【解説】「リスキリング」とは?「リカレント教育」など類似語句との違いや実施の際の注意点

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PC作業 - 【解説】「リスキリング」とは?「リカレント教育」など類似語句との違いや実施の際の注意点昨今急速に進むDX化の流れの中、業務上の必要スキルの変化に伴う社会人の学習、学び直しに関する取り組みが注目を集めています。

今回は中でも「リスキリング」について、概要及び注目される背景、類似語句との違いに加え、メリットと注意点についても解説します。

「リスキリング」の概要と背景

概要

「リスキリング」とは、加速するDX化や働き方の多様化の中で新たに発生する業務の遂行や新たな業種・業務内容への適応のために必要となる知識・スキルを身につけるための取り組みのことです。

経済産業省の「デジタル時代の人材政策に関する検討会」において発表された資料では、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義づけられています(※1)

詳細については後述しますが、リスキリングは企業が今後展開していく事業やそれに伴い発生する業務に照らして不足している人材を自社の人材の再教育により補ったり、DX化を筆頭に将来変化が見込まれる業務プロセスに既存の従業員が対応できるよう、必要となる知識・スキルを予め学習してもらうことで全社的な知識・スキルレベルの底上げを図ったりするのに有用です。

リスキリングの対象とすべき知識・スキルの種類やレベルは企業や部署、業種によって異なりますが、様々な分野の中でもDX・ITについては将来的な人材不足が世界的に見込まれています
例えば日本においては、「2030年にはIT人材が79万人不足する」とも言われているほどです(※2)

そのような状況も踏まえ、現在では「リスキリング」という言葉自体が、特にDX・IT分野に関する学習・教育を指している場合も散見されます。

リスキリングに取り組む企業の多くはDX・IT分野のリスキリングを目的としたプログラムを組んでおり、外部サービスのプログラムも充実しているため、リスキリングに割くことのできるリソースが多くない場合や、何から手を付けるべきかわからない場合は、まずはDX・ITから着手するのも手かもしれません。

※1参考:経済産業省・「第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会」資料『リスキリングとは ―DX時代の人材戦略と世界の潮流』(リクルートワークス研究所)

※2参考:みずほ情報総研株式会社(経産省委託)・-IT人材需給に関する調査-調査報告書

注目される背景と必要性

「リスキリング」はアメリカのAT&T社が2013年に行った取り組みが先駆けとなったとされ、今では欧米諸国をはじめとし世界的に注目されています。

2020年に行われたダボス会議においては、「2030年までに全世界で10億人をリスキリングする」ことを宣言した「リスキリング革命(リスキル革命)」が発表されました
日本においても、富士通、日立製作所などの有名な企業が取り組みはじめたこともあり、注目を集めています。

その背景には、第4次産業革命とも呼ばれる産業構造の変化があります。

DX化が進むに連れ、今まで人間が行ってきた業務がデジタル化し人の手を離れる一方で、デジタル化により新たに発生する業務もあります。
そうして衰退していく産業と、発展・創出されていく産業がそれぞれ増加することで、近い将来、仕事を探す人材の持つスキルと社会が必要とするスキルに大きく乖離がある状態になるということです。
仕事を失う可能性の高い人材の雇用を守りつつ現状世界的に不足している人材を確保するためにはリスキリングによりそのギャップを埋める必要があります

既に近年コロナ禍を契機とするテレワークやオンライン会議等の普及に伴いDX化が急速に進んだ影響を受け、不要となった業務がある一方で、新たな知識・スキルの習得が必要となってきている企業もあるでしょう。

現在殆どの職場でPCを使うのが当たり前になっているように、今後はより高度な知識やスキルが当たり前に求められるようになっていくことが予想されます。
そしてその発展のスピードは決して緩やかなものではありません。

企業はステークホルダーから選ばれ続け存続するため、個人は雇用され続けるため(ひいてはよりよい条件で働き続けるため)、リスキリングにより社会に必要とされているスキルを備えることが重要と考えられます。

類似語句との違い

リスキリングと混同されやすかったり並列されたりする語句に、「リカレント教育」「OJT」「アップスキリング」「アウトスキリング」などがあります。
何れも社会人になってからの学習・教育を意味する言葉ですが、それぞれ目的や方法等が異なります。

リカレント教育

リカレント教育とは、今後の自分のキャリアや人生設計のために必要となる・興味がある知識・スキルを身につけるため、一時的に休職・退職して行う学び直しのことです。

就労と学習(休職)を繰り返し、学習する分野は必ずしもその際の勤め先で必要とされるスキルに限らず幅広く、また一般的に従業員が主体的に取り組む学習であるという特徴があります。

OJT

OJTとは、既存部署・既存業務に必要な知識・スキルについて、既存業務を通じて習得することです。

将来に向けての学習というよりは、現在即戦力として業務を遂行するための学習であるという特徴があります。

アップスキリング

アップスキリングとは、従業員が既に身につけているスキルを更に向上させることです。

リスキリングのように全く別の分野のスキルを身につけるための学習ではなく、自身の強みをより高度なものにしていくという取り組みを指します。

全く異なる業種や業務を遂行するための学習がリスキリングと呼ばれるのに対し、同じ業種の中でより高度なことができるようになるための学習はアップスキリングと呼ばれます。

