人事評価の評価項目の決め方|成果・能力・情意の3軸を職種と等級に合わせて配分する手順と、項目を絞る基準

この記事が役立ったら、シェアをお願いします。

人事評価の評価項目は、成果・能力・情意の3軸を等級と職種に合わせて配分し、評価者が事実を確認できる項目に絞って決めます。この記事では、3軸の違いと、等級・職種ごとの配分の考え方を整理します。あわせて、項目を絞る5つの基準と、決める6ステップを、厚生労働省の職業能力評価基準と人事院の枠組みに沿って解説します。評価シートの項目が多すぎる、曖昧だと感じている中小企業の人事責任者・経営者向けの内容です。

人事評価の評価項目とは?成果・能力・情意の3軸の違い

人事評価の評価項目とは、従業員の働きぶりを評価するときに、何を見るかをあらかじめ決めておく観点のことです。評価シートの1行1行にあたり、項目の選び方と並べ方で、評価の納得感も運用の手間も変わります。

実務では、項目を成果・能力・情意の3つの軸に分けて考える方法がよく使われます。3軸の違いは、次のとおりです。

軸 見るもの 項目の例 判断の根拠 注意点
成果評価 期初に決めた目標や役割に対する、達成の程度 売上・粗利の目標達成率、納期の遵守率、ミスの件数 数字、成果物 景気や担当顧客など、本人の努力以外の影響を受ける
能力評価 職務を遂行するために、実際に発揮した知識・技術・判断 業務知識、専門技能、課題の解決、後輩への指導 職務行動、等級ごとの要件 持っている能力ではなく、発揮した能力を見る
情意評価 仕事に向かう姿勢 責任感、規律性、協調性、積極性 日々の行動、勤務の状況 印象で決まりやすく、行動で書かないとぶれる

「成果・能力・情意」という3分類は、法令や公的資料が決めた用語ではなく、実務で広く使われている整理です。公的な例として、人事院は、国家公務員の人事評価を2つで構成すると説明しています。1つは、能力の発揮状況を見る「能力評価」です。もう1つは、役割を明確にしたうえで挙げた業績を見る「業績評価」です。どちらも、評価期間中の職務行動や業務の達成状況を評価基準に照らして、絶対評価で行うとされています。人事院のこのページには、情意評価という区分は出てきません。

情意を独立した軸として置くかどうかは、会社が決めてよい設計上の選択です。この記事は3軸で考える場合を基本にしつつ、軸を減らす判断も扱います。

成果・能力・情意の配分は、職種と等級でどう決めるか

配分は、等級が上がるほど成果の比重を上げ、数字で測りにくい職種ほど能力と行動の比重を上げる考え方で決めます。この比率に公的な正解はなく、自社で決める設計値です。

等級が上がると、見る軸が変わる

厚生労働省が2004年に公表した資料には、職業能力評価基準のレベル区分の目安があります。担当者に必要な能力水準(レベル1)から、組織・部門の責任者に必要な能力水準(レベル4)まで、4つのレベルです。

レベル 能力水準の目安
レベル1 担当者として、上司の指示・助言を踏まえて定例的業務を確実に遂行するために必要な能力水準
レベル2 グループやチームの中心メンバーとして、創意工夫を凝らして自主的な判断、改善、提案を行い遂行するために必要な能力水準
レベル3 方針を踏まえて管理運営・計画作成等を行い、企業利益を創出し遂行するために必要な能力水準
レベル4 広範かつ統合的な判断及び意思決定を行い、企業利益を先導・創造し遂行するために必要な能力水準

レベル1は、決まった仕事を確実にこなす段階です。個人の成果は数字で比べにくく、手順どおりにできるかという能力の評価が中心になります。レベル3以上は、方針を踏まえて計画を作り、組織として利益を出す役割です。成果の比重が高くなるのは、このためと整理できます。

