育児休業制度」とは、育児・介護休業法に定められた休業の制度で、子が一定の年齢に達するまでは、父母の申し出により一定期間の休業を取得できる制度です。会社においては、就業規則に育児・介護休業法に従った内容で育児休業制度を定める必要があります。また、就業規則上では「育児・介護休業規程による」とし、別に育児・介護休業規程を定めている場合もあります。また、会社独自の育児・介護休業規程を作ることにより、現行の育児・介護休業法の要件を超えて、育児休業を取得させることも可能です。

正社員のみならず、パートタイマー、契約社員、派遣労働者等、雇用形態を問わず、原則として育児休業を取得することができます。

育児休業制度の背景

現在の日本では、男性の家事・育児時間は先進諸国と比べて短い状況にあります。その結果、女性に子育てや家事の負担がかかりすぎて、出産意欲の低下に影響しているといわれています。

夫婦ともに安心して子育てができる環境を整えることによって、育児や家事の負担を夫婦で分かちあうことが、「ワーク・ライフバランス」の調和を社会的に浸透させる結果となり、さらに出産後の継続就業の促進につながると考えられています。

近年、育児休業制度の拡充は社会的に注目を浴び、「イクメン」などの新しい流行語を生んでいます。政府も、「イクメン推進企業」は積極的に表彰したり、社内研修に関する資料を用意したりするなど、積極的に育児休業制度の充実に取り組んでいます。

育児休業制度の概要

育児休業制度は、育児・介護休業法の改正があるたびに、一定の条件を付して休業を取得できる期限が拡充されています。そのため制度が頻繁に変わり、わかりにくくなっています。まず、基本的な制度を見ていきましょう。(以下、一般的な政府発表の資料に従って、父母については「パパ」「ママ」と呼称します。)。

育児休業制度の基本

2020年現在、子が1歳に達するまで、1年間の連続した期間を限度として、パパ・ママは育児休業を取得できます。この時、ママは産後8週間の産休を取得することができるため、基本的にママの育児休業は8か月程度となります。

会社が1年間の期間について連続してなくても良い旨を就業規則に定めた場合には、何回かに分けて休業を取得することができます。

パパ休暇制度

ママが8週間の産休中に、パパが育児休業を取得した場合は、産休後にもう一度育児休業を取得することができます(連続している必要はありません)

パパ・ママ育休プラス制度

下記の条件を満たす場合には、子が1歳2か月に達するまでの間、育児休暇を取得することができます(つまり、取得できる期限が2か月間延長されます。)。

  1. 育児休業を取得しようとする労働者(以下「本人」)の配偶者が、子の1歳に達する日
    (1歳の誕生日の前日)以前において育児休業をしていること
  2. 本人の育児休業開始日が、子の1歳の誕生日以前であること
  3. 本人の育児休業開始日が、配偶者がしている育児休業の初日以降であること

育児休業が取得できる期間(女性の場合は、出生日以後の産前・産後休業期間含む。)については変わらず1年です。

育児休業期間の延長・再延長(平成29年改正)

1歳以降も保育園に入れないなどの特別な事情がある場合には、1年6か月まで育休取得期間を延長することができます。1年6か月以降も保育園に入れないなどの特別な事情がある場合には、さらに2年までの再延長が認められます。

育児と仕事の両立支援制度

育児と仕事を両立させるための制度は育休制度だけではありません。育休制度を実効的にするためにも、育児休業における不利益取扱いの禁止(男女雇用機会均等法第9条、育児・介護休業法第10条)、ハラスメントなどの防止措置(男女雇用機会均等法第11条、育児・介護休業法第25条)、転勤についての配慮義務、残業や時間外労働の制限(育児・介護休業法第10条)など、様々な制度が整備されています。

育児休暇との違いとは?

育休を「育児休暇」と表現する場合もありますが、「育児休業」と「育児休暇」に違いはあるのでしょうか?

育児・介護休業法第24条では、育児に参加する目的で利用できる休暇制度を設けることが、会社の努力義務とされています(育児目的休暇)。例えば、「出産時に立ち会いたい」、「子供の行事に参加したい」といった理由で休暇を取ることができる制度のことを指しています。育児目的休暇は法律上の努力義務にとどまるために、会社の社内規程に定められていなければ取得することができません。

一方、育児休業は育児・介護休業法第2条に基づく労働者の権利です。社内規程に定められていることが望ましいですが、規程に定められていなくても法律に基づいて取得が可能です。

こんなときどうする?育児休暇制度の実務上の問題

社内規程において育休制度を定めたとしても、総務・人事担当者は、実務上の個々の具体的な問題を一つ一つ解決していく必要があります。主な問題としては以下のようなものが挙げられるでしょう。

育児休業中の賃金についてはどうなるの?

育児休業期間中の賃金の支払いは、就業規則の定め方によって会社ごとに異なります。しかし、育休中、一切の収入が絶たれるとなると、だれも育休を取得しなくなるでしょう。

このハードルをなくすため、育休中賃金が支払われない、または一定以上減額される場合には、雇用保険から最高で月額67%が支給される「育児休業給付金」があります(180日以降分は50%)。

会社としては、育児休業給付金に加えて各種出産手当金や児童手当などの相談についても、精いっぱいサポートすべきでしょう。

社会保険料の免除

育児休業期間中は、社会保険料(健康保険、厚生年金保険)が本人負担、事業主負担分とも免除されるなど、政府も最大限のバックアップをしています。そのため、育休取得者から取得申請書を受け取った場合には、社会保険に関する手続きもスムーズに行う必要があります。

育児休業制度を取得できる環境の醸成

社内規程に育児休業制度を制定したとしても、誰も取得しなければ意味がありません。会社によっては、育児休業制度を取得しづらい雰囲気があるということもあるかもしれません。

そのような空気を打破するためには、役職者が積極的に活用する、総務・人事の担当者が社内勉強会を開催する、社内報で定期的に通知する、社内共有ファイル上で制度の概要がいつでも確認できる状態にしておくなど、社員、特に各部署の責任者に周知徹底を図る必要があります。また、実際に育休を取得した場合に、各部署内でどのようにサポートしていくのかをあらかじめ定めておき、日々の業務の変化に伴いブラッシュアップしていくことが求められます。

これは育児休業に関わらず、通常の年次有給休暇、介護休暇等にもかかわる問題です。総務・人事の担当者だけでなく、各部署の責任者は、育児休暇を軽く考えずに、男女問わず取得できるような雰囲気を醸成することが重要です。

会社は育児休業が人事評価、部署異動、あるいは社内の人間関係上不利にならないよう、人事制度全体を見直していくことも必要になります。

育児休業制度は会社の大きなアピールポイント

近年、「(女性が)働きやすい会社ランキング」、「共働き子育てしやすい企業ランキング」など育児介護を評点とするランキングを経済誌が発表しています。育児休業制度が充実した会社か否か、そして育児休業をためらわずに取得できる環境があるかという点は、女性のみならず男性にとっても注目すべきポイント
になっており、採用や離職率に影響を及ぼすことは間違いありません。

他社の取り組みに差をつけられぬよう、自社の大きなアピールポイントとなるよう、自社の育児休暇が現在の法令に適合したものとなっているか、社員にとって充分なものとなっているか、今一度チェックしてみてはいかがでしょうか?

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働き方改革サポ編集部
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