【解説】ノーレイティングとは?注目される理由やメリット・デメリットを紹介

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フィードバック - 【解説】ノーレイティングとは?注目される理由やメリット・デメリットを紹介

ノーレイティングとは、一言で言うと「従業員をランク付けしない」評価制度です。

カルビー株式会社や日本マイクロソフト、Adobe Systemsなどの有名な大企業が導入していること等の理由により注目を集めているノーレイティングですが、一部では「評価を行わない制度」と勘違いされている場合もあり、内容については詳しく知らないという人事ご担当者様も多いようです。

そこで今回はノーレイティングの概要と注目される背景、メリット・デメリットについて解説します。

概要

ノーレイティングとは、従業員の業績をランク付け(レイティング)せず、上司が日々のコミュニケーションや定期的な面談・1on1などによりフィードバックすることで評価を行う、人事評価制度のことです。

レイティングを行う形式の評価制度では、1年~半年に1度などの長期間における従業員の業績を、「S」「A」「B」などのランクで評価するのが一般的です。

対して、ノーレイティングではそのようなランクは設けません。

「ノーレイティング」とはレイティングしない評価のことを広く指すため、レイティングを行わない評価の方法は企業により様々ですが、上司が従業員と日々コミュニケーションをとったり面談を行ったりする中で、都度都度フィードバックと評価をしていく形をとることが多いです。

レイティング型の評価手法では「他の従業員と比べて上か下か」「会社の基準に照らして上か下か」など相対評価になりがちですが、ノーレイティングでは従業員個人の目標に対する達成度や課題について上司がフィードバックするという絶対評価の形を採ります。

ノーレイティングが注目される背景

ノーレイティングという評価方法は、アメリカの大企業で導入が進んだことで日本においても注目されるようになりました。

日本においてノーレイティングが注目を集める背景には、ビジネスにおける環境変化の加速や、働き方の多様化などがあります。

レイティングを行う評価制度下においては、1年~半年などの比較的長期間の従業員の働きに対してランク付けしていく形が一般的ですが、日本の事業環境は日々目まぐるしく変化しており、年次の評価では環境の変化に追いつけません

更に、働き方の多様化により、様々な能力をもち様々な働き方をする従業員を一定の基準を設けた「ランク」に当てはめて評価をすることが難しくなっていること、また、それ故に既存の評価制度に不満を持つ従業員が表れていることも、ノーレイティングが注目される理由のひとつです。

メリット

ノーレイティングは、今まで広く採られてきたレイティング型の評価手法のデメリットや問題点を解決する評価手法で、次のようなメリットがあります。

事業環境の変化に柔軟に対応できる

ノーレイティングでは、多くの場合短期間で上司との1on1や面談などが行われるため、事業環境の変化のスピードに対応しやすいというメリットがあります。

社会や経済、技術などが変化していくに連れて、従業員の目標や業務内容等の軌道修正を年次の評価タイミングを待たずに行うことができるため、その場その場の環境に適した目標設定や評価を行うことができます

働き方の多様化に対応しやすい

従業員一人一人の働きをその時の環境に応じて個別に評価するノーレイティングでは、一定の基準を設けたランクに照らして従業員をあてはめる必要がないため、働き方の多様化に対応しやすく、同時に働き方改革も推進しやすいと言えます。

従業員のパフォーマンス向上に繋がる

また、基準に不透明な部分があったり相対評価であったりするランク付けや、何か月も前の業績が後から評価される形のレイティング型よりも、従業員それぞれをリアルタイムで絶対評価するノーレイティングの方が、従業員からの評価への納得感が得やすいこともメリットのひとつです。

上司からのフィードバックを評価とする形を採るノーレイティングの場合、従業員が評価に納得しやすく、モチベーションも保ちやすいため、パフォーマンスの向上に繋がります

更に、何か月も後から漠然と評価されるレイティング型と違い、課題点についてもリアルタイムで把握し次の評価に向けて改善することができるため、毎回の面談における成長も期待できます

優秀な人材の確保・育成、離職防止に繋がる

ノーレイティングは、従業員各々の状況に合わせフィードバックと目標設定を行うことで成長を促し、モチベーションの維持とパフォーマンスの向上につなげる評価方式です。

評価と同時に従業員の育成も継続的に行うことができるため、優秀な社員が育ちやすく、また従業員にとって自身の成長が見込める環境、仕事に対するモチベーションを保ちやすい環境であることは、優秀な人材の確保にも繋がります

加えて、上司と部下のコミュニケーションが増えるため、コミュニケーション不足によるすれ違いから生まれる不満が生じることを防止すると共に従業員同士のつながりも強化でき、離職防止に繋がります

デメリット

ランク廃止 - 【解説】ノーレイティングとは?注目される理由やメリット・デメリットを紹介

一方、ノーレイティングには次のようなデメリットもあります。

管理職の負担が増加する

ノーレイティングでは、上司は定期的且つ短期間に1on1等で部下全員とコミュニケーションをとり、評価や目標の設定・修正を行う必要があります。

そのため、1年~半年程度に1度の評価面談でランク付けをするレイティング式の評価方式と比べ、管理職の業務負担が増加するというデメリットがあります。

プレイングマネージャーが多くなっている昨今では、部下に対するフィードバックで手一杯となり自身の仕事が回らない、逆に自身の仕事で手一杯で十分に部下とコミュニケーションがとれないという問題が発生する可能性があります。

評価が管理職のマネジメント力に依存する

ランク付けをしないノーレイティングでは、評価についての明確な基準が設けられておらず、部下の評価は上司に一任されていると言えます。

そのため、上司には適切且つ継続的にフィードバックをするという高いマネジメント力が求められます。

上司のマネジメント力が不足していると、部下が評価について納得できず不満を抱えてしまったり、部下が十分に成長できなかったりするというデメリットとなります。

頻繁な目標の変化で現場が混乱する可能性がある

ノーレイティングは多くの場合、短期間で1on1等のコミュニケーションを行う中で評価を行うと共に、日々変化していく事業環境・状況に合わせて目標も修正していきます。

そのため、場合によっては短い間に何度も目標や改善すべき課題、優先順位等が変わってしまい、現場の混乱を招く可能性があるというデメリットがあります。

上司側は、目標等を修正する必要が出てきた際に経営層目線で一方的に目標の変更を告げるだけに留まらないように、日々部下の業務や目標達成までの進捗等を確認し、無理のない目標の修正や部下との相談を行っていく必要があります。

まとめ

以上、今回はノーレイティングの概要と注目される背景、メリット・デメリットについて解説しました。

ノーレイティングは働き方改革との親和性も高く、企業・従業員共にメリットが多い一方で、管理職が高いマネジメント能力やマネジメントに十分な時間を持っている必要があるなど、管理職側の能力等が一定の水準を保った状態でこそ効果を発揮しやすい制度です。

そのため、忙しいプレイングマネージャーや経験の少ない管理職の多い職場では、直ちに導入するのではなく、プレイングマネージャーの業務負担を減らすよう調整してから検討したり、経験の少ない管理職でも経験を積みながら対応出来たりする仕組みを作ったりなどの工夫が必要です。

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働き方改革サポ編集部
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