【解説】住宅に関連した福利厚生制度の種類と概要

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マンション2 - 【解説】住宅に関連した福利厚生制度の種類と概要

住宅に関する福利厚生制度は、従業員からの人気が高く、規模を問わず導入している企業が多い、メジャーな福利厚生制度のうちのひとつです。

今回は住宅に関連した福利厚生制度の種類及びその概要と、それぞれの制度のメリット・デメリットについて解説します。

住宅関連の福利厚生の種類と概要

住宅に関する福利厚生は大きく分けて

①住宅手当(現金支給)
②社宅(現物支給)

の2種類があります。まずはそれぞれについて概要を解説します。

住宅手当(現金支給)

■支給の目的

住宅手当とは、企業が福利厚生の一種として行う補助金制度で、従業員の住宅にかかる費用の一部を補助してもらえるものです。
法定外の福利厚生であるため、導入するか否かは勿論、支給の条件や支給額、支給方法なども企業によって異なります。

■対象者と支給条件

一般的には従業員の家賃補助を目的としている制度設計が多いですが、持家の方にも支給するケースもあります。持家の方に支給する場合は住宅ローンの費用を一部負担するという意味合いを持ちます。

その他、雇用形態や家族構成などで一定の支給条件を設けて支給するケースもあり、支給の対象者の範囲と、対象者の中での金額の設定や設計によって、住宅手当のもつ意味合いがかわる制度です。

■金額等

上記のように、会社によってその目的や制度設計が異なりますので、当然ですが住宅手当の支給額も会社によって異なります。
あるデータによると、 支給金額はひとりあたり平均1.7万円程度となっています。
※参考:平成27年就労条件総合調査結果の概況

■支給方法

住宅手当は給与と一緒に支払われますので、所得税や住民税、社会保険料がかかります。

社宅(現物支給)

社宅とは、企業が従業員に居住用の住宅を貸し出す福利厚生制度です。
社宅には社有社宅と借り上げ社宅の2種類があり、大きな違いは貸し出す住宅が企業所有のものか、企業が借り上げているものかという点にあります。

社有社宅

社有社宅とは、企業が所有している不動産を社宅として社員に提供する制度です。
不動産資産として扱えるわけですから、バブルの頃は大企業が土地や建物を所有して、社有社宅として活用する企業も数多くあったようで、現在も建物を一棟丸ごと社宅として提供しているケースが多いのはこういった背景があるようです。

しかし、バブル崩壊後は不動産価格が低迷しており、不景気で会社の体力も弱まっていくため、社有社宅を手放した会社も多かったそうです。
バブル崩壊で不動産資産の売却を進めた企業は、社有社宅を手放す際に、社宅制度自体を廃止したり、借上げ制度や住宅手当に切り替えたりすることなどを選択していきました。

一方で、社有社宅は大企業を中心に継続はしておりますが、バブルから30年以上経過しているため、社宅の老朽化、ライフスタルの変化による間取りや立地の不便さなどの課題が浮き彫りになりつつあります。そのため、社宅制度の見直しをとおして借り上げ社宅に切り替えを検討する大企業も徐々に増えています。

借り上げ社宅

借り上げ社宅とは、物件オーナーや不動産会社などから企業が法人名義で賃貸住宅を借りて従業員に貸し出す形式の社宅制度です。
企業は社宅として提供する物件を部屋ごとに借り上げるか建物一棟を借り上げるか選択することが可能ですが、多くの場合は部屋ごとに借り上げる形を採用しています。

それぞれの制度のメリット・デメリット

アパート - 【解説】住宅に関連した福利厚生制度の種類と概要

これらの住宅関連制度のうち、どの制度を採用すべきかについては企業によって異なります。そこで、以下ではそれぞれの制度のメリット、デメリットを紹介します。

住宅手当

メリット

(従業員)柔軟な住まいの選択ができる

社有社宅や借上げ社宅に比べると、物件の立地や間取りなどをライフスタイルに合わせて柔軟に選択できるのは従業員にとってはうれしいメリットでしょう。
また、住宅手当は給与に上乗せされて支給されますので、所得をどう分配するか(住居にお金をかけたい方や、逆に住宅ではなく違うものにお金をかけたい方もいる)という価値観の違いにも対応することができます。

