【解説】「サバティカル休暇」が注目される背景とは|メリット・デメリットと導入事例も紹介

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PCスーツケースパスポート - 【解説】「サバティカル休暇」が注目される背景とは|メリット・デメリットと導入事例も紹介コロナ禍でより一層働き方の多様化が進む中、欧米・欧州を中心に導入の進む「サバティカル休暇」が日本においても注目を集めています。

今回は「サバティカル休暇」の概要と注目される背景、メリット・デメリットについて解説するとともに、国内における導入事例についても紹介していきます。

概要

概要

「サバティカル休暇」とは、主に一定期間勤続した従業員を対象に、約1か月~1年程度(長ければ2年程度にもわたる)、利用目的を定めない長期休暇を与えるという福利厚生制度です。

「サバティカル休暇」は、企業に提供義務のない法定外福利厚生(特別休暇)の一種であるため、導入するか否かは企業により異なり、また付与日数や有給・無給、何年以上勤続の従業員を対象とするかなどの細かい制度内容についても企業に委ねられています。

背景

サバティカル休暇の起源

サバティカル休暇の起源は、1880年にアメリカのハーバード大学の教授に付与された、教授自身の研究のための長期休暇であるとされています。

元は大学教授のための制度でしたが、その後大学のみならず一般企業でも導入が進み、今では日本を含め世界的に注目されています。

欧州におけるサバティカル休暇

中でもヨーロッパでは日本に比べ休暇の取得が進んでいます。

例えばフランスでは1936年に、全ての労働者に2週間の有給休暇の取得を義務づける法律(バカンス法)が制定され、フランス国内の全従業員が長期休暇を取得しています。

サバティカル休暇についても、現勤め先における勤続年数が3年以上且つ通算勤務年数が6年以上で、過去6か月の間に長期休暇を利用していない従業員に対し、6か月~11か月の休暇を取得できるとしています。

フランスに限らず、休暇の取得に積極的な傾向にあるヨーロッパの企業ではサバティカル休暇もスムーズに浸透し、広く採用されています。

日本におけるサバティカル休暇

一方、日本企業においては導入がそれほど進んでいません

それは、日本では未だに終身雇用制の頃の「従業員は企業に尽くすべき」という風潮や考え方が根強く残っていたり、(他の従業員への影響や自身の業務量、周りの目、罪悪感など様々な理由により)休暇、とりわけ長期休暇を取りづらいと考えていたりする企業・従業員が多いためです。

しかし、昨今においては政府が主導で長時間労働の是正や働き方改革、社会人の学び直しを推進する中で、長期休暇の有用性が注目されるようになってきました

サバティカル休暇についても経済産業省が導入を勧めており、2018年に経済産業省の報告書(※)内でリカレント教育推進策のひとつとして挙げられています
(※) 「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」(人材力研究会)報告書

メリット

経産省も勧めるサバティカル休暇には次のようなメリットがあります。

長時間労働の是正

サバティカル休暇は概要の章で述べた通り、一定期間勤続した従業員に対して与えることが一般的な休暇です。

日本企業では、勤続年数の長い従業員ほど責任のある業務に就いており、長時間労働が常態化しているケースも少なくありません。

そのような従業員に対してサバティカル休暇を与えることにより、長時間労働を是正し、ワークライフバランスの向上を図ることができます。

また、サバティカル休暇の取得に伴い業務の引き継ぎなども行う必要が出てくるため、業務の棚卸をすると同時に属人化を防ぐという効果もあります。

離職防止

出産・育児や介護、病気療養などで一定期間仕事から離れざるを得なくなった従業員に、法律で定められている休業と併せてサバティカル休暇を利用してもらうことにより、それらを理由とした退職者数を減らすことができます。

その他にも、何かにチャレンジしたり、特別な経験を得たりするために時間が必要で退職を考えている従業員が、退職ではなくサバティカル休暇の取得を選択できるようになることは、企業・従業員双方にとってメリットであると言えるでしょう。

また、日本においてはまだサバティカル休暇を導入している企業が少ないため、採用募集時のアピールとなり、優秀な人材の確保にも繋がります。

従業員のスキルアップ

サバティカル休暇は目的を定めない、つまり休暇中の従業員の行動にも制限を設けない制度ですが、長期間の休暇となると普段の短い休みでは経験できないことをするという方も比較的多くいることが予想されます。

中には、留学をしたり、資格を取得したりして自らのスキル等を磨く機会とする従業員もいるでしょう。
長期休暇中に培った経験やスキルが企業に戻った際にも活かされることが予想され、プラスとなることが見込めます。

他にも、旅行などで気分転換をしたり、しっかり休んでリフレッシュしたりすることで仕事に対するモチベーションを上げ、高パフォーマンスを発揮できる状態で職場に復帰するというような使い方もできます。