この考え方で作った配分の例が、次の表です。公的な基準ではなく、設計の出発点として置く例です。

等級の目安 成果 能力 情意 配分の考え方
一般職(レベル1相当) 20% 50% 30% 目標の数字より、基本業務を正確にこなす力と、取り組みの姿勢を見る
中堅・リーダー(レベル2相当) 40% 40% 20% 自主的な改善と、担当範囲の成果を、同じ重さで見る
管理職(レベル3相当) 50% 40% 10% 部門の成果と、管理運営の行動を見る。姿勢は能力の行動基準に含める
部門責任者(レベル4相当) 60% 40% 0% 成果と判断力に絞る。情意は独立した項目にしない

職種によって、成果と能力の重みを変える

同じ等級でも、職種によって成果の測りやすさが違います。次の表は、傾向の例です。

職種 成果の測りやすさ 配分の傾向 項目の例
営業職 売上や粗利で測りやすい 成果を高める 売上目標の達成率、提案後の受注率
製造・現場職 品質・納期・安全で測れるが、個人の成果に分けにくい 能力(技能)を高め、成果は班や工程の指標を使う 不良率、作業手順の遵守、技能の習得段階
事務・管理部門 数字になりにくい 能力と行動を高める 処理の正確さ、期限内の完了、他部署への対応
専門職(技術・設計など) 成果物で測れるが、期間が長い 能力と成果をほぼ同じにする 成果物の品質、専門知識の活用、後進の育成

成果を数字にしにくい職種で、無理に成果の比重を上げると、数字に表れる部分だけが評価されます。その場合は、成果の軸を「期限内に完了した」「手戻りが出なかった」のような、確認できる事実に置き換えます。

評価結果の使い道によっても、軸の重みは変わります。賞与は期間の成果に連動させ、昇給や昇格は能力の積み上がりに連動させる設計もあります。結果を処遇につなぐ方法は、人事評価を昇給・賞与に反映する方法の記事で整理しています。

人事評価の評価項目の決め方|6ステップ

評価項目は、評価シートの様式から作り始めず、使い道、等級、仕事の順に決めます。この順で進めると、途中でやり直す手間が減ります。

ステップ1:評価結果の使い道を決める

最初に、評価の結果を何に使うかを決めます。賞与の配分、昇給額、昇格の判定、育成のどれを主にするかで、軸の重みが変わるためです。使い道を絞らないと、全部の軸を同じ重さで並べただけの、焦点のない評価シートができあがります。評価の目的を絞る考え方は、中小企業の人事評価制度、一から作るなら最初にやるべき3つのことでも解説しています。

ステップ2:等級を決める

項目は、等級ごとの役割が決まってから作ります。等級が曖昧なままだと、同じ「能力」の項目でも、一般職と管理職で求める水準が分からなくなるためです。等級の切り方は、等級制度の作り方の記事を参照してください。

ステップ3:職種ごとに仕事を書き出し、公的な基準から候補を拾う

職種ごとに、評価の対象にする仕事を書き出します。項目をゼロから考えず、厚生労働省の職業能力評価基準を候補集として使うと、作業が早く進みます。

職業能力評価基準とは、厚生労働省が公表している公的な基準のことです。仕事をこなすために必要な「知識」と「技術・技能」を、業種別、職種・職務別に整理しています。あわせて「成果につながる職務行動例(職務遂行能力)」も載せています。厚生労働省によると、平成14年度から整備が始まり、策定業種は56業種です。人材育成、採用、人事評価の場面で使えるとされています。

この基準は業界内の標準的な基準のため、各企業でカスタマイズして使うよう、厚生労働省が案内しています。全項目をそのまま評価シートに載せず、自社の仕事に合う行動例だけを拾います。

手元で使いやすいのは、職業能力評価シートです。職務遂行のための基準を簡略化した、チェック形式の評価シートです。事務系職種のほか16業種で、シート、キャリアマップ、導入・活用マニュアルが整備されています。本人と上司がそれぞれチェックすると、認識の違いが出ることがあります。その違いを面談で伝えると、本人の気づきにつなげられると、厚生労働省は説明しています。

ステップ4:3軸の配分を決める

前の章の表を出発点に、自社の等級と職種に合わせて配分を決めます。配分は、5%刻みなど粗い単位で十分です。比率を細かく決めても、評価者ごとの判断のぶれが、それを上回るためです。決めた配分は評価シートの先頭に書き、評価者と本人に共有します。