(企業)担当部署の手間がかからない

住宅手当のメリットは、なんといっても社宅の管理をする必要がない点が挙げられます。
契約や家賃の支払いなどのやりとりは従業員が行うため、担当部署の管理コストはほぼありません。

デメリット

(従業員)社会保険料や税金の負担が増加する

住宅手当のデメリットとして、社会保険料や税金が掛かるため、従業員にとっては実質的に受け取れる金額が7割前後くらいまで減少してしまう点が挙げられます。企業にとっては支払う金額が手当額+社会保険料になるため負担額が増加します。

(企業)法定福利費が増える

住宅手当を支給すると企業負担分の社会保険料が増額しますので、法定福利費が増えます。

(企業)住宅手当は制度廃止がしにくい

法定福利費が増額するなどデメリットはありつつも、住宅手当は管理の手間が少ないことや、現金支給の手軽さから、導入検討する企業も多いのが現実です。

住宅手当を支給するかどうかは企業の自由です。当然ですが支給しなくても違法とはなりません。ただし、これまで支給していた住宅手当を廃止する場合には、『労働条件の不利益変更』の問題が生じます。廃止をする場合には、従業員の同意を得た上で行うことが必要ですし、強引にやってしまうと、労使トラブルの原因にもなりかねません。
また、昨今の働き方改革による同一労働同一賃金の対応などもあります。

住宅手当は制度として設立しやすい、付与しやすい一方で、一度支給すると廃止がしにくい点は注意が必要です。

社有社宅

メリット

(従業員)安価な費用負担で借りることができる

社有社宅のメリットとして、比較的安価な費用で利用ができる点があります。
会社が保有する不動産を従業員に貸し出すわけですから、従業員から家賃を徴収するか否かは会社の自由です。仮に家賃を無料にすれば従業員の家賃負担はなくなりますので、従業員のメリットと言えます。
社有社宅の立地や設備など不動産としての価値が高く、会社の家賃徴収が少なければ、さらに従業員の満足度が高くなるでしょう。

(企業)社宅が企業の資産となる

社宅用に所有している土地や建物は企業の資産となります。また、従業員から家賃を徴収する場合は、家賃収入を得ることも可能です。

デメリット

(従業員)住まいの選択が限定される

社有社宅では一棟まるごと社宅として提供していることが多いため、同じ建物に住んでいる人は全員同じ企業に勤める人(及びその家族)である環境となります。従業員にとっては、それぞれが持っているニーズや価値観の選択が限定される、というデメリットがあります。

(企業)初期費用の負担が大きい

企業にとっての社有社宅のデメリットは、初期費用の負担が大きいという点です。土地の購入費用や建物の建築費用には高い費用が必要となります。大企業ほど保有率が高いのもそのためです。

(企業)固定資産税など金銭コストが継続してかかる

社有社宅では企業が所有しているため管理や修繕等も企業が行う必要があり、また土地や建物が企業の資産であるため固定資産税がかかります。

借り上げ社宅

メリット

(従業員)契約時の事務手続きの負担が減る

借上げ社宅の場合、会社が法人として賃貸契約を行うため、契約に係る手続きや家賃支払いなどは企業が行います。そのため従業員にとっては手続の負担が軽減ができます。

(従業員)住宅の選択肢が増える

企業によっては、一棟借上げて社有社宅のように提供するケースもありますが、従業員が選んだ物件を社宅として企業が借り上げる方法もあります。後者の場合は、すでに物件がある社有社宅と比べて、複数の候補から自分のライフプランや家族構成にあった立地や間取りの物件を選択することができるため、従業員にメリットがあるといえるでしょう。