デメリット

一方で、サバティカル休暇には次のようなデメリットも存在します。

業務の停滞・他の従業員の業務量増加

サバティカル休暇は、その性質から、業務の停滞や休暇を取得している人以外の業務の増加等のデメリットがあります。

サバティカル休暇では一定以上勤続している従業員が比較的長期間休暇を取得するため、残された現場が混乱してしまったり、休職中の従業員と同じように捌き切れずに業務が停滞してしまったりする恐れがあります。

また、そもそも業務が属人的だったりする場合には、休暇に入る前の引継ぎに時間を要す可能性もあります。

とりわけ人的リソースに余裕のない企業においては、対象の従業員が休暇に入った場合の影響と対策を充分に検討・調整してから取得してもらう必要があります。

従業員が取得しづらいと思ってしまうような要因を予め取り除くことが重要です。

職場復帰拒否・離職の可能性

これはメリットとの裏返しになりますが、サバティカル休暇取得後の従業員は様々な経験をしたり心身ともにリフレッシュしたりしている状態です。

その経験の中で、価値観が変容することや、今までの環境等に対する不満が現れることも考えられ、そのような場合、休暇後に復帰せずにそのまま離職してしまうリスクがあります

そのようなリスクを低減するため、復帰後に以前と大きく変わらない業務に戻れるよう準備しておいたり人間関係の修復・構築のフォローをしたりなど、従業員が職場に復帰しやすい体制を十分に整え、また休暇を取得する従業員にその旨を知らせておくことが望ましいです。

給与が支払われない場合がある(従業員のデメリット)

サバティカル休暇については、有給とするか無給とするかは企業に委ねられています。

完全無給の企業、一定額支給される企業のほか、目的に照らして手当が支給される企業や、有休休暇を充てたり組み合わせたりすることができる企業など対応は様々ですが、休暇期間中の給与を全額支給するという企業は少ないでしょう。

また、無給期間中も社会保険料を従業員負担のままとするところもあり、従業員にとっては痛手となることが予想されます。

日本における導入事例

カレンダー - 【解説】「サバティカル休暇」が注目される背景とは|メリット・デメリットと導入事例も紹介サバティカル休暇は制度詳細の決定が各企業に委ねられているため、新たに導入を検討する際には他社の導入事例が参考になります。

ここでは日本における導入事例を紹介します。

ヤフー株式会社

ヤフー株式会社では、2013年という早い段階からサバティカル休暇を導入しています。

10年以上勤続している従業員を対象に、最短2か月・最長3か月間の休暇が付与されます。

なお、休暇中は「休暇支援金」として基準給与1か月分が取得者に支給される他、サバティカル休暇を有給休暇と一緒に取得することも可能としており、その場合は更に一定額の給与が支払われる制度となっています。

※参考:ヤフー株式会社・Yahoo! JAPAN、最長3ヶ月の長期休暇を取得できる「サバティカル制度」の導入を開始

ソニー株式会社

ソニー株式会社では、2015年から、取得の目的により最長2年~5年の休暇を取得できる「フレキシブルキャリア休職制度」と呼ばれる制度を導入しています。

同制度には2種類あり、1つが配偶者の海外赴任や留学に同行して知見や語学・コミュニケーション能力の向上を図るための休職で、付与日数は最長5年です。

もう1つが、専門性を深化・拡大させる私費就学のための休職で、付与日数は最長2年です。
無給休暇ですが、休暇中の社会保険料は企業が負担します。

なお、後者の場合は修学にかかる初期費用を最大50万円まで企業が負担しています。

※参考:ソニー株式会社・多様性を推進する取り組み
CHANT WEB・社外での経験がイノベーションをもたらす!ソニーが取り組むユニークな休職制度

株式会社ファインデックス

株式会社ファインデックスでは、2018年から、10年勤続毎に最長6か月の休暇を取得できる制度を導入しています。

休暇中は基本給の3割が支給されるほか、取得後は取得前と同じ条件で職場に復帰することができる制度となっています。

加えて、競業企業でなければ他社で就業することも可能としています。

※参考:株式会社ファインデックス・サバティカル休暇制度を導入

まとめ

以上、今回はサバティカル休暇の概要と注目される背景、メリット・デメリット及び国内における導入事例について解説・紹介してきました。

サバティカル休暇は従業員の学び直しやリフレッシュに有効で、企業にとってもメリットのある制度ですが、休暇の取得が十分に進んでいない日本においては、導入にあたる課題が多い制度であると言えます。

導入の際は自社で導入する場合の影響とそれに対する対策を十分に検討し、従業員が休暇を取得しやすい環境づくりをしておくことが必要です。

もしサバティカル休暇を付与した場合の業務体制などに不安があるという場合は、サバティカル休暇の導入を検討する前に、業務体制や業務量、業務効率などの見直しから始めてみることをお勧めします。

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働き方改革サポ編集部
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