ステップ5:基準に照らして、項目を絞る

候補の項目は、次の章にある5つの基準で絞ります。足すより削るほうが難しいので、先に基準を決めておきます。

ステップ6:段階ごとの基準を行動で書き、1期試しに運用する

項目ごとに、3〜4段階の基準を書きます。「優れている」「普通」のような言葉は使いません。その段階で何ができているかを、見て確認できる行動や数字で書くのが原則です。職業能力評価基準が、能力を「成果につながる職務行動例」で整理しているのも、同じ考え方です。

書き終えたら、1期だけ試しに運用し、評価者ごとの甘辛を確認して、基準の言葉を直します。厚生労働省の企業事例には、ホテル業で評価者の目線合わせ会議を開いた取り組みがあります。進め方は、評価調整会議の進め方と、評価者研修の進め方で整理しています。

評価項目を絞る5つの基準

次の5つの基準に1つでも当てはまらない項目は、削るか、ほかの項目に統合します。

  1. 評価者が、評価期間中に事実を見ている項目か。見ていない項目は、印象で付けるしかありません。
  2. 処遇の判断に、差がつく項目か。全員が同じ段階になる項目は、評価シートの行が増えるだけです。
  3. ほかの項目と重なっていないか。「責任感」と「積極性」のように、同じ行動を別の言葉で見ていないかを確かめます。
  4. 段階の基準を、行動か数字で書けるか。書けない項目は、評価者ごとの解釈に任せるしかありません。
  5. その等級の役割に関係があるか。レベル1に求めない「部下の育成」などは、外してかまいません。

項目数は、1枚の評価シートで合計8〜12項目、各軸2〜5項目を目安にします。これは公的な基準ではなく、評価者が1人の評価にかけられる時間から考えた目安です。項目が15を超えると、評価者が項目ごとの事実を思い出しきれず、中間の段階に寄せて付けやすくなると考えます。

情意評価は、性格ではなく行動に絞る

情意評価は、項目が増えやすく、印象で付きやすい軸です。「責任感」「協調性」のような性格を表す言葉は、行動に置き換えます。置き換えられない項目は外します。

曖昧な項目を、行動と事実で書き直す例

項目の名前だけでは、評価者によって見る場面が変わります。次の表は、曖昧な項目を、確認できる行動や事実に書き直した例です。

軸 曖昧な項目 書き直した項目の例
成果 業績 期初に合意した売上目標に対する達成率
成果 仕事の質 担当業務の手戻り(やり直し)の件数
能力 業務知識 担当業務の手順を、マニュアルを見ずに一人で最後まで完了できる
能力 判断力 想定外の依頼に対して、選択肢を示して上司に相談できる
情意 積極性 期中に、業務改善の提案を文書で1件以上出している
情意 協調性 他部署からの依頼に、期限内に返答している

どれも例です。自社の仕事に合わせて、数字や期限を入れ替えてください。

ネクストプレナーズの見解

評価項目は、少ない数で始めて、運用しながら増やすほうがよいと考えます。項目が多いと、評価者の負担が重くなり、評価が形式的になりやすいためです。

よくある誤解は、3軸を揃えなければならないというものです。成果の数字を出しにくい職種や、軸を分けると運用が重くなる小規模の会社では、成果と能力の2軸に絞る設計も選べます。その場合は、姿勢に関わる内容を、能力の行動基準に入れる形をおすすめします。

つまずきやすい4つのポイント

  • 全員に同じ配分を使う。一般職と管理職で比重が同じだと、管理職の成果が評価に出ません。配分は等級ごとに変えます。
  • 性格を表す言葉で項目を作る。「明るい」「素直」のような項目は、評価者の好みで決まってしまいます。行動に書き換えてください。
  • 評価者が観察できない項目を入れる。他部署でのふるまいなど、上司が見ていない場面の項目は、外すか、事実の確認方法を決めておきます。
  • 決めた項目を見直さない。1期運用したら、全員が同じ段階になった項目や、評価者の判断が割れた項目を見直します。結果の伝え方は、人事評価のフィードバック面談の進め方を参照してください。

