【解説】福利厚生とは?概要や種類

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法定福利厚生2 - 【解説】福利厚生とは?概要や種類

福利厚生とは、企業が従業員に提供する「給料以外の報酬」の総称です。

従業員のニーズに合った福利厚生を導入することにより、従業員の満足度が上がる、勤労意欲が高まる、優秀な人材を確保できるなど、さまざまな効果が期待できます。
福利厚生の種類は多岐に渡りますが、最近では珍しい種類の福利厚生を導入する企業も増えてきています。
今回はそんな福利厚生全体の、概要と種類について解説します。

概要

福利厚生とは、企業が従業員に提供する「給料以外の報酬」の総称を指します。

<目的>

福利厚生は、もともと従業員の生活を安定させるために、金銭である給与を補完する目的で支給された非金銭報酬でした。

しかし、国民全体の生活の質の向上や終身雇用の崩壊に伴い、福利厚生の目的は離職率の防止等の方に重きをおかれるようになりました。

従前からある通勤費や住宅関連手当や慶弔金などのほか、最近では数多くの種類、企業の独自性の高い福利厚生が出てきています。
それらすべての目的は従業員満足度の向上と、それにより勤労意欲を高めること、そして離職率を低下させることを目的としており、給料以外の報酬により、経済的のみならず精神的にも従業員のサポートや支援をおこなうことで、目的を達成することができると考えられています。

また、福利厚生を充実させることで、労働環境や条件、従業員の私生活の質を向上させ、ワークライフバランスの改善につなげることも可能です。
採用難の続く昨今においては福利厚生の充実をアピールすることは採用力や企業イメージの向上にも効果的です。

このように福利厚生の目的は、時代とともにまた企業のおかれている状況により変化してきました。

<対象>

福利厚生の対象者は正規雇用者だけでなく、有期雇用者も含めたすべての労働者です。

2020年4月1日のパートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)の施行前には、企業によっては福利厚生は正社員のみが対象、つまりパートタイム労働者や契約社員などの有期雇用労働者は福利厚生の対象外とされ、給料以外の面での差が生まれていました。

しかし、パートタイム・有期雇用労働法が施行されたことにより、正規雇用労働者とパートタイム労働者、有期雇用労働者との間に不合理な差を設けることが禁止されました(パートタイム・有期雇用労働法8条以下)。
この所謂「同一労働同一賃金」により、企業は基本給や賞与をはじめとした金銭的報酬だけでなく、各種手当や福利厚生についての格差を排除し、対象を従業員全体にする必要があるということです。

福利厚生の歴史

福利厚生4 - 【解説】福利厚生とは?概要や種類

福利厚生の起源は明治時代にまでさかのぼります。
「文明開化」「富国強兵」が叫ばれていた当時、労働者は低賃金で鉱山、製鉄所や紡績工場など過密で過酷な環境で働かされていました。
当然のことながら逃げ出す従業員や病気になってしまう従業員も多くおり、またそのような職場は労働者から避けられていました。
いくら労働人口が高いとはいえ、このような労働者の使い捨てでは産業発展の妨げ、国力の低下は避けられず、国としても会社(経営者)に従業員を守る責任を求めました。
これが福利厚生の始まりとなりました。

労働者の衣食住の支援から始まり、第一次世界大戦の特需景気やその後の世界恐慌、大正デモクラシーによる民主主義の発展により、労働者側のストライキなどがおこなわれたため、大企業が率先して「休暇制度」「退職金」などを導入し始めました。
そうした流れのなかで、労働者の地位が強くなり、大企業に限らず、多くの企業で福利厚生が導入されるようになり、第二次世界大戦終戦後には国としても制度化しました。

その後、日本では1950年代から1970年代までの高度経済成長期、990年代前半までのバブル経済を迎えることになり、福利厚生にかける費用も多くなり、豪華な設置物や高額なサービスなどが提供されました。
しかしバブル崩壊後現在では少子高齢化や社会保障の問題から、福利厚生は費用縮小や削減の傾向が高まっています。

福利厚生の種類

福利厚生には、大きく分けて
・法定福利厚生
・法定外福利厚生

の2種類があります。

法定福利厚生

「法定福利厚生」は法律によって企業が必ず設けなければならないと規定されているもので、運用の主体は、国や、運用代行を法律によって認められた健康保険組合・共済組合です。
提供する福利厚生の内容は、労働者とその家族の生活の安定を目的とした社会保障制度に関わるものです。

具体的には、
・健康保険
・厚生年金保険
・介護保険(40歳以上の人が加入)
・労災保険
・雇用保険

の各種社会保険のうち、事業主が負担する部分を指します。

各種保険料は労働者がすべての金額を負担しているわけではなく、健康保険、介護保険、厚生年金保険は労使折半、労災保険は全額事業主負担、雇用保険料は会社負担>労働者負担で納付しています。
その会社が負担する部分が「法定福利厚生」にあたるということです。(ただし、会社により会社負担分を多く支払い雇用者側を低くすることがあります。)

そのほかにも、児童手当拠出金や労働基準法に基づく災害補償費用などがありますが、大まかには「従業員と会社が折半するものが法定福利制度である」といえます。

法定外福利厚生

他方、「法定外福利厚生」は、法定福利厚生とはちがい、企業が任意で導入を決めることができるものです。
また、導入する場合の内容も法律で定められていないため、企業ごとに自由に選定することができます。