アウトスキリング

アウトスキリングとは、レイオフ(一時解雇)などの人員整理の対象となる可能性が高い人材に対し、成長産業で有用なスキルについての教育を行い、自社を退社した後も新たな分野で活躍できるようサポートすることです。

対象となる従業員が自社を退社することが見込まれている点において、自社の将来のための教育であるリスキリングとは大きく異なります。

このように、それぞれの語句は何れも広い意味では似通っていますが厳密にはリスキリングとは異なる意味合いを持ちます。

リスキリング実施のメリット

プログラミング - 【解説】「リスキリング」とは?「リカレント教育」など類似語句との違いや実施の際の注意点

リスキリングの必要性については背景と必要性の項で解説しましたが、本章では具体的にリスキリングを実施することが企業にどのようなメリットをもたらすのかについて解説します。

採用・教育コストの削減

リスキリングを実施することで、今後自社にとって必要となる高いスキルを持つ人材を採用するためのコストを軽減することができます。

高いスキルを持つ人材は競争率も高く、採用コストも高くなることが多いです。

また、採用後も自社特有のルールや企業理念等についての研修、人間関係の構築などを行う必要があると共に、中途入社直後の離職のリスクもゼロではありません。

一方、既存社員は企業独自のルールやシステムなどを理解しているため、直接業務に関係しない点についての研修コスト等を削減することができます。

更に、今後社内で衰退・撤退していくと思われる事業・業務に従事する人員をリスキリングすることで、同人材の解雇も避けることができます。

企業文化の継承

社内の人材に対するリスキリングを行うことで、必要なスキルの変化に伴う大幅な人材の入れ替えを避けることができます。

不足しているスキルを持つ人材の確保は重要ですが、人材を大量に外部から採用したり、反対に社内で不要となった(近いうちに不要になる)スキルしか持たない既存社員の多くを解雇したりすると、企業文化等を継承していくことは困難となる可能性があります。

この点、リスキリングにより既存の従業員を雇用し続けることができれば、自社の企業文化や理念、社風を継承していくことができます。

業務効率化及び生産性向上

リスキリングにより社内の人材が新たなスキルを身につけることで、今後展開していく事業や業務の準備ができると同時に、既存の業務の効率化や生産性の向上にも繋がります。

とりわけDX化に向けたリスキリングにおいては、単純作業やルーティン業務等の自動化を進めることで従業員の負担を大幅に削減することができるため、他の重要度の高い業務に割く人員を増やすことができたり、残業時間の削減をすることができたりするというメリットがあります。

実施の際のポイント

このように様々なメリットがあり、今後企業の存続のためには必要不可欠とも言えるリスキリングですが、実施の際には以下のポイントに注意しておく点があります。

まずはスキルの可視化から行う

リスキリングを行うにあたり、まずはリスキリング対象の従業員の現状のスキル(内容及びレベル)の把握と、今後その従業員に身につけてほしいスキル(同じく内容及びレベル)の明確化をはかる必要があります。

当然、リスキリングの際には両者のギャップを埋めるためのプログラムを組む必要があるため、両者が明確になっていないと、リスキリングが非効率的なものになってしまうことも考えられます。

反面、両者が明確になっていれば、そのギャップが最も小さい人材から教育を進めるなど、より効率的なリスキリングの実施につながります。

従業員のモチベーションを保てる工夫をする

リスキリングは企業及び従業員の成長と存続のために必要でありメリットもある取り組みですが、リスキリングに取り組む従業員自身のモチベーションを保つことができなければ十分な成果が出ません。

スキルアップによる成長を実感できるような仕組みにする、スキルアップを適切に評価しインセンティブを用意する等、従業員のモチベーションを保つ工夫をする必要があります。

また、リスキリングを勤務時間外に行うと従業員の不満が募りモチベーションを保つことが難しくなります。
原則勤務時間内に実施することが望ましいですが、どうしても勤務時間外でないと難しいと考えられる場合は予め従業員の意見を参考にすると共に、反対意見が多いようであればまずは勤務時間内に実施することができるよう、業務の調整から始める必要がある可能性があります。

最適なコンテンツを選ぶ

リスキリングは自社の今後の事業・業務のために活かせるスキルを身につけてもらう取り組みですが、必ずしも全てのコンテンツを自社で作成する必要はありません。

特にDX・IT系の基礎的なコンテンツについては外部で用意されていることも多いため、自社で一から作成することで実施までに時間がかかってしまうのであれば、外部のコンテンツの利用も検討することをお勧めします。

選び方がわからなかったり、自社のオリジナルのコンテンツを作成したかったりする場合は、外部の専門家に相談することで自社に最適なコンテンツを用意することが望ましいです。

まとめ

今回は企業と従業員の安定した存続に欠かせない「リスキリング」について解説しました。

リスキリングは企業にとっても従業員にとっても、今後のDX化の流れの中で自ずと対応が必要になる取り組みであると言えます。

自社が世の中のDX化を筆頭とした事業・業務の変化に問題なく対応できるよう、自社の人材と自社に必要な人材のギャップが大きくなる前に実施を検討することをお勧めします。

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