(従業員)手当でもらうよりも税金や社会保険料の増加が少ない

手当のように給与に上乗せして現金で受け取ると、手当分が給与額の増加となりますから、税金と社会保険料が引かれます。借上げ社宅として現物で会社が補助をする場合は、現金支給よりも引かれる金額が少なくなりますから、借り上げ社宅のような現物のほうが税金や社会保険料がお得になります。

(企業)不動産の初期投資や固定資産税等の支出が抑えられる

借上げ社宅の場合、賃貸契約を法人が行いますので、敷金や礼金等を支払う必要はあるものの、社有社宅に比べて不動産購入の初期費用や、管理・維持、修繕等、固定資産税等の負担が少ない点がメリットと言えます。

(企業) 手当で支払うよりも法定福利費の増加を抑えられる

手当のように給与に上乗せして現金で支給すると、人件費が増加しますので社会保険料の負担がその分増えますが、借上げ社宅として現物で会社が補助をする場合は、現金支給よりも社会保険料額が抑えられるメリットがあります。

デメリット

(従業員)企業の定めた条件に合う部屋を選ぶ必要がある

従業員側にとってのデメリットとしては、企業の定めた条件に合致する部屋を選ぶ必要がある(完全に自由に選べるわけではない)という点があります。社有社宅よりは選択肢が広いですが、社宅として企業が貸し出す以上、ある程度の条件が課されることが一般的です。

(企業)賃貸契約や社宅物件管理事務の手間が増える

法人が借主となりますので、保有する社宅物件の分だけ契約作業が発生します。契約の更新や退職に伴う退居などが発生するたびに契約作業が発生しますし、毎月の家賃や初期費用、更新料の支払いなども会社が行います。契約手続きや支払手続きなど事務的な手間も増えるため、保有戸数によっては、専任の担当者を複数配置したり、アウトソーシングを利用したりすることもあります。

(企業)現物計算が発生する

借上げ社宅は、税金や社会保険料の計算においては現物支給に該当しますので、現物計算を企業が行う必要がありますから、給与計算の事務作業が増えることになります。

(企業)借主リスクが発生する

借り上げ社宅は法人契約であるため、入居者である従業員の事故やトラブルや原状回復を巡るトラブルといったリスクが発生した場合、借主として対応することになります。

(企業)敷金等の負担が発生する

敷金などの預入金が発生しますのでその管理や回収などを自社で行う必要があります。

このように借り上げ社宅では契約周りの手続きや賃料、敷金、礼金等の支払いは企業が行うことになるため、企業にとっては住宅手当や社有社宅などの原則社内で完結する制度と比較すると手続き的な負担が増加するとともに、トラブルなどがあった場合は企業が間に入って対応しなければならない場合がある等のリスクもあるため、社宅の代行会社などを利用することも多いですが、代行会社を利用した場合、結果的にコストが増えることになります。

まとめ

今回は、福利厚生のなかでも住宅に係わる補助制度ついて紹介してきました。
それぞれの制度について一般的なメリット・デメリットを纏めましたが、企業様の状況によって、メリット・デメリットも変わる可能性もあり、一概にこの制度が良いとはいえません。

そのため企業の社宅担当者様は、住宅の補助の方法について、悩まれるかと思います。
制度を導入したり見直したりすることで何が変わってくる可能性があるのかという点をしっかりと確認しておくには専門のサポートが不可欠です。

また、コストを抑えた社宅制度を導入する方法もございますので気になることがございましたらお気軽にお問い合わせください。

「これを機に社宅制度自体を見直したいが相談できるか?」
「負担増なしに制度を継続、またはよりよくする方法はあるか?」
などのご質問も無料で承っております。

▼ネクストプレナーズの選択制借り上げ社宅制度
https://www.syataku.nextpreneurs.com/

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