法定外福利厚生には、企業が自社内でおこなうものと、外部に委託しておこなうものがあります。

法定外福利厚生の内容としては、
・企業年金
・住宅手当
・通勤手当
・特別休暇制度
などが一般的ですが、会社内保育所や出産報償金など自社の特徴を出すことができます。

法定外福利厚生の詳細

福利厚生3 - 【解説】福利厚生とは?概要や種類

法定外福利厚生には数多くの種類がありますが、ここではよく見かける以下10種の福利厚生を紹介します。

・住宅手当、社宅
・通勤手当
・慶弔・災害関連手当
・医療・保健手当
・自己啓発手当
・特別休暇制度
・社員旅行・レクリエーション
・財産形成
・育児・介護関連制度
・カフェテリアプラン

企業年金についての解説は、以下の記事をご覧ください。

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・住宅手当、社宅

住宅関連の福利厚生は、数ある福利厚生の中でも、企業年金に続いて従業員からの人気の高い制度です。
特に生活費における住宅費割合が高い首都圏では人気です。住宅手当や住宅ローンの補助などの手当支給のほか、社宅や寮などの提供もその一つです。

なお、社宅として認められるには、
・ 社宅家賃規定を作成すること
・ 賃貸借契約書を保存すること
・ 会社が住宅の契約をすること
・ 家賃の個人負担分は給与から天引きすること
の4点が必要になります。

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・通勤手当

通勤手当は、自宅から会社への交通費を支給する制度で、殆どの会社が導入している福利厚生です。
電車やバス等の定期代をはじめ、企業によってはマイカーや自転車などの駐車場・駐輪場代や、ガソリン代等を支給している場合もあります。

・慶弔・災害関連手当

結婚祝い金や出産祝い金などの慶事、そして傷病見舞金や災害見舞金などの弔事などに適用されるものです。
最近では誕生日祝い金や家族の誕生日にケーキを送るなど、より従業員の生活を豊かにするための制度を導入する企業も増えています。
社員にとって会社からこういった制度を与えられることは、とてもありがたいと感じるため、会社から大切にされているという意識が高まることが多くあります。

・医療・保健関連手当

健康診断、予防接種補助やメンタルヘルスケアなど、健康や医療に関するものです。
近年では肉体的なことだけではなく、精神的なケアも重要になっており、この制度の充実は会社への帰属意識や定着率の向上にも寄与するといえるでしょう。

なお、健康診断を福利厚生に含めるためには、
・ 全役員・従業員を健康診断の対象者とすること
・ 健康管理上必要とされる程度の常識の範囲内の費用であること
・ 健康診断を受けた全員分の費用を会社が負担するこ
という条件が必要になります。

・自己啓発手当

各種セミナーの参加費用の補助、学習に関する書籍や雑誌の購入の補助、通信教育などの資格取得の費用の補助を指します。
従業員も自己啓発への意識が高まる傾向にあり、人気が高まっている内容のひとつです。
企業としても従業員がセミナーへの参加や、資格取得により能力を向上することで、生産性の向上などのメリットがあります。

・特別休暇制度

永続勤労だけでなく、誕生日や結婚記念日などに休暇(特別休暇)を取得できる制度です。
他にも会社設立のアニバーサリー記念や、長期にわたり勤務を続けた場合に与える永年勤続休暇などがあります。
こうした休暇を与えることで、リフレッシュにもなり、社員のモチベーションや生産性向上を期待することができます。

・育児・介護関連制度

育児休暇や時短勤務制度、介護休業などを指します。近年では共働き世帯が増えていることもあり、導入する企業が増えてきました。
国としても政策に力を入れているところであり、働きやすさに直結するため、職場環境によっては導入を考えると良いでしょう。
「全社員が利用できること」が福利厚生としての条件になります。

・レクリエーション関連

サークル運営の補助費、懇親会の補助費など、従業員同士の懇親を目的とした社内行事に関する制度です。
ただし、利用する社員が限定的であるため、若手中心の利用になりがちであります。

・財産形成関連

財形貯蓄制度や、持株会、住宅購入積立、学資積立などへの補助をする制度です。本制度は、従業員個人の長期在職を見据えた資産形成を可能にするものになります。

・カフェテリアプラン

カフェテリアプランとは、様々な福利厚生の中から、従業員自身が利用したい福利厚生を個々で選択できる形の福利厚生制度です。
企業が従業員に対して福利厚生に利用するためのポイントを付与し、従業員はそのポイントを自身の利用したい福利厚生に使用します。
その自由度の高さから、人によって使わない、必要な人が限られているような内容の福利厚生も、カフェテリアプランであれば不平等感なく必要な人に利用してもらえるというメリットがあります。

まとめ

福利厚生は従業員満足度の向上や、それに伴った生産性の向上が目的です。
他方で財政負担の問題から徐々に費用を削減する傾向にあります。したがって、福利厚生の費用対効果を見定める必要があります。

会社は従業員あってこそのものなので、自社の従業員のニーズや労働環境を考え、どの制度を導入するのがベストなのか、環境等の変化に合わせて検討していく必要があります。
従業員満足度の向上や生産性の向上を達成できる福利厚生を導入しましょう。

なお、福利厚生については、他にもテーマ別に解説していますので、併せてご確認ください。

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働き方改革サポ編集部
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