まず着手すること

最初の一歩は、いま使っている評価シートの項目を、成果・能力・情意の3列に仕分けることです。仕分けると、どの軸に項目が偏っているか、どの項目が重なっているかが見えます。そのうえで、5つの基準を使って項目を削ってください。

当社では、評価項目の設計から評価シートの作成まで支援しています。自社の職種や等級に合わせた配分で迷う場合は、ネクストプレナーズの人事評価のサービスにご相談ください。

本記事は公的機関の公表資料等を基にした一般的な情報です。個別の制度設計・手続きは専門家にご確認ください。

監修

監修:仙頭 武宏(株式会社ネクストプレナーズ 代表取締役社長)

東京工業大学(現・東京科学大学)工学部制御システム工学科卒業。日本オラクル株式会社でエンジニア、コンサルタントを経て経営企画室マネージャを務める。一橋大学大学院商学研究科(現・一橋ビジネススクール)経営学修士(MBA)修了。独立コンサルタントを経て、2012年より株式会社ネクストプレナーズ代表取締役社長。

プロフィールを見る

よくある質問

Q. 人事評価の評価項目は、いくつに絞ればよいですか?

1枚の評価シートで合計8〜12項目、各軸2〜5項目を目安にします。公的な決まりはなく、評価者が1人ひとりの事実を思い出せる範囲に収めるための目安です。絞るときは、評価期間中に事実を見ているか、処遇の判断に差がつくか、ほかの項目と重ならないかなどの基準で選びます。

Q. 成果評価・能力評価・情意評価の配分は、どう決めればよいですか?

等級と職種で決めます。基本は、等級が上がるほど成果の比重を上げ、成果を数字で測りにくい職種ほど能力と行動の比重を上げる考え方です。たとえば、一般職は成果20%・能力50%・情意30%、管理職は成果50%・能力40%・情意10%から始めます。1期運用してから調整してください。公的な正解はありません。

Q. 情意評価は、設けなくてもよいですか?

設けるかどうかは、会社が決められます。確認した公的資料の範囲では、情意評価を設けるよう求めるものは見当たりません。人事院の説明では、国家公務員の人事評価は、能力評価と業績評価の2つで構成されています。姿勢に関わる内容は、能力評価の行動基準に含める方法もあります。

Q. 評価項目を決めるときに使える公的な基準はありますか?

厚生労働省の職業能力評価基準があります。仕事をこなすために必要な知識と技術・技能に加えて、成果につながる職務行動例を、業種別、職種・職務別に整理したものです。策定業種は56業種あります。業界内の標準的な基準のため、自社の仕事に合わせてカスタマイズして使います。

Q. 職種が違っても、同じ評価シートを使ってよいですか?

項目の一部は共通にできますが、全部を同じにすることはおすすめしません。成果や能力の項目は、職種によって仕事の中身が違うためです。共通で使う項目と、職種ごとに入れ替える項目を分けて作ると、運用の手間を抑えられます。厚生労働省の職業能力評価基準も、職種・職務別に整理されています。

Q. 評価項目は、作ったあとにどう見直せばよいですか?

1期運用したあとに、結果を見て見直します。次の項目は、削るか、基準の言葉を直す候補です。全員が同じ段階になった項目、評価者の判断が割れた項目、事実を確認できなかった項目です。評価者の目線合わせの会議を開くと、判断が割れた理由も確認できます。

出典・参考資料

The following two tabs change content below.
投稿者アバター
人事ブログ編集部
株式会社ネクストプレナーズの編集部です。賃金・報酬、人事評価、福利厚生、社宅、退職金・企業年金、労働組合など、人と制度に関する実務情報をお届けしています。

制度づくりのご相談

賃金・人事評価・福利厚生・社宅・退職金などの見直しについて、専門のコンサルタントにご相談いただけます。労働組合からのご相談にも対応しています。

無料相談資料請求

この記事が役立ったら、シェアをお願いします。